日中韓スポーツ大臣会合が6年ぶりに日本で対面開催。3か国の更なる交流強化を確認!
2024年12月、東京にて第5回 日中韓スポーツ大臣会合が開催されました。会合には、あべ文部科学大臣、張家勝(チャン・ジャション)中国国家体育総局副局長、崔輔根(チェ・ボグン)韓国文化体育観光部次官補の3か国のスポーツ担当の閣僚級が出席。アジアのスポーツ大国として、3か国間およびアジア地域全体のスポーツ交流・協力等について意見交換が行われました。
3か国およびアジア地域のスポーツ交流を促す「日中韓スポーツ大臣会合」
日中韓スポーツ大臣会合は、日本、中国、韓国の3か国のスポーツ大臣が集まり、スポーツを通じた東アジア地域の平和と繁栄の実現や、スポーツ分野における連携について議論する会合です。2016年9月に韓国・平昌にて開催された第1回会合から、1年おきに3か国持ち回りで定例開催しています。
韓国・平昌での第1回会合では、オリンピック・パラリンピック開催の準備・運営などのノウハウの共有や連携をはじめ、ドーピング防止に共同で取り組むことなどが話し合われ、「平昌宣言」としてまとめられました。日中韓の3か国は1993年から日韓中ジュニア交流競技会を実施しており、2024年までに延べ25,664人が交流に参加してきました。平昌宣言では、さらに交流を拡大することで合意し、これを契機に、日本スポーツ協会(JSPO)の日韓中青少年冬季スポーツ交流を新たに開始することなどが決まりました。
しかし、コロナ禍等の影響により、スポーツ交流の縮小や中止を迫られ、日中韓スポーツ大臣会合もここ数回はオンラインでの開催に。その間でも、3か国におけるスポーツの交流意欲は衰えることはなく、延期となっていた第1回日韓中青少年冬季スポーツ交流は、2024年度の実施が決定(※2025年1月に、427人が参加し実施済み)し、今回、東京での第5回スポーツ大臣会合は6年ぶりの対面開催が実現しました。
「2024東京共同声明」を採択。アスリートへの誹謗中傷対策やパラで連携
(写真)第5回 日中韓スポーツ大臣会合の様子
大臣会合では、あべ大臣を議長として、各国と開催予定の国際大会を通じた交流促進、3か国間の交流・協力の一層の充実などについて意見が交わされました。「2024東京共同声明」では、大規模国際大会の成功とハイパフォーマンス分野の発展に向けた相互協力に向けて交流を深めていくことなどが確認されたことに加え、昨今の状況を踏まえ、アスリートへのハラスメントおよびSNS等における誹謗中傷の防止、パラスポーツの振興による共生社会の実現等を含むスポーツの社会経済的価値の向上についても盛り込まれました。
特にパラスポーツについては、今回、日中韓スポーツ実務者会合の場に初めて日中韓のパラリンピック委員会が参加しました。この会合参加を契機にアジアを対象とした指導者や審判などの育成等に関わる3か国の共同事業の具体化に向けた調整が進み、実務者会合でも日中韓のパラリンピック委員会間での協力強化に向け、活発な意見交換が行われました。
あべ大臣は、大臣会合後、こう話しました。「ネルソン・マンデラ氏の言葉のとおり、スポーツには世界を変える力があります。重要な隣国である中国、韓国とのスポーツ交流・協力を通じて、3か国およびアジア地域の平和と持続可能な発展に貢献することは文部科学省としての重要な使命だと考えています」。「2024東京共同声明」は、これからの3か国のスポーツ交流をより強固なものとすることを確認するものです。
(写真)共同声明に署名(左:共同声明署名式 右:あべ文部科学大臣)
日本のスポーツ・レガシー施設を視察
6年ぶりの対面開催となり、両国代表団に向けて会合以外での交流機会も数多く行われました。会合前日に行われた大臣主催晩さん会では、あべ大臣は着物姿で中韓の代表団をお出迎え。パリ2024大会で新種目として採用され、新しいスポーツの可能性を示したブレイキンの日本代表、Hiro10さんによるダイナミックなパフォーマンスが披露され、会場は大いに盛り上がりました。
会合後の視察・エクスカーションでは、これまでの日本のスポーツ・レガシー施設を訪問しました。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の舞台であり、2025年の世界陸上競技選手権の会場となる、日本を代表するスタジアム「国立競技場」では、スタジアムの内部を視察。森の木漏れ日をイメージした5色の観客席の景観や国産木材を使用し環境にもやさしいデザイン等、細部までこだわった建築物としての側面だけでなく、選手ロッカールームや競技トラックなど、スタジアムツアーでオリンピック・パラリンピックの記憶とともに紹介されるエリアを案内しました。3か国の代表団は、選手の目線からの競技場の風景も堪能し、リラックスした様子で和やかに歓談しました。
その後、2026年開催の愛知・名古屋アジア競技大会において馬術競技が行われる予定の「JRA馬事公苑」へ。1940年に開苑したJRA馬事公苑は、1964年の東京五輪の際に会場として使用された施設で、東京2020大会に合わせて再整備されました。当日は、2024年パリオリンピックの総合馬術団体で銅メダルを獲得した日本代表チーム、通称「初老ジャパン」のメンバーの一人でもある戸本一真選手らがデモンストレーションを披露。馬と選手の息の合ったパフォーマンスに会場から大きな拍手が送られました。
(写真)上:晩さん会の様子 中下:視察・エクスカーションの様子(国立競技場、JRA馬事公苑)
まとめ
日本では、今後、「第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025」、「東京2025世界陸上競技選手権大会」、「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋) 」「第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)」等の開催が予定されています。中韓両国においてもさまざまな大会やスポーツに関連した世界的な会合が計画されています。日中韓の3か国はアジアから世界をスポーツでつなぐ役割を牽引してきているといえるでしょう。
スポーツには世界を変える力があるーー。これまで3か国が培ってきた協力や交流は、レガシーのひとつとして将来に引き継がれていくものです。今回の第5回日中韓スポーツ大臣会合は、3か国のスポーツ協力を対面で確認できた機会となりました。文部科学省・スポーツ庁では、今後も、日中韓3カ国間のスポーツ協力と交流を継続的に強化していきます。
●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁 - 諸外国との連携(2025-02-01閲覧)
文部科学省 - あべ大臣が第5回日中韓スポーツ大臣会合に出席(2025-02-01閲覧)
JSPO 日・韓・中交流(2025-02-01閲覧)