部活動改革の“現状”と“展望”〜有識者会議による「中間とりまとめ」〜
文部科学省では、2023年度から2025年度までを「改革推進期間」とし、部活動改革の取組を進めています。改革推進期間の2年目となる2024年、地方公共団体の取組状況についてフォローアップ調査を実施。また、2024年8月には有識者会議を立ち上げ、改革推進期間後の2026年度以降の方向性等について議論を行っています。調査結果や有識者会議の「中間とりまとめ」(2024年12月)を踏まえ、部活動改革の現状と展望についてご紹介します。
フォローアップ調査から読み取る「部活動および地域クラブ活動の現状」について
今回、部活動改革の「進捗状況」と「今後の方向性」について、自治体に対するフォローアップ調査が実施されましたので、主だった結果をご紹介します。
部活動改革に関する協議会・推進計画の整備状況
調査に回答のあった自治体のうち、3/4以上の自治体が、2024年度までに部活動改革に向けて協議会の設置済みもしくは設置予定と回答。半数以上の自治体が2024年度までに推進計画を策定済みもしくは策定予定と回答しています。
協議会・推進計画の整備状況:図
休日及び平日の部活動の地域連携・地域移行の動向(部活動数)
2023年度以降、地域移行(地域スポーツクラブでの活動)に取り組む部活動数は増加しています。休日では、2025年度までには、23,308部活動(54%)が地域連携または地域移行(地域スポーツクラブでの活動)を予定しています。
休日の部活動の地域連携・地域移行の動向(部活動数):図
平日では、2025年度までには、8,767部活動(31%)が地域連携または地域移行(地域スポーツクラブでの活動)を予定しています。
平日の部活動の地域連携・地域移行の動向(部活動数):図
多種目等の新しい活動の実施検討状況
部活動改革の「生徒の豊かで幅広い活動機会と新たな価値を創出する」という理念から、活動内容や実施形態など従来の部活動に捉われない「新しい活動」を実施または検討している自治体が増えています。
「多種目等の新しい活動の実施検討状況」の設問では、4割程度の自治体が以下のような活動を実施または実施検討段階にあると回答しています。
①多様な種目等を体験する活動
②レクリエーション的な活動
③ユニバーサルスポーツ
多種目等の新しい活動の実施検討状況(自治体数):図
地域クラブ活動の課題 上位4つ
部活動の地域連携・地域移行が進むなか、調査では地域クラブ活動の課題も見えてきました。自治体が地域クラブ活動の課題として認識している事項では、以下4つの回答が多く挙げられました。
①指導者の量の確保(72.0%)
②持続可能な収支構造の構築(59.3%)
③保護者・生徒の普及啓発・理解(参加費用負担への理解含む)(49.8%)
④自治体・学校と運営団体・実施団体の連携体制の構築(45.5%)
地域クラブ活動の課題 上位4つ:図
同設問について自治体規模別の結果をみると、人口規模の比較的小さな自治体では、「指導者の量の確保」を課題として回答する割合が高く、人口規模の比較的大きな自治体では、「指導者の量の確保」に加え、「持続可能な収支構造の構築」や「保護者・生徒への普及啓発・理解(参加費用負担への理解含む)」の回答も多くみられました。
着実に進捗する部活動改革だが課題も多い
「改革推進期間」がスタートし、国において予算を確保している「地域クラブ活動への移行に向けた実証事業」における採択自治体数は、2023年には339市区町村、2024年には510市区町村と増加しており、2025年にはさらに増える見込みです。
フォローアップ調査の結果から、部活動改革の取組は着実に進捗していることが分かりました。すでに地域移行を進めている地方公共団体等も多く、今後も改革は進捗していくことが見込まれます。一方、人口規模や地域性など自治体ごとに課題も挙がっています。課題解決に向け、国において実証事業等の成果と課題の整理・分析を行い、解決方策等を広く普及していく必要があります。
中間とりまとめを受けて「今後の部活動改革の方向性」について
2024年8月、スポーツ庁・文化庁で、有識者による「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」を設置。改革推進期間後の2026年度以降の部活動改革の方向性等について議論を行っています。
2024年12月には、有識者会議の「中間とりまとめ」が出され、会議でのこれまでの議論がまとめられました。以下、一部概要を紹介します。
なお、室伏スポーツ庁長官による「中間とりまとめ」の解説動画を以下のページにて掲載しておりますので、ぜひ、併せて御覧ください。
改革の理念及び基本的な考え方
- 急激な少子化が進む中でも、将来にわたって生徒が継続的にスポーツ・文化芸術活動に親しむ機会を確保・充実することが改革の主目的。
- スポーツ・文化芸術活動を、地域全体で関係者が連携して支え、生徒の豊かで幅広い活動機会を保障。
- 地域クラブ活動においては、部活動が担ってきた教育的意義を継承・発展させつつ、新たな価値(多種多様な体験、学校等の垣根を超えたつながり、引退のない継続的な活動等)を創出することが重要。
- 上記の理念等をより的確に表すため、従来使ってきた「地域移行」という名称は「地域展開」に変更。
改革の進め方
●休日について
次期改革期間内に、原則、すべての学校部活動において地域展開の実現を目指す。
※地域の実情等を踏まえつつ、できる限り前倒しでの実現を目指すことが望ましい
※中山間地域や離島など特殊な事情により地域展開に困難が伴う場合等には、国としても、きめ細やかなサポートを通じて地域展開を後押し。それでも地域展開が困難な場合には、当面、部活動指導員の配置等を適切に実施。
●平日について
各種課題を解決しつつ、さらなる改革を推進。まずは、国において、地方公共団体が実現可能な活動のあり方や課題への対応策の検討等を行うとともに、地方公共団体において地域の実情等に応じた取組を進める。
次期改革期間
2025度に「改革推進期間」を経て、2026年度から「改革実行期間」へ移行。
前期:2026(令和8)〜2029(令和10)年度→中間評価→後期:2030(令和11)〜2032(令和13)年度
- 現時点で着手していない地方公共団体においても、前期の間に休日の地域展開等に着手。
- 平日の改革については、前期において活動のあり方や課題への対応策等の検証を行ったうえで、中間評価の段階であらためて取組方針を定め、さらなる改革を推進。
費用負担のあり方等
- 地方公共団体において、地域の実情等に応じて安定的・継続的に取り組みが進められるよう、受益者負担と公的負担とのバランス等の費用負担のあり方等を検討することが必要。
- 公的負担については、国・都道府県・市区町村で支え合うことが重要。
- 企業版ふるさと納税やガバメントクラウドファンディングをはじめとした寄付等の活用、新たな財源の確保も有効に組み合わせていくことが重要。
- 家庭の経済格差が生徒の体験格差につながることがないよう、経済的に困窮する世帯の生徒への支援については確実に措置を行うことが必要。
地方公共団体における推進体制の整備
- 地方公共団体において、専門部署の設置や総括コーディネーターの配置等、適切な推進体制を整備することが重要。
- 都道府県が広域自治体としてリーダーシップを発揮し、市区町村に対して必要な支援をきめ細かく行うことも重要。
- 一つの市区町村における対応が困難な場合には、複数の市区町村による広域連携の取組を進めることの重要。
また、実証事業における取組・成果の分析等も踏まえ、以下の個別課題への対応に向けて、今年の春頃を予定している「最終とりまとめ」までに、さらに検討を深めます。
個別課題
①地域クラブ活動を担う運営団体・実施主体の体制整備
②指導者の質の保証・量の確保
③活動場所の確保
④活動場所への移動手段の確保
⑤大会やコンクールの運営のあり方
⑥生徒・保護者等の関係者の理解促進
⑦生徒の安全確保のための体制整備
⑧障害のある生徒の活動機会の確保
まとめ
部活動改革の主目的は、少子化が進む中でも、子供たちのスポーツ活動の機会を確保することであり、子供たちが希望する活動を主体的に選択できる環境を整備することです。学校部活動から地域スポーツ活動へ変わる中で、今まで学校部活動を通じてスポーツ活動に親しんできた子供たちが継続して活動していけるようにすることが重要です。
そのためには、学校、保護者、自治体、地域関係団体など幅広い関係者が、連携・協働しながら、一体となって取り組む必要があります。
スポーツ庁としては、実証事業等を通じて各地の取組を支援しつつ、今後の有識者会議の議論も踏まえながら、改革の推進に向けた取組を進めてまいります。
関係者の皆様におかれましても、引き続きの御理解と取組の推進を改めてお願い申し上げます。
なお、スポーツ庁では、「部活動改革ポータルサイト」において、全国の取組の事例集や動画などの情報を幅広く掲載しているとともに、自治体からの部活動改革に関する相談やお問合せにお答えする「地域スポーツクラブ活動アドバイザー事務局」を設置しておりますので、改革の推進にあたっては、ぜひこれらもご活用いただければ幸いです。
●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁 - 部活動改革ポータルサイト ~学校部活動の地域連携・地域クラブ活動への移行(地域移行)に向けて~(2025-01-01閲覧)
スポーツ庁 -地域スポーツクラブ活動アドバイザー事務局(2025-01-01閲覧)
スポーツ庁 - 学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドラインに係るフォローアップ調査結果(速報値)令和6年8月(2025-01-01閲覧)
スポーツ庁 - 「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」中間とりまとめ(2025-01-01閲覧)