地域スポーツのコーディネーター“スポーツ推進委員” 〜青森県大鰐町の事例紹介〜

スポーツ庁では、スポーツを通じた健康増進等のスポーツの価値を享受できる社会の構築を目指しています。「スポーツ推進委員」は、地域で誰もが生涯を通じて運動やスポーツなどで身体を動かせる場を創出する役割を担う地域スポーツ振興のコーディネーターです。スポーツ推進委員とは、どのような活動を行っているのか、2025年度スポーツ推進委員優良団体表彰を受賞した青森県大鰐町のスポーツ推進委員の皆さんにお話をお聞きしました。
スポーツ推進委員とは何か
スポーツ推進委員は、スポーツ基本法第32条に基づき、地域におけるスポーツ推進のための事業の実施に係る連絡調整や、住民に対するスポーツ実技の指導、その他スポーツに関する指導及び助言を行う方々であり、令和7年9月現在、日本全国で約4万7千名の方が活躍されています。
スポーツ推進委員は地域に根差した活動をされているため、現在、スポーツ庁が進めている部活動の地域展開等においても、以下のような役割が期待されています。
①地域展開を進める際の調整役(コーディネーター)としての役割(「スポーツの推進のための事業の実施に係る連絡調整」)
②地域クラブ活動における指導者(インストラクター)としての役割(「住民に対するスポーツの実技の指導」)
③地方公共団体における協議会等の構成員等(アドバイザー)としての役割(「スポーツに関する指導及び助言」)
大鰐町スポーツ推進委員の活動
大鰐町は、青森県津軽地方の南端に位置し、人口約8000人(2025年12月現在)が暮らす、豊かな自然と緑に恵まれた“津軽の奥座敷”と呼ばれているところです。スキーと温泉の町として知られ、2026年の国スポ・障スポ冬季大会では、アルペンやクロスカントリー等の競技会場に選ばれています。
大鰐町スポーツ推進委員は7名で構成されており(2026年1月現在)、各スポーツの行事等において積極的に指導や審判などの協力を行い、指導技術向上のため研修会に参加し、地域のスポーツ振興に貢献しています。毎年、大鰐町内にて、町民の健康・仲間づくりを推進するため「大鰐町ニュースポーツフェスティバル」を開催し、子供からシニアまで幅広い参加者が訪れるスポーツによる地域交流の場となっています。そうした活動が認められ、(公社)全国スポーツ推進委員連合より、2025年度スポーツ推進委員優良団体表彰を受賞しています。
スポーツを通じた地域コミュニケーションの場を創出
「大鰐町ニュースポーツフェスティバル」は、地域住民のニュースポーツを通じた健康づくりや仲間づくりの推進を目的として、年1回開催されるイベントです。児童(小学4〜6年)・大人の部を設け幅広い参加者を募るとともに、さまざまなスポーツの中から2種目を選んで実施しています。今年度の第18回大会では、グランド・ゴルフ、モルックが行われました。

大鰐町スポーツ推進委員の二川原勝義会長は、「毎年、フェスティバルには30〜50名ほどが参加され、そのほとんどは高齢者の方です。ふだん触れることのない新しいスポーツができることが喜ばれています。毎年フェスティバルに参加される方が多く、『久しぶりだな』といった感じで、寄合のような地域コミュニケーションの場となっています」と大会の様子を語ります。
スポーツフィスティバル以外にも老人クラブとのモルックやペタンク(※)の交流会など、シニア世代の健康づくりに貢献しています。
※ペタンク:ビュットと呼ばれる目標球に向けて金属製のボールを投げ、どれだけ近づけられるかを競う南フランス発祥の球技です。年齢や体力に関係なく楽しめ、屋外で気軽に行えるのが特長です。「ボッチャ」の原型ともなっています。
子供たちのスポーツ機会の確保
子供たちのスポーツ機会の確保は、全国的に重要な課題となっています。大鰐町唯一の中学校である大鰐中学校の生徒数は、2015(平成27)年時点で218人でしたが、2025(令和7)年時点で124人と、大幅に減少しています。これにより、生徒の重要なスポーツ機会となっている部活動も、部員数の減少等により存続が難しくなってきています。
ニュースポーツフェスティバルにおいても、子供の参加者数の減少が課題であり、子供たちにもっと参加してもらえるよう工夫が必要となっています。
これを受け、全国の自治体と同様に、大鰐町でも部活動の地域展開等に取り組んでいます。2021(令和3)年から「部活動の在り方に関する検討委員会」において議論を開始し、2024(令和6)年に「大鰐町部活動地域移行推進計画」を策定、休日と平日の一体的な地域展開に取り組むこととしました。既に野球部、バドミントン部、柔道部が地域クラブ活動に移行しており、2027(令和9)年度に部活動の地域展開の全面実施を掲げています。
部活動の地域展開に当たっては、指導者不足等が課題となる中、スポーツ推進委員が果たす役割も重要になってきます。大鰐町スポーツ推進委員の大川信昌理事は、地域クラブ活動である「大鰐ジュニアバドミントンクラブ」で実技指導を行っています。高校時代から現在もバドミントンを続けている大川理事は、自身の経験を生かしながら、初心者を中心に指導しています。
「バドミントンを通じて、“人の心の痛みがわかる子”に育って欲しいと思って指導しています。いまの世代の流れなのか、試合会場に行っても仲間の応援をせずに、自分の試合以外はスマホを見ているような子がいます。仲間の応援や挨拶をすること、人の気持ちを理解することは大事なことだと伝えています。それから、指導した子供たちが上達する姿を見ると、やっていてよかった、私も頑張ってみよう、と励まされます」と大川理事は話しました。
世代を超えたスポーツ交流を活性化
シニア世代のスポーツ機会の創出や子供たちのための部活動改革など、さまざまな地域課題に取り組む大鰐町スポーツ推進委員の皆さんに今後の展望をお聞きしたところ、二川原会長は「スポーツフィスティバルなどを通じて、子供たちと一般の町民とのスポーツ交流を進めていきたいです。子供たちの意見を取り入れて、もっと参加しやすいイベントを目指します。また、働き盛りの現役世代にも体を動かしてもらえる機会もつくりたい」と語りました。また、地元のスポーツ協会や学校などとも連携できることは協力したいとのことです。
まとめ
少子高齢化や指導者不足など、地域スポーツを取り巻く課題は少なくありません。そうした中で大鰐町スポーツ推進委員は、シニア世代の健康づくりから部活動の地域展開まで、多様なニーズに応える役割を担っています。スポーツ庁では、こうした地域スポーツを支えるスポーツ推進委員の皆さんの活動を支援してまいります。
●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁 - スポーツ推進委員(2026-02-01閲覧)
公益社団法人全国スポーツ推進委員連合(2026-02-01閲覧)



