『O-60 モンテディオやまびこ』が初の二冠受賞〜SOIP DEMODAY 2024〜

『O-60 モンテディオやまびこ』が初の二冠受賞〜SOIP DEMODAY 2024〜

今年3月6日、2024年度『SOIP2024 DEMODAY(デモデイ)』が都内にて開催されました。今回、7つの共創プロジェクトの中から、モンテディオ山形 × 株式会社ボイスクリエーションシュクルによる共創プロジェクトが、本プログラムにおいて初めて、最優秀賞およびオーディエンス賞の二冠を受賞しました。

SOIP DEMODAYとは

スポーツ庁では、スポーツ界のリソースと他産業等との技術知見を連携させることにより、世の中に新たな財やサービスを創出するプラットフォーム(スポーツオープンイノベーションプラットフォーム:SOIP)の構築を推進し、スポーツチーム・団体と他産業界との連携による新規事業の創出及び既存事業の成長・拡大を支援しています。『SOIP DEMODAY』は、スポーツオープンイノベーション推進事業の成果報告の場として行われ、今年度(2024年度)で4回目を迎えます。今年度も厳正なる審査の結果、スポーツ団体 × 事業者による7つの共創事業体を採択しました。

アクティブシニアコミュニティ『O-60 モンテディオやまびこ』

2024年度の最優秀賞およびオーディエンス賞の二冠に選ばれたのが、山形県全県をホームタウンとするプロサッカークラブ“モンテディオ山形”と、声・話し方・コミュニケーション教育「声磨き®」を全国各地で展開する “株式会社ボイスクリエーションシュクル”による共創事業『“声”のチカラを起点に高齢者が輝き活躍する地域へ〜O-60 モンテディオやまびこ』です。

モンテディオ山形のホームタウンである山形県は、県民の高齢化率25%という地域であり、本事業では、スポーツをHUB(ハブ)とした高齢者の健康課題や活躍できる機会を創出することを目指しました。

モンテディオ山形が、クラブのシニア会員に独自アンケートを行ったところ、以下のような回答が寄せられました。

  • 一生自分の足で歩きたい
  • 認知症になりたくない
  • 一生自分の歯で食べ物を食べたい
  • 誤えんになりたくない
  • 何歳になっても人の役に立ちたい
  • 家族や友人と楽しくおしゃべりしたい

健康に関する以外にも「人の役に立ちたい」「友人と楽しく過ごしたい」など、今後の新しい繋がり、活動できる場所を求めていることが分かりました。

この結果などを踏まえ、“声のチカラで山形を元気に”をテーマに、60歳以上のアクティブシニアコミュニティ『O-60 モンテディオやまびこ』が発足されました。

声を出して応援するサッカー文化から発想

“声”を起点にした理由について、「声を出すこととサッカーには強い結びつきがある」と声を出して応援するサッカー文化が背景にあると語ります。スタジアムを地域コミュニティの中心として活用でき、声援によって選手のモチベーションがあがり、新たなファンサービスの創出に繋がることが期待されます。

DEMODAYプレゼンテーション資料より1

また、声を出すことは脳の活性化や健康促進効果など、シニア世代が抱える課題解決にも繋がります。本事業ではパートナー企業のボイスクリエーションシュクルが独自開発し各地で展開する「声磨き®トレーニング」が活用されました。

《声を出すことのメリット》

  • アゴの可動域や滑舌をよくすることで、認知症予防効果
  • よく噛む、飲み込むことで、消化の活性化や誤嚥予防
  • コミュニケーション能力向上など

DEMODAYプレゼンテーション資料より2

シニアが健康で活躍できる地域を目指す

『O-60 モンテディオやまびこ』では、3つの課題(①健康、②繋がり、③機会)を解決すべく、以下のような実証事業を展開しました。

「やまびこ(声磨き®トレーニング)」の利用者を増やすため、自治体やスタジアムで実施。参加者の多くはレッスンによる変化を実感したようです。また、トレーニングのインストラクターを育成するために研修などを行いました。

シニア世代が“遊べる”“学べる”場所、コミュニティ機会を設けました。60歳以上を対象としたチャットによるコミュニティづくりをはじめ、10月にはクラブ初となるスタジアムイベント「シニアデー」を開催。スタジアムで積極的に声がけを行う挨拶運動「やまびこ挨拶隊」も結成されました。スタジアムを中心にシニアが活躍できる場所を数多く創出しました。現在は『Over-60 Community』という新たなコミュニティを立ち上げ、取組を継続しています。

DEMODAYのプレゼンテーションでは、「単なるシニアビジネスではなく、新たなファンビジネスです。サッカークラブの高齢化社会に対応した新たな価値を提供していきたい」と語っていました。

やまびこ活動の様子:イメージ1

やまびこ活動の様子:イメージ2(写真)やまびこ活動の様子(写真提供:モンテディオ山形・株式会社ボイスクリエーションシュクル)

今回のDEMODAYに参加してみて

モンテディオ山形、株式会社ボイスクリエーションシュクルの担当者に二冠受賞およびDEMODAY参加について感想を伺いました。

−優秀賞とオーディエンス賞の2冠受賞となった感想をお願いします。

◆モンテディオ山形
受賞は非常に嬉しく、関係者の努力が報われたと感じています。
当初はPoC段階(検証段階)で不安もありましたが、参加者の熱意と活動の広がりから、手応えを感じていました。特に、シニア層の新たな挑戦への意欲が評価されたことが喜びです。

◆株式会社ボイスクリエーションシュクル
構想当初「声×スポーツ」で地域活性化をするなんて無理だ、と周囲から言われてきましたが、モンテディオ山形様と2年間丁寧に積み上げてきた結果このような評価をいただけたことは大変ありがたく思っています。メンターの皆様の多角的なアドバイスもいただきながら、何度も何度も議論を重ね、山形にも通いつめました。とにかく行動し前に進んでいったという自負はありましたので、受賞の自信はありました。

−プロジェクトで共創してみて良かったこと、何か印象に残っているエピソードがありましたら教えてください。

◆モンテディオ山形
共創により、自治体や企業と連携し、新たなコミュニティが形成されました。
特に、初めてサッカー観戦をしたシニアの方々が、スタジアムでの体験を通じて生き生きとされていた姿が印象的でした。このような交流が地域活性化につながると実感しています。

◆株式会社ボイスクリエーションシュクル
共創を通じて自社だけでは実現できなかったスケール感でプロジェクトが広がったことに大きな手応えを感じました。結成当初、たった5人の参加者でコミュニティがスタートしましたが、共創の輪が少しずつ地域へと波及し、気づけば多くの仲間が集い、やまびこムーブメントとして成長していく過程は非常に感慨深いものでした。高齢者の健康増進という文脈に留まらず、地域との繋がりや社会参加へと発展したこの営みは、振り返ればファンマーケティングの観点からも大きな意味を持つ取り組みだったと実感しています。

−DEMODAYに参加されていかがでしたか。

◆モンテディオ山形
SOIP DEMODAYは、プロジェクトの成果を広く発信できる貴重な機会でした。
多くの方々からフィードバックをいただき、今後の展開へのヒントを得ることができました。また、他の参加者との交流を通じて、新たな連携の可能性も感じました。

◆株式会社ボイスクリエーションシュクル
「声に着目をしたことが無かったので可能性を感じた!」「声でビジネスがこんなにも多角的に広がるのか!」と参加企業様から多くのフィードバックを頂きました。これまで15年間「声のチカラで日本を元気に!」というミッションで行ってきましたが、あらためて声の可能性を評価いただき、これまでのことが間違いではなかったと思えた素晴らしい1日でした。今後に繋がる素敵なご縁も沢山いただけたことも貴重な機会でした。

まとめ

今回の『SOIP2024 DEMODAY』では、モンテディオ山形 × 株式会社ボイスクリエーションシュクルによる共創プロジェクトが、最優秀賞に加え、オーディエンス賞も受賞する初の二冠受賞となりました。地域が抱える高齢化問題とスポーツ振興を一緒に解決していく取組は、スポーツオープンイノベーションならではのアプローチではないでしょうか。スポーツ庁は引き続き、事業者の参加を歓迎し、スポーツによる問題解決に向けた挑戦を応援していきます。

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●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - スポーツオープンイノベーションの推進(2025-05-01閲覧)
スポーツ庁 YouTube公式チャンネル - SOIP2024 DEMODAY 2025.3.6開催(2025-05-01閲覧)
モンテディオ山形 - Over-60 Community(2025-05-01閲覧)

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