『30』年後には運動部活動の生徒は半減する?!

『30』年後には運動部活動の生徒は半減する?!

年々、少子化が進むなか、運動部活動数、運動部員数は減少傾向にあります。スポーツ庁が委託した調査「中体連・高体連・高野連に加盟する生徒数等試算」(2019年3月)では、人口推計結果から今後30年間(2048年度まで)の部活動人口を推計すると、ピーク時の2009年から2048年には約30%が減少。チームスポーツでは半減以上となる競技も存在すると報告されています。

日本のスポーツ振興を支えてきた「運動部活動」の減少状況と、今後の課題について考えてみたいと思います。

2009年度から13〜15歳の運動部活動が約36.7%減少

中体連の13〜15歳の運動部加盟人数は、2009年度の約233万人から、2018年度の約200万人と約13.1%減少している。

さらに一定の減少率と人口動態推計を勘案すると、2048年度には約148万人へ。2009年から約36.7%が減少すると推計しています。2018年度から推計しても約27%の加入人数が減ることとなります。

【追記(2024年5月)】

以下に掲載している各種データの「最新値」は、次のリンク先にてご参照ください。

https://www.mext.go.jp/sports/content/20240502-spt_oripara01-000013015_02.pdf

中体連|加盟人数の推移予測出所)実績値は日本中学校体育連盟加盟校数調査。推計値は日本中学校体育連盟加盟校数調査並びに国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)結果」を基に野村総合研究所が作成<スポーツ庁委託事業>

球技などチームスポーツは半減のピンチか

また中体連加盟人数を競技別で推計したのが下記グラフです。2018年度における中体連加盟人数上位10競技(男子)を表示したもので、「卓球」「バドミントン」など増加が予想される競技があるものの多くの競技で加盟人数は減少。「野球」「サッカー」「バレーボール」などチームスポーツにいたっては半減近くと推計されています。

中体連|男子 競技別加盟人数 推計出所)実績値は日本中学校体育連盟加盟校数調査。推計値は日本中学校体育連盟加盟校数調査並びに国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)結果」を基に野村総合研究所が作成<スポーツ庁委託事業>

中体連|女子 競技別加盟人数 推計出所)実績値は日本中学校体育連盟加盟校数調査。推計値は日本中学校体育連盟加盟校数調査並びに国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)結果」を基に野村総合研究所が作成<スポーツ庁委託事業>

スポーツをやりたくても部活がない時代が

教室でバスケットボールを抱える女子生徒

上記データが示すように少子化によって運動部活動の存続は年々厳しくなっています。また部活動の数が減ることで「やりたいスポーツができない」「好きな競技を続けられない」といったスポーツに取り組みたい子どもたちの「多様な選択肢としての受け皿」が必要となってきます。

部活動衰退によってもたらされる問題は少なくありません。
中学や高校など発達段階の学校教育においては、体育の授業や運動部活動等を通じて、体を動かすことの楽しさを理解し、生涯に渡っての運動習慣を確立していくことや、スポーツを通じて集団での協調性や目標達成への努力の経験といった貴重な機会でもあります。

生徒がスポーツに親しめる基盤として運動部活動を持続可能とするためには抜本的な改革に取り組む必要があることから、スポーツ庁では運動部活動の在り方を考える有識者会議を設置し、2018年3月には、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定しました。

本ガイドラインでは、部活動指導員を積極的に任用・配置することや、競技経験のない教員へのサポートとして競技団体が指導マニュアルを作成することなどを推進しています。その競技の普及には競技団体の積極的な努力も必要となります。

スポーツ庁 - 運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/013_index/toushin/1402678.htm

運動部活動用指導手引(陸上・サッカー・バスケ・柔道・剣道・ソフトテニス・バレーボール)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop04/list/detail/1408193.htm

これからは地域や地元コミュニティが子どものスポーツを支える時代に

選手を指導するコーチ

部活動については、ガイドラインに示されているように地域との連携など、各地で部活動改革の試みが行われています。

例えば、平成30年に鈴木大地スポーツ庁長官が視察した愛知県半田市の総合型地域スポーツクラブ「ソシオ成岩(ならわ)スポーツクラブ」では、学校で部活動に所属しながら週末にクラブに通う子も多く、学区外から足を運ぶ子も。中学の部活動にない種目に取組む子もいれば、元トップアスリートから指導を受けられるため、そこに魅力を感じて通う子もいます。

総合型クラブではなく、自治体が地域の運動部活動として運営するケースもあります。江東区立女子サッカー部(東京都)は、 江東区が主催する区内11校の生徒が集まった「合同部活動」。区立中学校に在籍していれば、誰でも入部できる拠点校方式を採用しています。

学校が担ってきた部活動の実施主体をクラブが担い、地域・学校・行政が連携し、多世代にわたる住民スポーツサービスの充実を図る地域のクラブチームやスポーツ施設が、これからは「総合型地域クラブとして機能していくと期待されています。特に球技などの団体競技は、総合型地域スポーツクラブとの連携が今後の鍵となってくる可能性があります。

スポーツ庁 -「部活=学校」である必要はない!?地域が主体となって子供たちのニーズに応える 「総合型地域スポーツクラブ」視察レポート
https://sports.go.jp/tag/school/local-sport-club.html

まとめ

本格的な少子化時代を迎え、30年後の部活動はこれまでの「学校」という枠組みだけでは対応できない問題に直面することが予想されます。子どもたちがスポーツを続けられる環境を保ち続けていくには、各教育委員会が学校等において、それぞれの運動部活動の在り方に関して、引き続き考えていく必要があるでしょう。

【追記(2024年5月)】

本記事内で掲載している各種データの「最新値」は、次のリンク先にてご参照ください。

https://www.mext.go.jp/sports/content/20240502-spt_oripara01-000013015_02.pdf

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(2020-03-01閲覧)

スポーツ庁 -「部活=学校」である必要はない!?地域が主体となって子供たちのニーズに応える 「総合型地域スポーツクラブ」視察レポート(2020-03-01閲覧)

:前へ

生徒の多様なニーズに応えるスポーツ・レクリエーション活動部

次へ:

「ささえる人」~スポーツの力で世界を繋ぐ~