地域の公園を使いこなそう!子供が安心して運動できる場所づくりに向けて

地域の公園を使いこなそう!子供が安心して運動できる場所づくりに向けて

近年、少子化や住環境の変化などによって子供たちが外遊びをする機会が少なくなっています。少子化で遊ぶ「仲間」が減り、塾や習い事などによって遊ぶ「時間」が減り、さらには都市化に伴う空き地の減少で手軽に遊べる「空間」も減りました。公共のスポーツ施設は整備されてきたものの、子供たちが自由に遊べ、気軽にスポーツができるような身近な「空間」は減少傾向にあります。この「三間」の減少が子供の体力低下の大きな原因とされています。現代の子供たちが、安全かつ楽しく身体を動かす機会を確保するために、今後どのような取組が求められるのでしょうか。

公園を子供たちの遊び場とするためさまざまな工夫を凝らしている「千代田区の事例」をスポーツ庁の鈴木大地長官が視察しました。今回は、その様子を交えて、現代の公園における遊び場事情をレポートします。

子供の体力低下から見える課題

スポーツ庁「平成 30 年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」によると、子供の体力は水準の高かった昭和60年頃と比較して依然として低い数値で、特にボール投げの記録については平成22年度以降においても低下傾向にあります。昔に比べて現代の公園ではボール投げなどの禁止事項や規制が増えていると感じる保護者が多いという調査結果から、それも原因の一つではないかと考えられています。

子供たちの体力向上のみならず、将来的なスポーツ実施率向上のためには幼少期から運動に親しむことが大切。安全を確保しながらも、仲間・空間・時間の「三間」の減少に歯止めをかけ、子供たちが外でのびのびと遊べるようにすることが求められています。

公園を有効活用している地域の紹介

公園を有効活用している地域の紹介

地域の公園や遊休地に着目し、子供たちの自由な遊び場(空間)として機能させるため、さまざまな工夫を凝らしている自治体があります。鈴木長官が東京都千代田区の取組を視察しました。

千代田区は“ボール遊び”を共存

長官が視察したのは、秋葉原駅から歩いて5分ほどのところにある「和泉公園」です。この公園は、およそ6年前から区の委託事業として毎週木曜日の15~17時、土曜日の14~16時の時間帯に限り、ボール遊びが可能に。その時間は子供たちの遊びを見守る「プレーリーダー」が配置されるためです。

プレーリーダーを務めるのは、区内の大学に通う学生ボランティアです。6大学・7団体が登録しており、研修制度も設けています。決まった時間に公園に来れば、小学生以下の子供なら誰でもプレーリーダーと一緒に遊ぶことができるシステムです。

この取組には、子供が一人で来てもプレーリーダーのお兄さん・お姉さんたちに遊んでもらえる、学校以外の友達ができるといったメリットがあります。校庭は基本的に通学している子しか使えませんが、公園であれば誰でも自由に使えるので友達の輪が広がりやすいのが特徴で、「仲間」の減少を食い止めることにつながると言えそうです。

また、さまざまな遊び道具をそろえてあり、野球やサッカーだけでなくフリスビーなど、実に多くの遊びが可能。ボールやバットなどの道具は、軟らかい素材を使っているため、安全にも配慮されています。プレーリーダーは子供たちの要望を聞いてどのような遊びがしたいかを考えるなど、みんなが長く楽しめる工夫を取入れているのです。

鈴木長官は子供たちと一緒に野球を体験

この日、鈴木長官は子供たちと一緒に野球を体験しました。甲子園の始球式以来となる“ピッチャーマウンド”に立った長官は、「純粋にとても楽しかったです。いつの間にかボール投げ禁止の公園が増えましたが、やり方次第で安全に遊べると感じました。まずは、我々がこうした事例を広く発信していけたらなと思います」と話しました。

プレーリーダーを務める大学院生は、「専門は建築なので子供や教育とは特に関係ないのですが、ボランティアサークルに所属したことがきっかけでこの活動に参加しています。子供たちが楽しそうに遊んでいるとこちらもうれしいし、ここに来ると普段運動不足である自分も運動できるので一石二鳥ですね」と笑顔で答えてくれました。

秘策は専用ボール?アプリ?その他の取組

公園でボール遊びをしやすくする取組は他の地域でも行われており、時間帯を区切って公園でのキャッチボールを可能にする、禁止看板表記を変更するなどのルール作りに向けた動きが始まっています。

東京都武蔵野市「公園・緑地リニューアル計画」

また、東京都武蔵野市では「公園・緑地リニューアル計画」においてボール遊びに特化した公園を市内の3駅圏に一つずつ整備することを定め、子供たちが思う存分にボール遊びができるようネットに囲われた空間を整備しました。

安全なキャッチボール専用球“ゆうボール”

日本プロ野球選手会では、ボールメーカー(内外ゴム株式会社)と安全なキャッチボール専用球“ゆうボール”を開発。平成27年には、首都圏5球団による共同事業として、公園キャッチボールプロジェクトを開始し、各チームによるイベントを行っています。

公園情報アプリ(PARKFUL)

埼玉県では、埼玉西武ライオンズがボールの使用が認められている県内約200公園の情報を、公園情報アプリ(PARKFUL)で発信するなど、キャッチボールができる身近な公園をいつでも気軽に見つけられる環境を整えました。

このように、各地でさまざまな公園を使いこなす取組を進めています。ハード・ソフト両面からの環境作りを推し進めることによって、子供たちが外に出て遊ぶ機会を取り戻すことができるのです。

まとめ

便利になった世の中において減少している「空間」ですが、昔の子供たちが当たり前にそうしていたように、現在でも工夫ひとつで地域の公園をより有効に活用することができます。公園の環境整備は、子供たちの体力向上につながるだけでなく、生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現するのに重要な要素となってくるはずです。すべての子供たちが安全に楽しく運動できる空間を確保・拡大していくために、スポーツ庁もこうした取組を応援していきます。

●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています

・スポーツ庁 - 「平成30年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」
・株式会社ボーネルンド – 昔と今の公園に関する意識調査
・千代田区 – ボール遊びをしよう(子どもの遊び場事業)
・武蔵野市 - 公園緑地・リニューアル計画
・一般社団法人日本プロ野球選手会 – キャッチボールプロジェクト
・株式会社埼玉西武ライオンズ – 公園キャッチボール

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