生徒自らが考える未来のブカツ〜熊本・南関中「部活動ワークショップ」
現在、少子化の中でも、将来にわたって生徒が継続的にスポーツ・文化芸術活動に親しむ機会を確保することなどを目的に、「部活動改革」の取組が全国で行われています。熊本県の南関町立南関中学校では、生徒自身が“部活動のあり方”を考えてみようという『部活動ワークショップ』が行われています。今回、南関中学校で行われているワークショップの様子を取材しました。
部活動改革とは
2022年12月、スポーツ庁と文化庁は「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」を策定し、2023年度から2025年度までを「改革推進期間」と位置付け、部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行に向けた取組を進めています。
ガイドラインでは、地域クラブ活動の活動内容として、例えば、体験教室や体験型キャンプのような活動、レクリエーション的な活動、シーズン制のような複数の種目や分野を経験できる活動など、生徒の志向や体力等の状況に適したスポーツ・文化芸術に親しむ機会を確保することを目指しています。
生徒が部活動のあり方を考える
南関中学校では、9つの部活動のうち運動部が7つを占めます。他校と同様に少子化による生徒の減少や指導者不足などの問題を抱え、持続可能性が危ぶまれていますが、地域スポーツクラブや外部指導者との連携など、子供たちのスポーツ機会の確保に向けた取組を続けています。
一方、これらの取組と並行して行われているのが『部活動ワークショップ』です。南関町では、2021年度に部活動改革に関する検討委員会を立ち上げ、持続可能な活動のあり方について話し合いを進めてきました。こうした中で、部活動改革の主人公である中学校の生徒の意見を聴くために、2023年度から『未来の部活動に向けたワークショップ(生徒たちにも考えてもらう会)』を開催し、現在のワークショップへと発展させてきました。
『部活動ワークショップ』は、生徒会、各委員会委員長、各部のキャプテンや部長、学級員の代表等の20数名が参加し、ワークショップを通じて「部活動とは何か?」「部活動で自分たちができることは?」「新しいスポーツ部活を作るなら」など、グループで話し合い、意見をまとめて発表します。また、ワークショップでは、久留米大学の行實鉄平准教授がファシリテーターとなり、生徒たちにテーマを提示して議論を円滑に進めるためのサポートをします。
(写真)ワークショップのファシリテーターを務める久留米大学・行實鉄平准教授
『部活動ワークショップ』では活発な話し合い
2024年度の『部活動ワークショップ』では、ワークショップに先立ち、ファシリテーターの行實准教授から、「部活動とはどういったものか?」、「体育と部活(スポーツ)の違いとは?」、「部活動での指導者の仕事(指導以外のことも)は?」などといった課題の問題点を提示され、生徒たちは3回のワークショップに臨みました。ワークショップでは、生徒から多くの意見を引き出せるように5人から6人のグループに分かれて話しやすい雰囲気づくりを行うとともに、円滑な話し合いができるように司会、書記、タイムキーパー、発表などの役割分担を行いました。
(写真)グループ内で意見を出し合う生徒たち
- 第1回:部活動の本質を知る[2024年5月28日開催]
ワーク1「新しい部活を考えてみる」
ワーク2「部活動に関するjobを考えてみる」
- 第2回:新しい部活動(誰もが集えるplay環境)を創造する[2024年8月23日開催]
ワーク1「ACP※(新たなplay)を使った部活動について考えてみる」
ワーク2「ACP※(新たなplay)のアレンジを考えてみる」※ACP(アクティブ・チャイルド・プログラム):子供が発達段階に応じて身につけておくことが望ましい動きを習得するとともに、楽しみながら積極的にからだを動かせる運動プログラムとして日本スポーツ協会が開発・普及。
- 第3回:新しい部活(誰もが集えるplay環境)を評価する[2024年11月26日開催]
ワーク1「現在の部活動について」
ワーク2「魅力ある部活動について」
ワークショップは基本的に生徒たちだけで行います。グループ内で意見を出し合い、部活動の可能性について探っていきます。第2回のワークショップでは、ACP(アクティブ・チャイルド・プログラム)を活用した新しいスポーツ活動を考え、実際に自分たちで身体を動かしながら、ルールやアレンジの確認や検討を行いました。
(写真)第2回のワークショップでは、発案したスポーツ活動を実際に体験(写真提供:南関町立南関中学校)
生徒自身が考えることが大切
南関中学校ではなぜ『部活動ワークショップ』を開催したのでしょうか? 行實鉄平准教授がワークショップ内でこのように語っていました。
「これまでの部活動改革は学校や地域の大人たちが中心となってきましたが、実際に活動する生徒たちを中心に据えなければなりません。“スチューデンズセンタード(Student-centered)”という言葉がありますが、生徒を中心に、生徒を取り巻く関係者(学校・保護者・地域)全員が互いに認め合い、成長していくために、生徒自身が考えていくことが大切だと思います」
本ワークショップは3年間で計画されており、初年度となる2024年度は、自分たちが部活動でできることや、誰もが参加しやすい部活動、自分たちがやりたい部活動など、現在の部活動について話し合うことからからスタートしました。第3回のワークショップでは、今年度の中心的なメンバーだった3年生と共に2年生が一緒に参加し、次年度以降にバトンを引き継いでいきます。将来的には生徒が発案した活動が新たな地域クラブ活動として生まれるかもしれません。
まとめ
生徒のニーズが多様化する中で、自らのアイデアで新たなスポーツを「つくり」、楽しく身体を動かしたくなるような環境を築いていけるとしたら、それは生徒にとって貴重な体験となるのではないでしょうか。南関中学校の『部活動ワークショップ』の取組は、今後の部活動のあり方を変え、新たな地域クラブ活動を創っていく可能性を秘めています。持続可能で多様なスポーツ環境の実現に向けて、スポーツ庁としても応援していきたいと思います。
●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁 - 運動部活動の地域連携や地域スポーツクラブ活動移行に向けた環境の一体的な整備(2025-02-01閲覧)
スポーツ庁 - 学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン(令和4年12月)(2025-02-01閲覧)
スポーツ庁 - 部活動改革ポータルサイト ~学校部活動の地域連携・地域クラブ活動への移行(地域移行)に向けて~(2025-02-01閲覧)