訪日外国人が注目! 日本でしか体験できない「武道ツーリズム」の現場をレポート

武道ツーリズム

スポーツ体験と観光をかけ合わせた旅行「スポーツツーリズム」を通して地域・経済の活性化を推進するスポーツ庁。平成30年3月には「スポーツツーリズム需要拡大戦略」を策定し、新規重点テーマとして「アウトドアスポーツツーリズム」と「武道ツーリズム」を掲げました。「アウトドアスポーツツーリズム」による地域活性化やインバウンド誘客については、以下の記事で徳島県三好市の取組をご紹介しています。

人口3万人に満たない地域が「アウトドアスポーツ」の聖地に! 自然資源を活かした徳島県三好市のスポーツツーリズム

今回は、もう一つの重点テーマである「武道ツーリズム」による地域活性化・インバウンド誘客の取組をご紹介しましょう。

世界が熱い視線を注ぐ日本の「武道ツーリズム」

日本の伝統的な武道である柔道や空手、相撲などは、諸外国の人々にとってどのように映っているのでしょうか。以前スポーツ庁が実施した調査では、非常に興味深い結果が出ています。

「みる」スポーツとして人気の武道

「スポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査報告書」の中で計7ヶ国の人々に聞いた「日本で経験してみたい “みる” スポーツツーリズム」の結果によると、大相撲は、中国、香港、タイ、オーストラリアでそれぞれ30%を超える人々から人気を集めました。また、柔道や空手、剣道や合気道などの武道は中国で非常に高い人気を誇っており(50.7%)、香港やアメリカ、タイにおいても30%を超える人々の関心を惹きつけています。

また、空手や柔道、剣道などの武道は「みる」スポーツとしてだけでなく、「する」スポーツとしても海外に多くの愛好家がいます。たとえば、2020年東京オリンピックで正式種目化された空手は、日本国内の愛好者が200万人であるのに対し、世界全体の愛好者は1億3,000万人に上るという統計もあります。

訪日外国人を呼び込む全国の武道ツーリズムを動画でチェック!

【スポーツ庁】訪日外国人が注目! 日本でしか体験できない「武道ツーリズム」の現場をレポート

空手発祥の地である沖縄は、空手を通した武道ツーリズムによって訪日観光客の呼び込みに成功しています。沖縄県は、2016年4月に沖縄県文化観光スポーツ部内に「空手振興課」を新設し、2017年3月には「沖縄空手会館」をオープン。空手の振興を専門的に扱うセクションを設け、拠点施設をつくることで沖縄空手の発信力を強化しました。

空手振興課の山川哲男さんは、世界の人々を惹きつける「空手の魅力」について以下のように話してくれました。

「空手の稽古体系のなかには、礼儀作法、仁・義・忠・孝・礼が入ってきます。それらを自らのなかに染み込ませていくことで、自分自身の人間性の高まりを感じることができます。それが、世界の人々を魅了しているのではないかと思います」

そんな訪日外国人をサポートする沖縄空手案内センター広報担当のミゲール・ダルーズさんは、「空手の指導料はどうやって払うの?クレジットカードは使えるの?といった細かなことから伝えて、外国人の旅がスムーズにいくようなお手伝いをしています」と話します。

空手の魅力を伝えると同時に、外国人の受け入れ体制を整えることが、空手を「みること」「知ること」「体験すること」を目的とした訪日観光客の獲得につながっていると言えそうです。

外国人観光客も多い「空手の日 記念演武祭」

空手の日 記念演武祭

沖縄県は、10月25日を「空手の日」としています。この日を記念するとともに「空手発祥の地・沖縄」を国内外に発信することを目的に開催されているのが「空手の日 記念演武祭」(主催:沖縄県・沖縄県議会・沖縄伝統空手道振興会)です。2018年度は、10月28日に那覇市の国際通りで演武祭が開催。演武者数は2,400人に上り、約2万人の見物客が詰めかけました。外国人観光客も多く、「黒帯をもらうのが夢」「空手は本当に素晴らしい」「私もやってみたい」といった声が聞かれました。

沖縄観光は、観光客の滞在日数の短さが課題の一つとされていますが、空手を目的に沖縄に来る人は、一般の外国人観光客に比べて滞在日数が10日(9泊)~長い人で3ヶ月間と長いのも特徴です。だからこそ、「空手を目的とした人々を沖縄に惹きつけることによって、観光産業への効果はさらに大きくなる」と、山川さんは言います。

剣道体験ができる武道ツーリズムも熱い!

空手や柔道と同じく、剣道も日本の伝統的武道の一つです。剣道を通してサムライ(SAMURAI)の精神性に魅了される外国人は少なくないでしょう。

この剣道にフォーカスし、外国人観光客向け剣道体験ツアーを提供しているのがSAMURAI TRIP(サムライトリップ)です。メインのプログラムでは、経験豊富な講師が礼法から打ち方まで指導してくれるほか、試合形式のミニゲームも体験できます。また、英語でのレクチャーを実施しており、体験者との距離が近いことも人気の理由となっています。さらに、剣道で使う防具を手作業でつくる職人技を目の当たりにできる「剣道防具製作所見学」や、オリジナルの和食メニューを楽しめる「剣道居酒屋でのサムライ飯」など、日本人も参加したくなるような魅力的なコンテンツが用意されています。

参加者からは、「楽しくて刺激的な体験」「日本旅行のハイライト」「この武道についてもっと学びたい」といった感想が聞かれ、剣道や武士の作法・慣習に関心を持つ訪日外国人から非常に高い評価を受けているのです。

まとめ

私たち日本人にとって、セリエAやプレミアリーグなどのサッカー観戦を目玉にするヨーロッパツアーは、当たり前のものになりました。タイに行ったら、観光やグルメを楽しむだけでなく、ムエタイを体験する日本人も多くいます。

同じように、武道を「本場の日本で味わいたい」と考える外国人は少なくないのです。世界中にいる武道愛好家や、武道に高い関心を持つ人たちの多くは、ここでしか体験できない武道ツーリズムを求めています。日本に行かないと味わえない体験・イベントを用意し、外国人の受け入れ体制を整えていけば、さらなる地域活性化・インバウンド誘客を実現できるでしょう。

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