スポーツを起点に広がる地域活性化の姿~ラグビーW杯でみる スポーツツーリズム~

日本に集まる外国人サポーター

2019年9月20日から開幕されたラグビーワールドカップ2019™️日本大会。

試合会場やファンゾーン、各代表チームのキャンプ地では多くの外国人が訪れ、試合はもちろん、さまざまな文化交流を楽しんでいる姿が見られるようです。このようにスポーツを起点として広がる地域活性化の姿は、来年行われる東京2020オリンピック・パラリンピック大会にも大きな影響を与えることでしょう。今回はラグビーワールドカップがもたらした「スポーツのチカラ」に注目してみました。

ラグビーワールドカップを目的に訪日した外国人は最大40万人

大躍進を遂げた日本選手団

ベスト8入りした日本代表チームの大躍進ぶりに、大いに盛り上がりを見せているラグビーワールドカップ2019。

公益財団法人ラグビーワールドカップ2019組織委員会がまとめた「ラグビーワールドカップ2019大会前経済効果分析レポート」では、大会を目的にした訪日外国人客は最大40万人、訪日外国人の旅費・宿泊費などによる経済効果は1,057億円といわれ、試合と試合の間隔が長いため、大会期間が長いラグビーワールドカップでは、来日している外国人サポーターも一緒に全国を移動して観光やレジャーなど日本滞在を楽しむ傾向にあります。

試合中継画面からもスタジアムで応援している外国人たちの姿が数多く見られ、また、試合開催地やキャンプ地では各国代表チームと地元住民との間で多くの交流が行われているようです。

ラグビーファンの交流で活気づく大分県の様子を動画でチェック!

訪日した諸外国の人々が日本でどのような行動をとったのか、試合開催地の一つ「大分」の様子を記録した動画をご覧ください。

海外から来たファンへのインタビューでは、「49日間の滞在予定だというオールブラックスファンの家族」、「開催期間中2カ月滞在して大分に向かう途中に広島と由布院を訪れたという若者グループ」、「試合観戦の後に東京、長野、京都に行く予定と語るカナダのファン」らの証言があり、実際に長期間滞在して、試合観戦以外にも日本で食や観光を楽しんでいる様子がうかがえ、「スポーツツーリズムの精神」が地域にも広く根付き始めたことを物語っているようです。

【スポーツ庁】ラグビーワールドカップ2019日本大会 開催地レポート ~大分~

スポーツ庁 Web広報マガジン - ラグビーワールドカップ2019日本大会 開催地レポート ~大分~
https://sports.go.jp/movie/2019.html

国内外のファンが交流する公式ファンゾーン

試合後にお互いの健闘を称え合うラグビーのように、「交流」においても互いを知り、認め合うことが大切です。今回のラグビーワールドカップでは日本代表チームの試合のみならず、他の代表チーム同士の試合にも注目が集まるなど、国や地域、チームを超えた交流が各所で行われていました。そうした交流の拠点の一つが公式ファンゾーン。

「ファンゾーン」とは大型ビジョンを使用した試合のライブ中継観戦スペースで、試合開催12都市の会場付近に18カ所開設。各ファンゾーンでは地域の特色を活かした演出やイベントが行われ、国内外から訪れるファン同士の交流が行われています。上記の動画でも試合当日の朝からファンゾーンで楽しむ人や、地元や日本文化を体験する人の姿も見られ、海外からのファンにとって日本を理解する貴重な場所になっているようです。鈴木スポーツ庁長官も「試合会場は統一してワールドカップ組織委員会が運営、公式ファンゾーンは開催自治体が運営していることで、この役割分担が上手くいっている要因だろう」と語っています。

キャンプ地では選手と市民による国際交流も

試合開催地だけではなく、試合が行われないキャンプ地でも他国の代表選手と誘致した地元市民との交流も盛んに行われています。上記の動画では、ニュージーランド、オーストラリア、ウェールズ、カナダの公認キャンプ地・別府市での様子が紹介されています。

別府市とニュージーランドは35年前から姉妹都市として交流が行われ、今回のニュージーランド代表チーム「オールブラックス」との地域交流イベントには3000人もの県民が集結。オールブラックスの選手が手ほどきするラグビークリニックでは地元の少年少女たちが選手たちと一緒になって汗を流すなど、楽しいひと時を過ごしたようです。

交流会のラストでは会場にいる全員でニュージーランド国歌を斉唱したことはテレビや新聞でも話題となりました。

こうしたキャンプ地は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、「ホストタウン」と呼ばれ、全国約440都市(2019年9月現在)ですでに世界各国を迎える準備が始まっています。

首相官邸 ホストタウンの推進について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/hosttown_suisin/

地域に根ざした交流の輪が広がる

ラグビーを通じて広がる交流の輪

若い世代にもラグビーワールドカップを機に競技の魅力と参加チームの文化を知ってもらおうという、各地でも動きがありました。例えば、福岡県内の中学校では生徒がラグビー競技の歴史や精神、観戦予定の対戦国などについて調べ学習の発表会を行ったり、東大阪ではスポーツ庁の委託事業として、サモア・トンガ・フィジー3カ国の中学生を日本へ招待し、市内の中学校を訪問してラグビー交流や初めて鉄道に乗ったり、日本の文化を体験しました。交流会では鈴木スポーツ庁長官は自身のソウル五輪の金メダルを生徒たちに見せて、夢の実現に向けて応援のエールを送りました。

試合会場のなかには2011年「東日本大震災」で被災した「釜石」、2016年「熊本地震」で被災した「熊本」と、被災から復興を遂げようとしている都市も含まれています。地元の皆さんの努力と苦労の末に開催地となった会場では、試合当日を迎えて感慨ひとしおだったに違いありません。

「釜石」ではワールドカップ期間中の10月13日、台風19号の影響でカナダ対ナミビアの試合が中止。市内では川が氾濫して道路や住宅が冠水被害に見舞われてしまいました。そうした釜石の状況を見かねたカナダ代表の選手たちが土砂を取り除くなどのボランティア活動を行い、ナミビア代表も滞在先の同県宮古市で台風被災者を元気づけたいと自らファン交流会を開催。両チームに多くの賛辞が贈られました。このようなスポーツの垣根を超えた交流が各地に広がりをみせています。

まとめ

これまでスポーツは「する」「みる」ものとして捉えられてきましたが、これからは地域や人々がスポーツを「ささえる」ことが重要な時代になったのかもしれません。

ラグビーワールドカップ2019を通じて、スポーツを支えることが「地域活性化」「経済効果」「国際交流」「スポーツ振興」につながり、新たな価値観が見えてきたのではないでしょうか。

いよいよ来年2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。ホストタウンでは、すでに世界各国を迎える準備が始まっています。206の国や地域が参加を予定しており、オリンピックで33競技、パラリンピックで22競技の選手やその関係者、応援の方が来ます。ラグビーワールドカップの開催地やキャンプ地で起きた盛り上がりが日本各地でみられることでしょう。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 Web広報マガジン - ラグビーワールドカップ2019日本大会 開催地レポート ~大分~(2019-10-30閲覧)
スポーツ庁 Web広報マガジン - 「40万」人もの外国人が日本へ!ラグビーワールドカップ2019™ でホスト国に期待される効果とは?(2019-10-30閲覧)
スポーツ庁 Web広報マガジン - ラグビーワールドカップ2019™️で日本とアジア圏に広がるラグビー熱!(2019-10-30閲覧)
【公式】ラグビーワールドカップ2019日本大会(2019-10-30閲覧)
【公式】ラグビーワールドカップ2019™日本大会「公認チームキャンプ地」内定のお知らせ(2019-10-30閲覧)
首相官邸 - 東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部 ホストタウンの推進について(2019-10-30閲覧)
毎日新聞 - ラグビーW杯 台風19号で試合中止のカナダ代表、釜石で土砂除去などボランティア(2019-10-30閲覧)

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