訪日外国人の「9」割が期待!日本のスポーツツーリズムの可能性

スポーツツーリズム

ここ数年、増え続けている訪日外国人。東京・大阪といった大都市だけでなく、日本全国の観光地にも数多くの外国人が押し寄せるようになり、飲食店や百貨店、家電量販店、宿泊施設などはインバウンド対策に余念がありません。2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控え、インバウンド対策のキーワードとして今注目されているのが「スポーツツーリズム」です。

2,869万人もの外国人は、何を目的に訪日するのか?

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平成29年の訪日外国人旅行者数は、2,869万人に達して前年比で19.3%の増加。5年連続で過去最高を更新しています。政府が2020年の目標とする4,000万人に着実に近づいていると言えるでしょう。

では、彼らはなぜ日本を旅行先に選んでいるのでしょうか? 観光庁「訪日外国人の消費動向」の調査で訪日外国人に「訪日前に期待していたこと」を尋ねたところ、「日本食を食べること」が最多で、次いで「ショッピング」「自然・景勝地観光」「繁華街の街歩き」と続いています。

2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこと、メイド・イン・ジャパンの家電や化粧品に対する根強い人気などさまざまな背景が考えられますが、今、日本に注目が集まる理由の一つに、今後控えるメガスポーツイベントがあるのは間違いないでしょう。

2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームズ2021と、毎年、日本開催のビッグイベントが予定されています。国際的なスポーツイベントを控え、政府がスポーツを通じた地域・経済の活性化に力を入れていることは、訪日外国人増加の要因の一つと言えるでしょう。

新しい旅行のスタイル「スポーツツーリズム」

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「スポーツツーリズム」とは、スポーツの参加や観戦を目的とした旅行や、地域資源とスポーツを融合した観光を楽しむツーリズムスタイル。スポーツ庁がレジャー情報サイト内に開設した「ENJOY! SPORTS TOURISM」では、「その地域ならではのスポーツを楽しむ新しい旅行の形」と表現しています。

スポーツをする、大会に参加する、参加者を応援する、プロスポーツを観戦する、イベントのボランティアをするなど、スポーツにはさまざまな関わり方がありますが、こうした体験と観光をかけ合わせた旅行はスポーツツーリズムと言えるでしょう。

訪日外国人の満足度が高い“その他スポーツ”とは?

訪日外国人のスポーツ満足度調査 グラフ

引用:観光庁「平成29年10‐12月期 報告書 訪日外国人の消費動向」

上述した観光庁の調査では、訪日外国人が日本に滞在中にしたことの満足度も調査しています。「満足した」と回答した人が多かったものに「日本の日常生活体験」や「日本食」「温泉入浴」などがありますが、それらに引けを取らず「スポーツ観戦」や「自然散策」などのスポーツに関わる評価も高いことが分かります。

ここで気になるのが、その他スポーツの「その他」とは何か? ということです。一つ上の選択肢に「スキー・スノーボード」があるので、それ以外のスポーツだということは分かりますが……。その答えは、スポーツ庁が行ったマーケティング調査の中に見つけられるかもしれません。

スポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査

スポーツ庁が行ったスポーツツーリズムに関するマーケティング調査から、興味深いデータをピックアップしてご紹介します。なお、この調査は国外のスポーツツーリズムにおける動向やニーズを把握するために行われた調査で、中国、韓国、台湾、香港、アメリカ、タイ、オーストラリアの7ヵ国・地域を対象とし、直近3年以内に訪日経験がある方をモニターとしています。

日本で経験してみたい、「する」スポーツツーリズム

スポーツツーリズム グラフ

引用:スポーツ庁「スポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査報告書」

「日本で実施すると楽しそう・おもしろそうだと思うスポーツ・運動の内容をお答えください」という設問に対しては、「スノースポーツ(スキー・スノーボード等)・スノーアクティビティ」「登山・ハイキング・トレッキング」「ウォーキング」が人気でした。

●スノースポーツ(スキー・スノーボード等)・スノーアクティビティ
台湾で47.7%、タイで42.3%と高い数値に。台湾もタイも自国では降雪がなく、四季のある日本だからできるスポーツという点が大きいでしょう。上質なパウダースノーを求めて訪日するスキーヤー・スノーボーダーは少なくありません。

●登山・ハイキング・トレッキング
香港で43.7%、台湾で37.3%と高い数値に。日本には傾斜が急な山岳地帯が多いことや、四季折々の風景を楽しめることなどが理由として考えられます。

●ウォーキング(散歩を含む)
オーストラリアで41.0%、アメリカで37.0%と高い数値に。年齢や体力に関係なく、旅行中の空いた時間などにも気軽にできるスポーツであり、名所旧跡巡りや美しい自然風景の中で楽しめることも魅力と考えられます。

その他、ランニング・ジョギング、サイクリング、またカヌーやラフティングなどのリバースポーツ、サーフィンやシーカヤックなどのマリンスポーツ、スキューバダイビングなども、国によっては多く選択されています。都市部にはない、地域の自然環境を活かしたアウトドアスポーツが非常に関心を持たれています。

日本で経験してみたい、「みる」スポーツツーリズム

スポーツツーリズム グラフ

引用:スポーツ庁「スポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査報告書」

「日本で観戦・応援すると、楽しそう・おもしろそうだと思うスポーツ・運動の内容をお答えください」という設問に対しては、日本ならではのスポーツである「大相撲」「武道(柔道、空手、剣道、合気道など)」の人気が高いことが分かります。

●大相撲
中国で42.0%、タイで33.3%と高い数値に。日本の国技であり、日本でしか見られないスポーツという点が大きな理由でしょう。

●武道(柔道、空手、剣道、合気道など)
中国で50.7%、アメリカとタイで37.3%と高い数値に。大相撲と同様に、日本の伝統的なスポーツは海外の人に「見てみたい」と思わせる魅力があるようです。

●スノースポーツ(スキー・スノーボード等)
タイで33.7%、中国で30.3%と高い数値に。「する」スポーツで人気の高かったスノースポーツが、「みる」スポーツとしても多くの人に選ばれています。

日本のスポーツツーリズムの目玉は「アウトドアスポーツ」

スポーツ庁では、訪日外国人の増加や、スポーツによる地域・経済の活性化を目指してスポーツツーリズムを推進しています。なかでも、特にプッシュしているのがアウトドアスポーツ。なぜなら、日本全国各地にアウトドアスポーツを楽しむために絶好の自然資源があり四季の魅力に恵まれているからです。

実際に、多くの訪日外国人が日本の自然環境やそこで体験できるアウトドアスポーツに注目していることは、マーケティング調査からもうかがえます。

まとめ

スポーツのメガイベントが控える今、日本は世界中から注目を集めています。高低差が激しく南北に長い日本では、各地でバラエティ豊かなアウトドアスポーツが楽しめます。また、プロ野球やJリーグなどの観戦向きのスポーツに加えて、大相撲や空手などの日本特有の武道もあり、「みる」スポーツとしても魅力的なコンテンツがたくさんあります。

まさに日本全体が「世界に誇るスポーツフィールド」なのです。その地域に住んでいるとその価値になかなか気づけませんが、私たち日本人がその地域の自然や文化の価値を再確認することで、スポーツと融合した新しい観光資源を生み出すことができるでしょう。

今回、新たに開示された諸外国ごとに異なるスポーツツーリズムに特化したマーケティングデータを、スポーツを通じた地域の魅力の発信に活用していただきたいと思います。

●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています
スポーツツーリズムに関する海外マーケティング調査報告書
ENJOY! SPORTS TOURISM(2018-03-01閲覧)

●その他、以下の資料を参照しています
観光庁ー訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析(平成29年10-12月期 報告書)(PDF)(2018-03-01閲覧)
観光庁ー訪日外国人消費動向調査 平成29年年間値(速報)及び平成29年10-12月期の調査結果(速報)(PDF)(2018-03-01閲覧)

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