世代を超えて多種のスポーツを楽しめる新たな価値を創出 〜沖縄県石垣市での地域スポーツクラブ活動事例〜

世代を超えて多種のスポーツを楽しめる新たな価値を創出 〜沖縄県石垣市での地域スポーツクラブ活動事例〜

スポーツ庁では、少子化の中でも、将来にわたって生徒が継続的にスポーツ・文化芸術活動に親しむ機会を確保することなどを目的に、部活動改革を進めています。地域クラブ活動においては、学校部活動が担ってきた教育的意義を継承・発展させつつ、地域に存在する人的・物的資源を活用しながら、地域全体で支えることで可能となる新たな価値を創出し、より豊かで幅広い活動を目指していくことが期待されています。
今回、デポルターレでは、多世代・多種目の地域クラブ活動を行っている沖縄県石垣市の事例に注目し、取材しました。

地域クラブ活動において実現が期待される新たな価値とは

文部科学省が令和7年12月に策定した「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、地域クラブ活動の在り方として、「地域クラブ活動においては、学校部活動が担ってきた教育的意義を継承・発展させつつ、新たな価値を創出することが重要」とされています。

新たな価値の例としては、

①生徒のニーズに応じた多種多様な体験(複数の競技種目等に取り組むマルチスポーツや総合文化芸術、スポーツと文化芸術の融合、レクリエーション的な活動等を含む。)
②生徒の個性・得意分野等の尊重
③学校等の垣根を越えた仲間とのつながり創出
④地域の様々な人や幅広い世代との豊かな交流
⑤適切な資質・能力を備えた指導者による良質な指導
⑥学校段階にとらわれない継続的な活動(引退のない継続的な活動)及び地域クラブ活動の指導者による一貫的な指導

などが挙げられます。

世代を超えて多種のスポーツを楽しむ沖縄県石垣市の地域クラブ活動

沖縄県石垣市では「多世代・多種目の地域クラブ活動」に取り組んでいます。

沖縄県石垣市では9つある中学校のうち6校が生徒数50名以下の小規模校で、学校単位での部活動継続が困難な状況でした。令和5年度には運動系部活動加入率が53.7%となり、生徒のニーズに応じたスポーツの体験機会の提供が求められていました。

令和5年度、沖縄県と一般社団法人石垣島アスリートクラブが協力し、総合型地域スポーツクラブによる部活動改革に関する検証が行われ、アカデミー形式で陸上競技、サッカーにおいてそれぞれ参加者を募る形で地域クラブ活動を実施しました。

4つのコースを自由に参加できる地域クラブ活動へ

令和6年度からは総合型地域スポーツクラブ内に自由に選択が可能な4つの種目(陸上競技/サッカー/アルティメット(フライングディスク競技)/スポーツトレーナー)を設置、月の活動費を一律に設定して自分の活動したい種目や曜日を選んで参加できる仕組みとし、取組をスタート。

多世代が一緒に活動して競技大会に参加

アルティメットコースでは、小学生・中学生・高校生・社会人と多世代の参加者が集まり一緒に活動。小学生4名、中学生7名、高校生6名、大人2名の計19名が、週2回、木曜日の夕方と日曜日の昼に90分間の練習に取り組んでいます。小学生から社会人のメンバーでチームを編成して「沖縄オープンアルティメット大会」に出場。大会では大学生や社会人のチームと対戦するなど世代を超えてスポーツを楽しんでいます。

多世代が一緒に活動して競技大会に参加:イメージ

地域クラブ活動関係者及び参加者の声

今回、アルティメットコースの練習現場に伺い、地域クラブ活動に携わっている、行政・運営・参加者の立場からお話を聞きました。

まずは行政の立場として、地域クラブ活動以前の状況と活動を続けるうえでの課題について、沖縄県教育委員会 健康体育班主任指導主事 津波古さんにお聞きしました。

沖縄県教育委員会 健康体育班主任指導主事 津波古さん:イメージ

「沖縄県では、41市町村中15市町村が離島となっております。小規模な離島も多く、島の住人自体が減っているため、それに伴い子供も減少しております。離島での学校部活動では、団体スポーツに取り組むことが困難な状況です。石垣島だけの問題ではなく、沖縄県全体で離島部活動の課題解決に向け、ICT活用やデジタルコンテンツ導入が考えられます。学校の施設利用調整は教員の負担軽減を目指し、システム構築やスマートロック導入に向けて検討しています。石垣市のような多世代による取組は、地域コミュニティの活性化も期待でき、他の地域でも導入されることを期待します」。

続いて、地域クラブ活動の運営に携わっている石垣島アスリートクラブの新谷代表に、陸上競技、サッカーのほかにアルティメットを導入した経緯についてお話を聞きました。

石垣島アスリートクラブ 新谷代表:イメージ

「アルティメットは、選手が意図的に反則をすることはないという前提でルールが作られていて、審判のいない中で、選手自らがゲームをつくっていくというのが、大きな特徴です。そのため、身体接触も少なく、男女混合でも楽しめ、お互いのプレーを尊重しながらスポーツを行うため、多世代交流に適したスポーツとして地域クラブ活動に取り入れました。また、アルティメットは、複数の多様なスポーツを楽しむ“マルチスポーツ”の普及にも適したスポーツです。世代を超えた交流により、チーム内の雰囲気は良好で、子供たちは出場する大会での大学生との対戦を楽しんでいるようです。一方、地域クラブ活動の課題として挙げられるのは練習場所の確保の難しさです。他のイベントや競技との兼ね合いで場所が確保できないことがあります。現在、アルティメット競技の普及活動として、中学校や小学校の体育授業でアルティメットを導入してもらう取組も始めています」。

地域クラブ活動に参加している方々のコメントをまとめました。

中学1年生の生徒は、小学生時代にスケート経験があり、中学に進学した際に誘われてアルティメットに参加。年上の高校生や、年下の小学生との練習は良い経験となっていて、今は友人も誘って楽しんでいます。全国大会優勝を目標に地域クラブ活動以外にも自主練習に励んでいます。
中学2年生の生徒は、友人の誘いでアルティメットに参加。世代の異なるチームメイトと接することでコミュニケーション能力が向上したそうです。現在、硬式テニス、ダンス、アルティメットに参加し、このまま3つの活動を継続していきたいと語ります。
高校2年生の生徒は、地域クラブ活動以外では、自主練習で陸上練習を行い、地域クラブ活動の園児に陸上の指導もしています。アルティメットは世代を超えて楽しめる地域クラブ活動で、教えることで自身も成長できると語ります。

社会人で地域クラブ活動に参加している女性は、体育大学の部活動でアルティメットのプレー経験があり、元教員というバックグラウンドも持っています。アルティメットのプレーを楽しむ経験者として、他の参加者を教えるだけでなく、周りを見ながら、輪に入れていない子への声掛けや、中高生に対して下級生へのリードを促すという役割も担っているといいます。

地域クラブ活動に参加している方々:イメージ

まとめ

石垣島の多世代が参加する地域クラブ活動を取材してきましたが、参加者の皆さんが地域クラブ活動で体を動かすこと、世代の離れた仲間や指導者と交流することを楽しんでいることが伝わってきました。離島という地域の実情に応じた魅力ある地域クラブ活動を展開していました。

部活動の地域展開等は、地域の様々な関係者が連携・協働し、子供たちにとってより良いスポーツ環境を未来へ繋ぐ取組です。
スポーツ庁としても、部活動の地域展開等の全国的な実施に取り組んでまいります。
―「部活動が変わる、未来が広がる。」

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●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 事例集・全国の取組紹介(2026-01-01閲覧)

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