今後の国際競技力向上の羅針盤となる「持続可能な国際競技力向上プラン」を改定

今後の国際競技力向上の羅針盤となる「持続可能な国際競技力向上プラン」を改定

スポーツ庁では、選手の育成から競技環境整備までを総合的に見直し、長期的かつ持続的に国際競技力を高めることを目的に策定した「持続可能な国際競技力向上プラン(以下、本プラン)」を、2022年の北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、北京大会)・2024年のパリオリンピック・パラリンピック競技大会(以下、パリ大会)の成果や課題を踏まえ、2025年3月に改定しました。

「持続可能な国際競技力向上プラン」が策定された経緯

スポーツ庁では、2016年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック競技大会後、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京大会)に向けた国際競技力向上のための取組・支援を強力で持続可能な体制として構築・継承することを目的に「競技力強化のための今後の支援方針」を策定し、関係各機関とともに取組を進めてきました。
取組の成果は、平昌冬季オリンピック・パラリンピック競技大会や東京大会における日本代表の活躍に現われましたが、これらの大会の結果等も踏まえ、それまでの施策の成果と課題について評価検証を行いました。2021年12月、検証結果を踏まえ、東京大会後における我が国の国際競技力の維持・向上のために策定したのが、「持続可能な国際競技力向上プラン」です。

3つの“根底にある考え方”

本プランに基づいて実施してきた取組は、北京大会において冬季オリンピックとして過去最多となる総メダル数を獲得したほか、パリ大会において、オリンピックで金メダル数、総メダル数、入賞数、メダル獲得競技数いずれも海外開催大会では過去最多となり、パラリンピックでもメダル獲得競技数が海外開催大会では過去最多となるなど、近年のオリンピック・パラリンピック競技大会(以下、オリ・パラ大会)での日本代表選手団の輝かしい結果に一定の役割を果たしてきました。これらの好成績を持続可能なものとし、今後もより多くの競技・種目で躍進していくためには、アスリートの強化活動の基盤たる発掘・育成・強化の取組を一体的に捉え、その質の向上を目指し、刻々と変化する状況・情勢を捉えながら、重要性が増している観点も含めて先手を打って取り組んでいく必要があります。そこで、改めてこれまでの取組の検証を行い、アスリートの発掘や育成・強化、先端技術や広い知見を活用した質の高いトレーニング環境の整備、支援組織や活動拠点を超えたシームレスなサポート、オリ・パラの垣根を超えた取組をはじめ、近年発達がめざましいAIテクノロジーの活用など、様々な観点からの議論を重ね、アスリート・センタードの観点は継承しつつ、時代の変化も踏まえた改定を行いました。

改定後の本プランにおいては、スポーツ界が一体となってより効果的な国際競技力向上を実現していくことが可能となるよう、アスリートや強化活動に関わる全ての人々の間での共通認識として、以下の3点を、それぞれの具体的な取組の“根底にある考え方”として掲げました。

取組資料

身体機能・コンディショニングに関するリテラシーの向上

アスリートをソフト・ハードの両面から支援することに加え、コーチやトレーナー等、アスリートを支える人がコンディショニングに関する理解を深めていくこと、また、アスリートも自身の心身の状況を理解し、必要なサポートを選べるようにしていくことで、より最適なコンディショニングサポートを受け、パフォーマンスを向上させていくことが可能になります。

競技やオリ・パラの枠組みを超えた連携、強化活動

競技やオリ・パラの枠組みを超えて、支援組織間・活動拠点間でシームレスに連携したり、クロストレーニングの実施や、アスリートや指導者が交流しながら強化活動を行ったりしていくことは、トレーニング方法の多様化にとどまらず、困難の乗り越え方やプレッシャーのマネジメント方法等に関する示唆も得られるものであり、新たな可能性の発見、知見の共有に繋がることが期待されます。

アスリートの強化活動を通じた人類の潜在的身体能力の開拓

アスリートが自身の持つ能力を向上させていくことは、ひいては人類の持つ潜在的身体能力をも開拓することに繋がります。例えば、特にパラスポーツのように一定の制約のもとで能力を開拓していく活動は、近年模索されている宇宙空間への人類の活動領域拡大に向けた挑戦とも近似するものです。すなわち、競技活動において心身の感覚・能力を極限まで研ぎ澄ましていくアスリートの営みは、人類の新たな可能性を広げるものと考えられます。

本プランの基本的な方向性

これらの“根底にある考え方”に基づいて、以下4つの方向性のもと、各施策を推進していきます。

①アスリートの強化活動の基盤の確立・強化

アスリートの発掘・育成・強化の取組では、NFを中心に各機関間において連携を強化。強化戦略プランの実効化、指導者・サポートスタッフ等の育成・充実、競技やオリ・パラの垣根を超えた強化活動等を一体的に進め、アスリートの強化活動の基盤を築きます。

②アスリートへのスポーツ医・科学、情報等による支援の充実

スポーツ医・科学の知見を活用したサポート、競技ルールや会場の環境などの情報把握など、アスリートがそのポテンシャルを最大限発揮できる支援を十分に受けられるよう、ハイパフォーマンススポーツセンター(以下、HPSC)を中心に、大学や民間企業等とも連携していきます。

③アスリートが居住地域や活動拠点等にかかわらずハイパフォーマンスサポートを受けられる環境の実現

各地域のスポーツ医・科学センターや大学、ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点等を活かした各地域・拠点におけるサポート機能の強化、および、関係機関とHPSCやNFとの連携を通じ、アスリートが居住地域や活動拠点にかかわらずサポートを受けられる体制を構築します。

④アスリートがライフステージや外的要因に左右されず競技活動に専念できる環境の構築

アスリートが心身の健康を維持しながら競技活動を行えるよう、ライフステージに応じた支援やウェルビーイングの向上に向けたサポート、NFの組織基盤強化・ガバナンスの確保等を通じ、ライフステージや外的要因に左右されず競技に専念できる環境を構築します。また、ドーピングは絶対に許されるものではないことを改めて認識し、ドーピング防止活動の充実に取り組みます。

これらの取組について、スポーツ庁をはじめ、日本スポーツ振興センター(JSC)、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラスポーツ協会(JPSA)、日本スポーツ協会(JSPO)、国内の中央競技団体(NF)などが役割分担・連携しながら、スポーツ界が一体となって取り組んでまいります。

まとめ

本プランはオリ・パラに向けて策定されていますが、現時点でオリ・パラ大会の実施競技となっていない競技、またオリ・パラ大会のみならず、2026年の愛知・名古屋で開催されるアジア・アジアパラ競技大会をはじめ、各競技の世界選手権等を含む主要国際競技大会についても対象としています。
議論の場においても、室伏長官から、本プランはただ改定するだけで競技力が向上するわけではなく、実際にすべての関係者が動いていくことで初めて実効性を持つため、スポーツ界が一体となって取組を推進していく必要があることを関係者と共有しました。
2028年のロサンゼルスオリ・パラ大会等で、引き続き、我が国のアスリートが活躍できるように、スポーツ庁と関係機関・団体は総力を挙げて選手強化活動を促進、支援していきます。

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スポーツ庁 - 次代へ向けた「持続可能な国際競技力向上プラン」を発表

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 持続可能な国際競技力向上プラン(令和7年3月改定)(2025-05-01閲覧)

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