スタジアム・アリーナ改革からスポーツコンプレックスへ~令和7年度選定拠点表彰式&シンポジウム開催~

- もくじ
- 「スタジアム・アリーナ改革」から「スポーツコンプレックス」の推進へ
- スポーツコンプレックスとは
- 「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として令和7年度に2拠点を選定
- 三河安城交流拠点(アリーナ)
- GLION ARENA KOBE
- 令和7年度の選定拠点を対象とした表彰式をエディオンピースウイング広島で開催
- スポーツコンプレックスを普及するためのシンポジウムを開催
- 河合スポーツ庁長官がスポーツコンプレックスの意義とこれからの期待について語る
- 元Jリーガーの中西哲生氏を招いて基調講演を実施
- 「地域と共創する持続可能なスポーツコンプレックス」をテーマとしたパネルディスカッションを実施
- まとめ
スポーツ庁と経済産業省は平成28年より、まちづくりや地域活性化の核となるスタジアム・アリーナの実現を目指し「スタジアム・アリーナ改革」に取り組んできました。令和7年度からは、この改革をさらに発展させた「スポーツコンプレックス」という概念を打ち出し、その推進を図っています。
本記事では、これらの施策にもとづいて「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として令和7年度に選定した三河安城交流拠点(アリーナ)とGLION ARENA KOBE(ジーライオンアリーナ神戸)を紹介するとともに、令和8年9月3日にエディオンピースウイング広島で同時開催した令和7年度選定拠点の表彰式とスポーツコンプレックスを普及するためのシンポジウムの様子をお伝えします。
「スタジアム・アリーナ改革」から「スポーツコンプレックス」の推進へ
スポーツ庁と経済産業省が推進するスポーツコンプレックスについて解説します。
スポーツコンプレックスとは
スポーツ庁と経済産業省は、スタジアム・アリーナ改革をさらに発展させたスポーツコンプレックスという概念を打ち出し、令和7年度よりその推進を図っています。スポーツコンプレックスとは、「その地域ならではのまちづくりにおいて、核となるスポーツ施設の価値を最大化することを目的に、周辺のインフラや施設等と面的に連携して形成されるエリア」と定義しています。
そして、このようなエリアの実現を目指し、施設を核としたまちづくりビジョンを検討するとともに、実現に必要なエリアマネジメント等を通じて、地域活性化およびスポーツ振興を図るべく、スポーツコンプレックスを推進しています。
「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として令和7年度に2拠点を選定
スポーツ庁と経済産業省は、「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として、令和7年度に三河安城交流拠点(アリーナ)とGLION ARENA KOBEを選定しました。両施設の基本情報と評価ポイントは、次のとおりです。
三河安城交流拠点(アリーナ)
| 選定区分 | 設計・建設段階 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県安城市 |
| アクセス | JR東海道新幹線「三河安城」駅から徒歩3分 |
| 観客席 | 約5,000席 |
| ホームチーム |
・シーホース三河(Bリーグ) ・クインシーズ刈谷(SVリーグ) |
| 事業手法 | 負担付き寄附(民設・公有・民営) |
主な評価ポイント
- 安城市とシーホース三河による包括連携協定の締結など、ステークホルダーや専門企業、専門家との連携体制があること
- 社会課題を解決するためのイノベーションハブ構想があること
- 日本初となる「民設・公有・民営」という事業スキームで、固定費を抑えながら収益性の確保と運営の自由度を両立していること
- 最寄り駅からの動線上にマルチコンコースや多目的スペースを配置し、賑わいの創出が期待できること
GLION ARENA KOBE
| 選定区分 | 運営・管理段階 |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県神戸市 |
| アクセス | 各線「三宮駅」から徒歩約20分 ポートループ 他「アリーナ前」バス停下車すぐ ※土日祝日・イベント開催日は直行シャトルバスも運行 |
| 観客席 | 約10,000席 |
| ホームチーム | ・神戸ストークス(Bリーグ) |
| 事業手法 | 民設民営 |
主な評価ポイント
- アリーナ周辺にある緑地区域「TOTTEI PARK」や遊歩道などエリア全体を「TOTTEI」として一体運営していること
- 日本初となる「港湾環境整備計画制度(みなと緑地PPP)」を活用し、アリーナ周辺エリア(港湾緑地)で得た収益の一部を公共整備や緑地の維持管理に還元していること
- コミュニティ共創事業「Commons Tech KOBE」を推進し、そこで得たデータを活かしたイベントを開催していること
- 企業3社のコンソーシアムによる「民設・民営」のプロジェクトであるうえ、企業2社によるアリーナとチームの一体運営であることから自由度の高い事業が展開できること
- コンクリート床の採用や11tトラックが乗り入れ可能な搬入口の設置など、MICEや音楽興行も開催できる設計になっていること
令和7年度の選定拠点を対象とした表彰式をエディオンピースウイング広島で開催
9月3日(木)、令和7年度の「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」の選定拠点を対象とした表彰式を、令和6年度の選定拠点であるエディオンピースウイング広島で執り行いました。エディオンピースウイング広島は、開業以降、近隣にある平和記念公園や広島城、商業エリアと連携しながら、単なるサッカー専用スタジアムにとどまらず、地域の賑わいの創出や回遊性向上を実現する拠点です。
表彰式の冒頭、河合純一スポーツ庁長官から「三河安城交流拠点(アリーナ)は地方におけるアリーナ整備のモデルケースとして、GLION ARENA KOBEは神戸のにぎわいをさらに盛り上げる拠点として高く評価されたと伺っております。このような地域に賑わいを創出するスタジアム・アリーナと、さらにはそれを発展させたスポーツコンプレックスという考え方を発信しながら、全国各地の構想を支援していきたいと考えています」という挨拶がありました。

経済産業省大臣官房審議官(商務・サービス担当)の浅井俊隆氏からも挨拶があり、「今回選定された2つの施設は、民間主導によってスポーツを通じた交流や賑わい、新たな価値を創出する拠点として高いポテンシャルがあると認識しています」と説明。今後についても、「スポーツ庁と連携しながら、周辺施設を含めたエリア全体の価値向上と持続可能な事業運営を目指す『スポーツコンプレックス』をより一層推進していきます。また、スポーツ・エンタメコンテンツの海外展開や企業とのパートナーシップ形成の支援にも注力し、スポーツ産業の成長をスタジアム・アリーナや地域の発展につなげていきます」と語っていました。

続いて、選定拠点の代表者に表彰状と記念トロフィーの授与。その後、選定拠点からのプレゼンテーションがありました。
まずGLION ARENA KOBEの運営を担う株式会社One Bright KOBE 取締役の渋谷 樹氏から、民設民営のプロジェクトながら地域や行政への還元を意識して取り組んでいることや、初年度の成果として経済効果が約252億円と算出されていること、B2リーグの所属ながらアリーナ効果で神戸ストークスの来場者数が前年比200%になったこと等について発表がありました。今後の展望として「コミュニティ・プラットフォーム「Commons Tech KOBE」の活動で得た人流データを活用する等、このアリーナを起点としたスマートシティ構想を推進していきます」と述べていました。
次に、三河安城交流拠点(アリーナ)の事業主体である三河アリーナ株式会社 取締役社長の白井 博氏から、地方都市の課題として公立体育館の稼働率が高いことや、スポーツを見せるための「アリーナ」が存在しないこと、安城市の定住人口約18.7万人だけでは大規模施設の持続可能な運営が難しいことが挙げられました。そうした中で「地方都市では音楽興行やMICEの継続的な誘致が困難なうえ、大規模な座席の確保、維持にも限界があるため、アリーナをコンパクトに建て、関係人口を拡大するという発想の転換に至りました」と説明しています。
白井氏はこれからの目標として、「今回の選定を完成への評価ではなく、これからの実践への期待と受け止めています。地方都市とコンパクトアリーナによる持続可能な経営モデルを示すことと、シーホース三河とクインシーズ刈谷という2つのプロスポーツチームとともに地域のスポーツ文化を育てること、西三河の多様な主体と共創しながら関係人口を広げ、大勢の方々から選ばれる三河安城へ育てること、そして「地域とともに」「誰もが楽しめる」「誰もが繋がる」みんなのアリーナを目指すこと。この誓いを胸に挑戦を続けていきます」と宣言しました。
スポーツコンプレックスを普及するためのシンポジウムを開催
表彰式の後、同会場で「スポーツコンプレックス」の考え方や取組の意義等を普及するためのシンポジウムを開催。シンポジウムの内容はオンラインで生配信し、遠方の関係者も視聴できるようにしました。ここでは、当日の模様を紹介します。
河合スポーツ庁長官がスポーツコンプレックスの意義とこれからの期待について語る
開会に際して、河合スポーツ庁長官からスポーツコンプレックスについて「その地域ならではのまちづくりにおいて、核となるスポーツ施設の価値を最大化し、周辺インフラと連携して面(エリア)全体で考えていく取組です」と説明がありました。
続けて、「スポーツには喜びや感動をともに分かち合えるという素晴らしい価値があります。スタジアム・アリーナはそうした価値を体感できる場所であるとともに、まちづくりの拠点にもなります。スポーツの魅力や楽しさを多くの人に届け、地域に賑わいを生み出す『スポーツコンプレックス』の取組を、スポーツ庁も全力で応援してまいります」という意気込みを示しました。
元Jリーガーの中西哲生氏を招いて基調講演を実施
基調講演では、「地域とともに歩むスポーツ〜サッカーを通して学んだこと〜」をテーマとして、プロサッカー選手時代、名古屋グランパスや川崎フロンターレで活躍し、現在はスポーツジャーナリストとして活躍する中西哲生氏に講演いただきました。
中西氏からは、川崎市で等々力緑地再編整備が進む中で、その計画推進委員会に川崎フロンターレの代表として参加した際に、「サッカークラブだけでなく市民の皆様からも喜ばれるためにはどうすべきかという視点で意見を挙げていました」という紹介がありました。
そのうえで、「スタジアム・アリーナを建設、運営する際、自らの利益だけを追求するのではなく、行政と連携しながら市民の生活を豊かにするという姿勢を持つことが、スポーツコンプレックスの推進における本質だと考えています」と総括しています。

「地域と共創する持続可能なスポーツコンプレックス」をテーマとしたパネルディスカッションを実施
パネルディスカッションでは、以下のモデレーターとエディオンピースウイング広島に関係があるパネリスト4名を招いて、「地域と共創する持続可能なスポーツコンプレックス」をテーマに多角的な視点から議論が展開されました。
モデレーター
- 信江雅美氏(広島経済大学経営学部 スポーツ経営学科 教授)
パネリスト
- 小宮潤氏(株式会社中国新聞社 地域ビジネス局 ソリューション推進室長)
- 諏訪正浩氏(広島電鉄株式会社 地域共創本部 地域共創事業部長)
- 森﨑和幸氏(株式会社サンフレッチェ広島 育成担当兼育成スカウト)
- 若狭利康氏(エリアプラットフォーム・カミハチキテル代表)
信江氏は、スタジアム・アリーナの価値を「財務価値」と「社会価値」の総和として捉える視点が重要だとしたうえで、「社会価値があるからこそ、地方都市が持続可能なまちとして発展していくために、官民が連携してスポーツコンプレックスに取り組む意義があると考えています」と語りました。

若狭氏は、街づくりのためのエリアプラットフォーム・カミハチキテルにサンフレッチェ広島や広島ドラゴンフライズなども参画していることを明かし、「スポーツチームと連携したスタンプラリーを開催し、ファンやサポーターに街なかを歩いてもらうという社会実験を試みました。また、サンフレッチェ広島様と連携したグリーンバードという清掃活動も行っています」と地域のスポーツチームと連携した活動を発表しました。

小宮氏は、人口流出が続く広島において街の活力が失われると、自社に悪影響が及ぶ可能性を示唆しつつ、「新たなスタジアムが誕生したことで地域に賑わいや交流が生まれていることや、子供たちの健全育成につながっていることをメディアから発信し、多くの方に知っていただくとともに共感の輪を広げることで、広島県への来訪者をさらに増やしていけるのが当社の強みだと考えています」と述べました。

諏訪氏は、「単なる路面電車や路線バスの運行だけでなく移動のきっかけとなる賑わいづくりが必要と考え、まちづくり事業や観光事業に積極的に関わっています」と説明。加えて、地元スポーツチームと「安心安全な移動の提供(公共交通の視点)」「スポーツを活かした活性化(まちづくりの視点)」で連携しており、まち全体でスポーツを盛り上げるための取組を進めていることも発表しました。

森﨑氏は2027年2月、広島県内の中山間地域にある安芸高田市にJリーグ初となる中高一貫の選手寮「新三矢寮」(約90人規模)が完成予定であることを述べました。そこに入寮する中高生たちが地域の一員として生活することから、「地域の中学校や高等学校のクラス編成の維持、城跡清掃や祭礼といったボランティア活動への参加、地域にある飲食店や医療機関の利用、週末に試合があった際の保護者の来訪などを通じて、多面的な視点から地域経済の活性化に貢献していきたいと考えています」とコメントしました。

登壇者たちからのコメントを受け、信江氏は「スポーツコンプレックスの本質は、スポーツ施設の周辺に単にさまざまな施設を集めることだけではなく、地域のビジョン、人、組織、活動をつなぎ、スポーツが生み出す価値をまちや地域全体へ広げ、循環させる仕組みをつくることにあると改めて認識しました。また、都市だけでなく、中山間地域においてもスポーツを起点として人を育て、人を呼び込み、地域活性化につなげていくという新しいスポーツコンプレックスのあり方も示していただきました」と述べています。
続いて、今後の課題や、スタジアム・アリーナの構想を検討する方に向けたアドバイスについて登壇者たちに伺いました。
若狭氏は、「スポーツチームが地域にとっての『宝』となるよう、市民と一緒にまちをつくっていく意識改革が必要です」とコメント。小宮氏は、地元の要望を細やかに吸い上げて環境を整備し、試合やイベントがない日の日常的な賑わい作りを行うことや、厳格な景観・屋外広告物条例への対応として市と連携し掲出物のあり方研究を実施していくこと等の必要性を説明しました。諏訪氏は、「公共交通の視点では試合終了後の一斉帰宅による交通混雑、まちの視点では試合終了後の周辺施設での消費行動が課題です。それらを解消するためには、帰る時間を分散化させながら、新たな消費を生んでもらう仕掛けが必要だと考えています」と述べました。森﨑氏は、「クラブ単体でできることには限界があります。クラブと企業、地域がそれぞれの強みを持ち寄り、一緒に何ができるかを考えながら、その取組を長く続けていくことで、価値あるものにしていくことが大切です」と語りました。
最後に、信江氏は「公共がかかわるスポーツコンプレックスは、周辺の施設や企業と『競合』するのではなく、その地域に不足している機能を創り出すことで、新しい人の流れを生み、まち全体の回遊や滞在を促す存在であるべきです。財務価値と社会価値、公共の責任と民間の創意を結びつけた先に、まち全体の価値を高めるスポーツコンプレックスの姿があるのではないでしょうか」と述べ、パネルディスカッションを締めくくりました。
まとめ
令和7年度に「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」に選定された三河安城交流拠点(アリーナ)とGLION ARENA KOBEは、それぞれ異なるアプローチながら、アリーナを核としたまちづくりを推進しています。周辺の施設と連携した取組も行っており、スポーツ庁が推進するスタジアム・アリーナ改革、さらにはスポーツコンプレックスの実現が期待されます。
今後も、スポーツ庁はスポーツコンプレックスの推進によるスポーツ振興と地域活性化への取組を応援していきます。
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●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁ー令和7年度「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定結果の公表について
スポーツ庁ースタジアム・アリーナ改革



