子どもの運動機会の確保 発育・運動能力だけでなく、脳や知的な発達にも影響!

子どもには早いうちから体を動かす経験を

Withコロナ時代に見直す、スポーツの効能 シリーズ第1弾。
今年3月、小学校、中学校、高等学校および特別支援学校等は全国一斉に臨時休業となり、子どもたちは、新学期になっても学校にも行けず、屋外で遊ぶこともままならない状況が続きました。長期間にわたる外出自粛で運動不足やストレスに晒された子どもたちの発育・発達への影響はどのようなものなのか、また、Withコロナ時代における子どもたちの暮らしはどうすればいいのか、小児科医で日本医師会常任理事・感染症危機管理対策室長の釜萢敏先生に話をお聞きしました。

釜萢敏先生 1

本来であれば子どもには無縁だったロコモ

新型コロナウイルス感染症が流行した初期にはわからないことが多かったのですが、新型コロナウイルスは子どもから子どもへ感染した事例が極めて少ない事がわかってきました。インフルエンザウイルスの場合は学校や保育所など、子どもの集団において感染が拡大します。しかしながら、新型コロナウイルスの場合、子どもの集団におけるクラスターは0(ゼロ)ではありませんが社会全体からみると少なく、子どもの多くは家族(大人)から感染しています。これは新型コロナウイルスの特徴です。

3月からの新型コロナウイルス感染拡大防止のために行った学校の全国一斉臨時休業によって、外出自粛した子どもへのマイナスの影響は大きいと思います。新型コロナウイルス感染症が流行する以前から子どもの体力低下や体を動かす時間の減少傾向が問題視されていましたが、外出自粛により体を動かす機会が更に減ったことで、子どものロコモ(※)が増えることを懸念しています。

一般的に、ロコモは加齢に伴い身体機能が低下するという高齢者に起こりやすい問題で、子どもには無縁と思われていましたが、本来、体を動かすべき発育・発達期に運動不足になると、子どものロコモを助長させる可能性があります。

子どものロコモに見られる大きな特徴は、かかとを地面につけたまましゃがむと後ろに倒れてしまうことや、前屈して手の指先が床に届かないなど、柔軟性と平衡性(バランス)の低下があげられます。数年前より学校では運動器(ロコモ)健診が行われるようになりましたので、今回の外出自粛の影響がどれくらいあるのか注視したいと思います。

※ロコモ
正式名称はロコモティブシンドローム (運動器症候群)。運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態のこと。

基本動作4項目でバランスおよび柔軟性を調査/学年別の運動器検診結果出典:林承弘,柴田輝明,鮫島弘武「シンポジウム 学校検診における運動器健診の現状と今後の課題 子どもとロコモと運動器健診について」日整会誌vol.91:338-344,2017

幼い頃に体を動かした経験は運動能力や知的発達へ

体を動かすための筋肉を動かすには、まず脳が働かなければなりません。筋肉を動かす指令は脳から出て、神経を伝わって筋肉にたどり着き、筋肉が収縮することで関節が動きます。決して筋肉が勝手に動くわけではありません。どのような筋肉を使うと、どういう動きになるのかは、実際にやった「経験」から、脳と筋肉をつなぐ神経系のネットワークが学びます。この経験を積むことでいろいろな体の動かし方、自分の体のコントロールの仕方を覚えるので、発育・発達過程においてはできるだけ幼い時期からいろいろな体の動きをすることが必要です。

特に小学校入学前の時期は、体を積極的に動かして、いろいろな動きの経験を積むことがとても大切です。鬼に捕まらないように敏捷に体を動かす「鬼ごっこ」は、楽しくいろいろな体の動きを経験できるのでとてもいいです。小学校入学前にいろいろな体の動きを経験しておかないと、小学校の体育等で初めての動きがあったときに上手くできず、運動に苦手意識を持ってしまうことがあります。苦手意識を持つと、運動をしなくなってしまうことが多いです。得意不得意ではなく、幼い時期にいろいろな動きの経験があるかどうかが重要なことです。

体を積極的に動かすことは、運動能力を伸ばす以外に、脳や知的な発達にも大きく関わってきます。先述したとおり、体を動かすには脳からの指令が必要であり、敏捷な身のこなしや状況判断など、脳が運動を支配するので、運動が脳の発達に果たす役割は大きいです。

また、子どもが体を動かすためには「楽しい」こと、興味を持って「おもしろい」と思えることが大切です。何かやらされていると思わせてしまうと苦痛になってしまうので、遊びの中で楽しく積極的に体を動かすようにしてください。とはいえ、新型コロナウイルス感染防止のために、鬼ごっこがしにくくなり、公園の遊具が閉鎖や隔離されてしまい、子どもが思い切り遊べる環境が少なくなってしまいましたが、基本的な感染症対策をした上で工夫をしながら体を動かしてほしいです。

しっかり感染症対策を行って、安心して運動・スポーツを

運動・スポーツを行う際には、引き続き手指消毒など基本的な感染症対策を行ってください。人と人が接するスポーツについては依然として注意が必要ですが、人と人との距離が保たれて屋外や換気のいい環境で行うスポーツについては感染の確率が低いですから問題ありません。新型コロナウイルス感染症が流行した初期にスポーツによる感染が危惧されましたが、それは密になりやすい環境が原因でした。現在、スポーツ施設では、業種別ガイドラインに則って感染防止策に力を入れているので、スポーツ施設での感染事例はほとんどなくなりました。人と人との距離を空け、屋外や換気のいい環境で行えば、スポーツ中に感染する心配の必要はないと思います。

まとめ:子どもを抑制し過ぎず、積極的に遊ばせて

親御さんご自身が体をあまり動かさずに育ってきた場合や運動・スポーツが苦手な場合、親御さんはどうやって子どもに接していいのか戸惑われているようです。子どもにケガをさせてはいけないと体を動かすことに抑制的になり過ぎている傾向が強いです。それは子どもの発育・発達に良い影響を与えていません。すり傷や打撲などがあるかもしれませんが、子どもは軽微なケガを経験することによって、骨折などの大きな外傷を防ぐ動きを身につけています。例えば、転んだとき、手を前に出して体を支えるのは意識してやっているのではなく、身を守るために自然と動くのです。そうした身を守る動きを幼い頃から経験していないと、転んだときに顔から地面についてしまいます。したがって、できるだけ幼い時期から積極的に体を動かしておくことが大切です。

さらに、今は新型コロナウイルスの感染を恐れて、より一層抑制的になっている方がいるようです。子どもにはこれから長い人生があり、子どもはこれからの日本を背負っていく宝です。子どもが健全に発育・発達していくためには積極的に体を動かすことが必要ですので、そうした機会を無意識に奪わないでください。しっかりと感染症対策を行って、子どもが積極的に体を動かせるよう遊ばせてください。

(スポーツ庁では、Withコロナ時代においても、子どもたちが楽しく運動・スポーツを行えるよう具体的な方法を紹介する「子供の運動あそび応援サイト」を開設しています。)

釜萢敏先生 2

小泉小児科医院院長。医学博士 釜萢 敏(かまやち・さとし)
1978年、日本医科大学卒業後、日本医科大学付属第一病院小児科入局。1988年、小泉小児科医院院長に。2011年群馬県医師会参与、2014年日本医師会常任理事。

本記事は以下の資料を参照しています

認定NPO法人 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会 : 子どもロコモについて(2020-12-01閲覧)

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