アスリートの人権を守り、より公正なアンチ・ドーピングシステムへーWADA世界会議での日本の貢献

フェアプレーとクリーンスポーツの理念を世界で共有するため、韓国・釜山で『第6回スポーツにおけるドーピングに関する世界会議(以下、世界会議)』が開催されました。6年に一度のこの会議では、アスリートの人権尊重の視点をさらに制度として組み込んだ新しい世界アンチ・ドーピング規程や釜山宣言が採択され、アンチ・ドーピング活動は国際協力と人権尊重を軸に新たなステージへ。日本政府からは、中村裕之文部科学副大臣(以下、中村副大臣)や前スポーツ庁長官の室伏文部科学省参与(以下、室伏参与)が出席。主要セッションで重要なメッセージを発信し、国際的なアンチ・ドーピング活動の未来像を示しました。
世界の国々とスポーツ界が公正性を議論し、共通ルールを形づくる場 ー WADA世界会議とは
世界会議は、スポーツの公正性を守るため、世界のアンチ・ドーピング政策をめぐる最も重要な国際的議論が行われる場です。各国政府と国際オリンピック委員会(以下、IOC)が協力して、アンチ・ドーピングに向けた取組を強化するため、1999年の第1回会議でローザンヌ宣言が採択され、これがWADA設立の契機となりました。以後、WADAが主催し、6年に1回開催されています。
会議には、各国政府、国際競技連盟、各国の国内アンチ・ドーピング機関(NADO)や国内オリンピック委員会・パラリンピック委員会、IOC・IPCなどの主要競技大会機関、アスリートなどが参加し、世界アンチ・ドーピング規程や国際基準の採択・改定を通じて、クリーンなスポーツの未来を形づくっています。
日本が示したリーダーシップ ー 釜山での発信と役割
今回の世界会議では、日本政府が重要な役割を果たしました。オープニングスピーチでは、WADAバンカ会長、ホスト国である韓国のチェ文化体育観光部長官やIOCコベントリー会長をはじめとする関係者が登壇する中、WADA理事会・執行委員会に参画する政府代表の調整会議「OneVoice」の2025年議長として、室伏参与が政府を代表して次のメッセージを発信しました。
- 世界会議はスポーツの未来を左右する重要な場であり、スポーツは人類共通の文化
- アンチ・ドーピングは教育と健全な社会の基盤であり、政府は共同責任を負う
- 2027年版世界規程はアスリートの権利保護を強化する重要な一歩であり、フェアプレーと人権尊重はスポーツの本質
- 限られた資源を最大限活用し、各国政府とステークホルダーが協力してクリーンスポーツを守ることの重要性
- ドーピングは自己の可能性を否定し、スポーツの価値を損なう行為。スポーツは未来世代への贈り物、共に守り抜こう
(写真)室伏参与のスピーチ風景
今回、室伏参与がオープニングスピーチを任された背景には、2025年を通じて日本が「OneVoice」議長国として政府代表の意見調整をリードしてきた実績があります。OneVoiceは、WADA理事会・執行委員会に参画する政府代表の調整会議であり、日本はこの枠組みで国際的な議論を主導し、政府間の合意形成を支えてきました。その集大成として、世界会議でのスピーチは、日本のコミットメントとリーダーシップを象徴する場となりました。
また、中村副大臣は、日本政府としての声明を発表。前回のカトヴィツェ会議から釜山会議にいたるまでの成果と今後の展望をテーマに次のメッセージを発信しました。
- 前回のカトヴィツェ会議以降、WADAガバナンス改革やアスリート評議会設置により透明性と説明責任が向上
- パンデミック下でもアンチ・ドーピング活動を維持し、公正な競技を守ったことを評価
- 遺伝子ドーピング、データプライバシー、コンタミネーション事案などの脅威に対応する必要性を指摘
- 先端科学、デジタルプラットフォーム、インテリジェンス能力への戦略的資源配分を提案
- アジア全域で能力構築を支援し、NADOや関係者の対応力強化に尽力する日本の決意を表明
- 最大の強みは連携。共にアスリートの権利を守り、クリーンスポーツを未来世代に普遍的な価値として残す
(写真)2027世界アンチ・ドーピング規程が採択された会議での中村副大臣
クリーンスポーツと人権尊重を共存させる仕組みへ ー 新たな世界規程でアンチ・ドーピング活動が進化
今回の世界会議での議論を踏まえ、スポーツの公正性とアスリートの権利を守るため、世界会議と同時開催されたWADA理事会・執行委員会において、次の重要な文書が採択されました。
①2027世界アンチ・ドーピング規程
②8つの分野における改訂版国際基準
③改訂版アンチ・ドーピングにおけるアスリートの権利宣言
新しい世界規程と国際基準は、従来の枠組みを大きく進化させ、アンチ・ドーピングとアスリートの人権尊重の両立が強化された仕組みへとレベルアップしました。以下に、その主なポイントをまとめます。
- 人権尊重を最優先。特に未成年やパラアスリートなどへの配慮を強化
- コーチやスタッフなどのアントラージュ、アンチ・ドーピング機関の責任を明確化
- 世界規程を「強く、公正に」運用できるよう、現実的な適用を可能にする仕組みに進化
- 世界規程は現状維持を目的とせず、今回で4度目の改訂。今後も現代社会の課題に対応
- 世界中のアスリートにとって公平な競技環境を守るために設計
釜山宣言が示す未来 ー クリーンなスポーツを次世代へ
『第6回スポーツにおけるドーピングに関する世界会議』で採択された「釜山宣言」は、クリーンでフェアなスポーツを次世代に引き継ぐための国際的な行動指針です。教育の強化、連携体制の拡充、デジタル技術の活用など、国際的なアンチ・ドーピング活動は新たな段階に入りました。
2027世界アンチ・ドーピング規程を世界共通ルールとして、WADA、各国政府、スポーツ界、アンチ・ドーピング機関、アスリートが連携することが不可欠です。スポーツ庁は、日本が世界会議で示したリーダーシップを国内施策に反映し、スポーツの価値を守るため国内外の関係機関やアスリートの皆さんとともに引き続きアンチ・ドーピング活動に尽力してまいります。
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スポーツ庁 - アンチ・ドーピングの国際会議へ、室伏長官が初の海外公務
スポーツ庁 - 大会を「ささえる」チカラ、東京2020大会でのアンチ・ドーピングの取り組み
●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁 - 世界ドーピング防止機構(WADA)について(2026-01-01閲覧)
WADA(世界アンチ・ドーピング機構)(2026-01-01閲覧)
公益財団法人 日本アンチドーピング機構(2026-01-01閲覧)



