人口3万人に満たない地域が「アウトドアスポーツ」の聖地に! ~自然資源を活かした徳島県三好市のスポーツツーリズム~

アウトドアツーリズム

スポーツツーリズムとは、「スポーツ体験と観光をかけ合わせた旅行」のことで、スポーツへの参加や観戦を目的とした旅行や、地域資源とスポーツを融合した観光を楽しむツーリズムを指します。スポーツ庁は、このスポーツツーリズムを通して訪日外国人の増加や地域・経済の活性化を推進しています。

「スポーツツーリズム需要拡大戦略(平成30年3月スポーツ庁策定)」において、重点テーマに位置付けられたのが「アウトドアスポーツツーリズム」と「武道ツーリズム」です。そして現在、アウトドアツーリズムによって大きな賑わいを見せているのが徳島県の三好市です。

近年、ラフティングやウェイクボードの世界選手権開催地に選ばれているだけでなく、キャニオニング、カヤック、SUPなどのウォータースポーツを満喫できるスポットとしても注目を浴びています。今回は、三好市で行われた「WWAウェイクボード世界選手権大会2018」と、スポーツツーリズムによってさらなる地域活性化を目指す三好市の取組を取材しました。

自然資源を活かした徳島県三好市の「スポーツツーリズム」の模様を動画でチェック!

【スポーツ庁】人口3万人に満たない地域が「アウトドアスポーツ」の聖地に! ~自然資源を活かした徳島県三好市のスポーツツーリズム~

人口3万に満たない市が世界大会の誘致に成功した理由

徳島県三好市では、2017年に国内初の「ラフティング世界選手権」、2018年にアジア初の「ウェイクボード世界選手権」が開催されました。なぜ、人口3万人に満たない市が2年連続で世界大会の誘致に成功しているのでしょうか? 多くの関係者の尽力があったのはもちろんですが、三好市を流れる吉野川が世界レベルの環境を有していることも大きな要因になっています。

三好市と吉野川の魅力とは?

薄田克彦(すすきた かつひこ)さんは、ウェイクボード世界選手権2018を三好市に招致した仕掛け人。アジアウェイクボード協会会長・世界ウェイクボード協会副会長を務め、ウォータースポーツの普及を通して地方を元気にさせる活動を行っています。

薄田さんは、「同じ市のなかに2つの異なる水面があるのは三好市の大きなポイント」だといいます。三好市を流れる吉野川は、上流では急流を欲するラフティング、下流では静水面を欲するウェイクボードなどのウォータースポーツに最適な環境が整っています。

世界中の水辺でウェイクボードの大会を数多く経験してきた薄田さんから見ても、下流の池田湖周辺はウェイクボーダーにとって「ワールドクラスの環境」とのこと。「山に囲まれていて風の影響を受けにくく、ダム湖で航路になってないので波も静か。ここみたいに、一日中ずっと鏡のような静かな水面を確保できる場所は世界を見わたしてもほとんどありません」と、吉野川の魅力を説明してくれました。

現在薄田さんは三好市へ移住していますが出身は京都です。

「僕は外から来ているから吉野川をすばらしいと思うけれど、現地の人から見ると生まれたときからある川だからか、特別な魅力を感じているわけではなく、泳いだり水遊びしたりする人もほとんどいません。でも、ちょっと視点を変えて自分の町を見てみたり、外の人から感想を聞いてみたりするだけで、地域の魅力や観光資源に気づくことができると思います」

「外からの目」で、観光資源は磨かれる

薄田さんと同じような話をしてくれたのが、植田佳宏(うえた よしひろ)さんです。植田さんは三好市の旅館・ホテルでつくる「大歩危・祖谷いってみる会」の会長を務め、約10年前から大歩危祖谷温泉郷、三好市のインバウンド誘客活動に力を注いでいます。同会は、オーストラリアや香港、欧米から多くの旅行者を招き入れることに成功しており、「ジャパン・ツーリズム・アワード2017」では、地域を挙げて外国人を積極的に受け入れる姿勢が評価され、優秀賞を受賞しています。

植田さんも薄田さんと同じく、三好市の出身ではありません。

「(観光資源を開発するにあたって)外から見た『客観性の目』は大事です。たとえば、吉野川のように地元の人からしたら毎日見ている当たり前のものでも、外から来た人からしたら “この川はすばらしい” ということになり、実際に今、ラフティングのメッカになっています。地元の人の目線と外からの人の目線を足し算すると、地域の資源が磨かれていくと思います」

外国の方からこの町の魅力を教えてもらった

WWAウェイクボード世界選手権大会2018でボランティアをしていた地元の男性は、世界大会で外国人が多く訪れるようになった、わが町三好市について感想を話してくれました。

「いろんな国の人と直接交流できるのは、この田舎町からしたらすごく大切なことだと思います」

「(吉野川は)子供の頃からある身近な川だけど、いろんな国の人から、“この川ってすごくいいんだよ” ってことを教えてもらってはじめて、“あっ、そうなんじゃ” って」

「本当は僕らが発信する側なんだけど、逆に外国の人からこの町の魅力を教えてもらって、自分にとっても、この町の見方が変わったかなと感じています」

日本のスポーツツーリズムの目玉は「アウトドアスポーツ」

高低差が激しく急流が多い南北に長い日本には、各地でアウトドアスポーツを楽しめる絶好の環境があり、四季の魅力に恵まれているため、多くの外国人が日本の自然環境やそこで体験できるアウトドアスポーツに注目しています。

「スポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査報告書」(スポーツ庁)の、日本で経験してみたい「する」スポーツツーリズムでは、以下のような興味深いデータが出ています。

  • 登山・ハイキング・トレッキング
    中国(37.0%)・台湾(37.3%)・香港(43.7%)で高い関心
  • カヌー、ラフティング、キャニオニングなどのリバースポーツ
    中国(24.7%)・アメリカ(22.7%)で高い関心
  • サーフィン、SUP、シーカヤックなどのマリンスポーツ
    中国(31.3%)・韓国(23.7%)で高い関心

「大歩危・祖谷いってみる会」の植田さんは、もともとラフティングが盛んなオーストラリアには吉野川の環境を、狭いエリアにビルがひしめく大都会・香港には三好の大自然をアピールして、それが当たったといいます。スポーツツーリズムを通じてインバウンドを成功させるためには、どの国の人にどんな観光資源・スポーツ資源をアピールしていくのかも重要なポイントになるでしょう。

まとめ

今回、取材した三好市は、「ウォータースポーツのまち」として豊かな水資源のブランディングを行い、インバウンド誘客に成功していました。日本は海、山、川、湖という大自然に囲まれた、いわば「アウトドアスポーツの宝庫」。三好市に限らず、大きな可能性を秘めた資源は日本中にたくさん埋もれているはずです。スポーツと融合した新しい観光資源を生み出すことができれば、スポーツツーリズムを通したインバウンド強化、そして地域活性化の道が拓けていくでしょう。

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