10年のレガシーを未来の力へ~スポーツ庁創設10周年記念行事を開催~

スポーツ庁は、2015年10月の発足から10年の節目を迎えたことを機に、これまでの歩みを振り返るとともに、次の10年への期待や方向性を共有する場として、「スポーツ庁創設10周年記念行事」を開催しました。デポルターレでは、そのときの模様をレポートします。
スポーツ庁創設10周年、河合長官が感謝と期待を語る
記念行事の冒頭、河合純一スポーツ庁長官より「スポーツ庁は、各関係省庁とスポーツ団体、地方自治体等を結び付けながら、我が国のスポーツ行政を牽引するという役割を担ってまいりました」という挨拶がありました。
続けて、スポーツ庁を支えてきた関係者、関係団体に対して感謝を述べた後、記念行事の開催にあたり「『10年のレガシーを未来の力へ』というテーマで、これから先の10年の方向性を皆さんと一緒に考え、共有する時間にできればと考えています」と期待を述べました。
これまでの歩みを振り返る10周年記念動画を上映
河合純一スポーツ庁長官からの挨拶の後、10周年記念動画を上映。動画の中では、スポーツ庁の「子供の体力向上」や「学校体育・運動部活動の充実」「パラスポーツ」などの取組に加えて、「競技力の向上」の成果として東京2020オリンピックで日本代表が史上最多となる58個のメダル獲得したことを振り返りました。
東京2020オリンピック大会の体操競技で金メダルを獲得した橋本大輝選手、2024アイアンマン世界選手権(トライアスロン)で5位入賞だった谷川真由子選手、東京2020とパリ2024のパラリンピックの水泳で金メダルを獲得した木村敬一選手の3名が出演し、それぞれからのメッセージを紹介しています。
また、鈴木大地初代スポーツ庁長官からの「日本人の強さのひとつは、自分の国に誇りを持ち、皆と協調していくところです」や、室伏広治第2代スポーツ庁長官からの「身体なくして築き上げられた文化はありません。今は人工知能やAIなど情報が溢れる中でも、身体は益々重要になってくると思います」というコメントも紹介されました。
スポーツ庁公式サイトに、10周年記念動画や10周年記念誌を掲載していますので、ぜひご覧ください。
スポーツ庁創設10周年:スポーツ庁の歩み ~10年のレガシーを未来の力へ~
スポーツ選手や関係者が語る「10年のレガシーを未来の力へ」
動画の上映後、4名のゲストと河合純一スポーツ庁長官によるトークセッションを行いました。ファシリテーターを務めたのは、元NHKエグゼクティブアナウンサーで、現在は公益財団法人日本スポーツ協会の常務理事である山本 浩氏です。
【4名のゲスト】
- ■谷 真海氏
- 女子走り幅跳びの日本代表選手として3大会連続でパラリンピックに出場。その後、トライアスロンの選手に転向し、東京2020パラリンピックでは競技の出場とともに日本選手団の旗手を務めました。
- ■田中理恵氏
- 女子体操の日本代表選手としてロンドン2012オリンピックの団体・個人総合に出場。体操女子の礎を築く。現在は、解説者や指導者だけでなく、タレントとしても活動しています。
- ■堀島行真氏
- 男子のモーグルとデュアルモーグルの日本代表選手として、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックに出場。モーグルで銅メダル、デュアルモーグルでは銀メダルを獲得しました。
- ■山田真樹氏
- 男子陸上の日本代表選手として、東京2025デフリンピックに出場。400mと4×400mリレーで金メダル、200mでは銀メダルを獲得しました。
直近の大規模国際大会関係者からのリアルな声について
1つ目のテーマは、直近の大規模国際大会で感じた現場のリアルな印象についてです。
堀島氏は、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックを振り返り、5拠点での分散開催という中で、「日本オリンピック委員会(JOC)が各地に宿泊、食事、睡眠といったサポート施設を揃えてくださった。しかも、宿泊施設から食事や会場への距離が近く、良い環境だった」と評価しました。
山田氏は、東京2025デフリンピックの際、「デフリンピックの知名度の低さを痛感しました」と思い返します。しかし、この大会からサインエールという新たな応援スタイルを取り入れたことで、「私たち選手の大きな力になっただけでなく、多くの方にデフリンピックを知ってもらえる機会になった」と語りました。
河合純一スポーツ庁長官は、「大規模国際大会のレガシーとは、選手、スタッフ、コーチ、ボランティア、さらには観戦した人々の心に残ること」と述べ、今後も2026年、愛知・名古屋で開催されるアジア・アジアパラ競技大会をはじめ、日本の人々が現地で生観戦できる機会を大切にしていきたいと意欲を示しました。
子供たちがスポーツに親しむために
2つ目のテーマでは、子供のスポーツについての議論が展開されました。
堀島氏は「高校時代、モーグル部はなかったが、スキー部に所属しながらモーグルの練習に励んでいた」と振り返ります。その中で、当時スキー連盟で役職も務めていたスキー部の顧問から「部活動を通じて、挨拶や姿勢について指導していただいたことを覚えています」と述べました。
田中氏は、体操に限らずスポーツ全般に言えることとして「スポーツを通じて、身体を動かすだけでなく、助け合うこと、我慢すること、応援することも学べる」と捉えており、「子供たちには、これから大会やイベントに参加しながら、そういう経験をたくさんしてもらえると嬉しい」と語りました。
谷氏は、「子供時代のスポーツ経験は、人生の困難を乗り越える力(レジリエンス)になる」と強調。部活動の地域展開については、「他校の子供たちと一緒にスポーツができるようになり、素敵な機会になる」と期待を抱いていました。
誰もがスポーツを楽しめる社会へ
3つ目のテーマでは、誰もがスポーツを楽しめる環境について語られました。
谷氏は、2度の出産とそこからの競技復帰の経験を振り返り、「10年前に比べ、現在は女性が希望すれば、適切な情報を得られる、サポートを受けられるようになった」と環境の変化を紹介。また、日本パラリンピック委員会(JPC)が導入した、産後2年間の強化指定保留制度についても「素晴らしいこと」と述べました。
田中氏は、日本で出産後も世界の頂点を目指す女性アスリートに対して優しい環境がもっと増えることで「多くの女性アスリートが輝けるようになる」と言います。女性特有の身体の変化で競技を続けることに悩む選手も多い現状で、「女性選手が自由に自身の気持ちを言える環境づくりがあることで、悩みや壁を乗り越えるための力になる」と語りました。
山田氏は、デフ陸上の指導者数の少なさを課題にあげつつ、「指導者が少ないからこそ、新しい打開策を考えられる」と説明しました。
次なるスポーツ庁の10年に向けて
最後のテーマは、次なる10年に向けスポーツ庁に期待することについて、それぞれが想いを語りました。
山田氏は、国際大会を通じて「世界各国の選手とコミュニケーションを取ることで、それぞれの国の文化を知る、自身の視野を広げられる機会があることを実感し、それを子供たちに伝えたい」と述べ、スポーツ庁からもそのような発信をしてほしいと希望されました。
堀島氏は、ノルウェーでは12歳以下の全国大会を開催せず、大会があっても順位を付けないことを紹介し、「スポーツの本質的な楽しさを育てる文化を醸成している」と言及されました。「日本もこれまでに蓄積してきたものを大切にし、その結果として世界のトップに立てるような国になれたら嬉しい」とスポーツ庁への期待を膨らませていました。
田中氏は、愛知・名古屋2026アジア・アジアパラ競技大会に触れ、「大会はひとつのお祭りのような楽しい場所。家族でぜひ足を運んでほしい」と呼びかけました。加えて、会場では家族がコミュニケーションを取りやすい素敵な場所にもなることから、「スポーツ庁を中心に来場を積極的に発信してほしい」とも要望されました。
谷氏は、日本ではパラリンピアンである河合氏がスポーツ庁長官に就いたことから、「スポーツはすべての人をターゲットにしている」というメッセージが発信できていることを示唆されました。さらに、「すべての人にスポーツのある豊かな人生を、という想いで自分にできることをやっていきたい」と第4期スポーツ基本計画の策定等への意気込みを述べられました。
河合純一スポーツ庁長官は、4名のゲストからの言葉を受けて、「これから第4期スポーツ基本基計画の策定や、学習指導要領の改訂を控えるため、皆さんの声をしっかりと反映させたい」と語りました。また、霞が関でもっともインクルーシブな組織を目指し、「障害の有無や性別、年齢に関わらず、スポーツの魅力を感じてもらえる組織でありたい」と述べました。
まとめ
この記念行事を通じて、競技力の向上だけでなく、すべての人の生活にスポーツがある環境づくりの重要性も示されました。スポーツ庁は、その実現に向けて多くの関係者と連携しながら取り組んでいきます。



