令和6年度『多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ』選定拠点表彰式を開催

スポーツ庁および経済産業省では、まちづくりや地域活性化の核となるスタジアム・アリーナの実現を目指す「スタジアム・アリーナ改革」に取り組んでおり、2025年までに20拠点を実現することとしています。2020年度より全国のモデルとなるスタジアム・アリーナを「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として選定し、翌年度に選定表彰式を行っています。2025年度は、8月28日に、長崎県の新たな交流と賑わいの拠点として誕生した大型複合施設「長崎スタジアムシティ」で表彰式が開催されました。
本年度は、「エディオンピースウイング広島」(広島市)および「富山市総合体育館」(富山市)の2拠点が表彰されました。
スタジアム・アリーナ改革から、さらにスポーツコンプレックスへ
これまでスタジアム・アリーナ改革として、民間活力を活用しつつ、スポーツの価値や潜在力を最大化させる舞台とするとともに、スポーツだけではない多目的利用を通じて、大規模集客が可能な地域のシンボルとして、地域の賑わいの創出や活性化につなげることを目指してきました。
そして、現在は、スタジアム・アリーナ改革をさらに発展させたスポーツコンプレックスを推進しています。
スポーツコンプレックスとは、単にスポーツ施設の集合体を意味するものではなく、以下のように多様な視点でのComplex(複合施設・複合体)としていくことが期待されます。
- ①複数種目・競技・施設の集約と連携強化
- 単一のスポーツ種目に閉じない異なるスポーツ種目・競技・施設の集約化と連携強化
- ②スポーツと異分野の複合化と包括的運営
- スポーツにとどまらない多目的利用
スポーツ分野と異分野(商業・飲食・宿泊・各種アミューズメントとの一体化等)との複合化による、より質の高いサービス提供の場へ
- ③まちづくり政策との連携を明確に意識した改革
- スポーツを通じてどのような地域社会をつくり上げるべきかをまちづくり政策に位置付けながら、まちづくりと連携し、地域の課題解決につなげる施設にとどまらず、周辺のインフラ整備等も実施
令和6年度に選定された2つのスタジアム・アリーナ
令和6年度には以下の2施設が「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として選定されました。
- エディオンピースウイング広島【広島県広島市】
- 富山市総合体育館【富山県富山市】
選定された施設についてご紹介します。
エディオンピースウイング広島
広島県広島市
(写真)受賞された広島市と株式会社サンフレッチェ広島の皆さま
エディオンピースウイング広島は、2024年に広島市中心部の中央公園にオープンした、日本でも珍しい「街なかスタジアム」です。平和記念公園や広島城、商業エリアに隣接し、単なるサッカー観戦の場にとどまらず、都心の賑わい創出や地域回遊性向上の拠点となっています。
スタジアムは約28,500席を有し、フィールドを360度回遊できるメインコンコースや、イベント広場、飲食・ショップエリアなど、多様な交流と体験を提供。屋根は「希望の翼」をモチーフにした開放的な設計で、全席をカバーし、天然芝や最新の照明・映像演出も特徴です。
プレゼンテーションでは「サンフレッチェ広島が実施したアンケート結果では、観戦者の約半数の方が広島市を除く県内外から来られています。試合の観戦前後に市内で宿泊や飲食を楽しまれるようで、商店街の方々からも、新たな賑わいと、人の流れができたと好評です」と語ります。
また、本事業は、デザイン・ビルド事業とPark-PFI事業を一体的に行った全国初の事業です。太陽光発電や雨水利用など環境にも配慮し、災害時の避難場所機能も備えています。
Jリーグ・サンフレッチェ広島の本拠地として高い集客を記録し、試合以外にもコンサートやイベント、マラソン、ウエディングなど多目的に活用。市民や来訪者の新たな交流・賑わいを生み出す拠点として、広島のまちづくりに貢献しています。
エディオンピースウイング広島公式サイト
エディオンピースウイング広島:EDION PEACE WING HIROSHIMA

富山市総合体育館
富山県富山市
(写真)受賞された富山市の皆さま
富山市総合体育館は、富山市の中心部・JR富山駅から徒歩圏の駅北エリアに位置する、富山グラウジーズのホームアリーナとして市民スポーツとプロスポーツの拠点となる中核的施設です。2000年国体に合わせて建設され、アリーナをはじめフィットネスルームや多様な練習場を備え、地域の健康増進や交流を支えてきました。現在リニューアル工事が進められており、2026年10月に「YKK AP ARENA(YKK APアリーナ)」として新たにオープンする予定です。
北陸新幹線開通などによる都市の変革を背景に、施設の老朽化や管理コストの課題に対応するため、全国でも先進的なPFI‐R+公共施設等運営権(コンセッション)方式による改修・運営を導入。民間のノウハウを活かした柔軟な運営や収益化を図りつつ、市民利用の公共性も確保しています。施設の長寿命化や魅力向上、収益事業の拡充、地域イベントとの連携を推進し、まちづくりに寄与する拠点として新たな価値創造を目指しています。
今後は、Bリーグ・富山グラウジーズのBプレミア参入を見据えた施設改修や、地域の賑わい創出、市民スポーツの質の向上に取り組み、民間と行政が連携しながら、持続可能な「する・みるスポーツ」の拠点として成長を続けていきます。
「本事業は官民連携事業として、連携協力していくことで街の賑わいを生み出し、波及させることで、地域経済や人的交流の活性化に貢献したいと考えます」とプレゼンテーションを締めました。
YKK AP ARENA(富山市総合体育館)公式サイト
YKK AP ARENA(富山市総合体育館) 2026年10月オープン!

長崎スタジアムシティで執り行われた表彰式の様子
本年度の表彰式は、2023年度に選定された長崎県「長崎スタジアムシティ」で執り行われました。長崎スタジアムシティは、ジャパネットグループが運営する、サッカースタジアム・アリーナ・ホテル・商業施設・オフィスからなる民設民営の大型複合施設で、2024年10月に開業し大きな話題となりました。
表彰式の冒頭、室伏前スポーツ庁長官、南経済産業省商務・サービス審議官より挨拶がありました。
(写真)挨拶を行う室伏前スポーツ庁長官、南経済産業省商務・サービス審議官
室伏前長官からは「スポーツ庁では、スタジアム・アリーナ改革をさらに発展させたスポーツコンプレックスを推進しています。スタジアムやアリーナを単体で整備するのではなく、他の施設やインフラ等を含めた総合的・複合的に捉えたまちづくりを図る考え方です。街の賑わいの核として多様な人々が交流を図り、地域や社会が直面する課題解決につながっていくことを期待しております。」との言葉がありました。
南審議官は「選定されましたエディオンピースウイング広島、富山市総合体育館の関係者の皆さま、おめでとうございます。両施設とも地元自治体が主導され、新たな試みや事業方式を取り入れた街中のスタジアムと聞いております。それぞれ街づくりの中心的役割を担い、地域のさらなる活性化や賑わいに寄与されることを大きく期待しております」と挨拶しました。
選定拠点の代表者に表彰状と記念トロフィーが授与され、それぞれの選定拠点の代表がスタジアム・アリーナについてプレゼンテーションを実施し、その後、参加者はパネルディスカッションに参加するグループと視察ツアーに参加するグループに分かれ、各々が希望したコンテンツに参加しました。
表彰式では初めての試み“パネルディスカッション”を開催
パネルディスカッションには、会場となった長崎スタジアムシティを運営する株式会社リージョナルクリエーション長崎 代表取締役社長 岩下 英樹氏をはじめ、有識者・実践者である上林 功氏(日本女子体育大学 教授/株式会社スポーツファシリティ研究所 代表取締役)、信江 雅美氏(響想舎 −kyososha−代表/元エディオンピースウイング広島 施設総責任者)、ファシリテーターとして後藤佑介氏(デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社)が登壇。単なるスポーツ施設としてだけでなく、スポーツコンプレックスとしての地域における新たな価値創出や、官民連携と収益構造、DX・キャッシュレス導入、街全体との融合、シビックプライドの醸成など、多様な可能性と課題が共有されました。また、地域のシンボルや日常空間としての役割も含め、スポーツコンプレックスの今後の在り方について幅広く議論されました。
(写真)パネルディスカッションの様子 左から:後藤佑介 氏、信江雅美 氏、岩下英樹 氏、上林功 氏
視察ツアーでは、長崎スタジアムシティ内のスタジアム、アリーナ等の選手ロッカーやピッチ、VIP専用ルームなど、普段は立ち入ることのできない特別なエリアを巡りました。施設を知り尽くした社員がガイド役を務め、スタジアムシティの魅力や裏側について、参加者の質問にも丁寧に答えながら案内しました。

(写真)視察ツアーの様子
最後には、参加者同士による活発な意見交換や新たなネットワークづくりの場として、ネットワーキングが行われました。今年度は、事業者や自治体、スポーツチーム、民間企業など多様な分野から多くの方が参加し、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者同士が交流を深める貴重な機会となりました。また、今年度の表彰団体やスポーツ庁のブースも設けられ、参加者は直接担当者と交流しながら、最新の情報や取り組みについて知ることができました。
まとめ
これからのスタジアム・アリーナは、スポーツの価値を高めるとともに、多様な人や企業を巻き込み、地域のまちづくりの核として活用されることが重要です。まずは、その地域にスタジアム・アリーナを整備する目的やありたい姿を明確にし、関係者が連携して運営することで、持続的な賑わいと地域活性化を実現し、その地域・社会にとってなくてはならないものになっていくことが期待されています。
スポーツ庁では、これからもスポーツの成長産業化およびスポーツによる地域活性化への取組を応援していきます。
●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁 - 令和6年度「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定結果の公表について(2025-10-01閲覧)
スポーツ庁 - スタジアム・アリーナ改革(2025-10-01閲覧)



