スポーツ施設管理者のための障がい者対応講習会 ~誰もが安全・安心に楽しく利用できるスポーツ施設を目指して~
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、障害者スポーツへの理解や関心が深まりつつありますが、スポーツ施設の多くは、障害者の利用を想定せずに設置・運営されている傾向にありました。
平成28年には「障害者差別解消法」も施行され、スポーツ施設も管理運営において、健常者にとどまらず、障害者や高齢者などを含む多様なスポーツニーズへの対応が必要とされています。
そうした時流もふまえ、障害者に対して適切な対応ができる施設管理者の養成を目的に、公益財団法人日本体育施設協会が主催、スポーツ庁も共催として「2019年度スポーツ施設管理者のための障がい者対応講習会」を開催。
今回、2020年2月4日(火)に東京都北区にある東京都障害者総合スポーツセンターで行われた講習会の様子をご紹介します。
スポーツ現場における障害者との接し方を学ぶ
講習会は、午前・午後の2部に分かれ、午前は講義による座学。午後は東京都障害者総合スポーツセンターの利用者とのスポーツ体験交流と施設見学を行いました。
講義は、スポーツ施設の現状と障害者に向けた改修や取り組みの事例紹介からはじまり、スポーツ現場における障害者との接し方、スポーツ施設での対応の工夫についても説明がありました。
「障害」といっても、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害、知的障害、精神障害とさまざま、障害の程度も個人によって異なります。それぞれの障害への対応におけるポイントの解説があり、相手の状況を理解し、その人に合ったコミュニケーションの必要性を説くものでした。
施設内の工夫については、ロビー・廊下・共用スペースをはじめ、利用者のプライバシーが守られなければいけない更衣室、転倒の危険があるトイレ、シャワー室といった水回りなど、配慮が必要なポイントが詳しく解説されました。
また、受講者が現場に戻って具体的な取組を進める際に連携できる地域の障がい者スポーツ協会や障がい者スポーツ指導者協議会、障がい者スポーツセンターについて紹介がありました。
障害者の目線になってスポーツ体験交流
午後からは実技講習「スポーツ体験交流」として、会場である東京都障害者総合スポーツセンターの利用者と競技体験。受講者は4つのグループに分かれて、障害を持つ6名のゲストプレーヤーと一緒に「ショートテニス」「ボッチャ」「卓球」「卓球バレー」の4つの競技を行います。
- ショートテニス
- 一般用の車いすと、競技用の車いすの違いについて説明を受けた後、実際に車いすを操作。なかなか前に進めない、曲がる操作に慌てふためく受講者の姿もありました。
- ボッチャ
- 障害の重さに関わらず、障害者と健常者が一緒にプレイできるボッチャを通じてインクルーシブスポーツの楽しさを体験。障害の程度や種類によって、どのような投球方法があるのかを学びました。
- 卓球
- 同じ片麻痺の障害を持つ2人に参加してもらい、同じ障害であっても個人差があることを実際に見せていただきます。受講者は車いすに乗って卓球のラリーを行い、車いすでのバランスの取り方やラケットさばきを実体験しました。
- 卓球バレー
- 卓球台を12人で囲み、6人対6人でプレイする卓球バレー。それぞれの役割を担いチームプレイを楽しんでいました。専用の道具がなくても長机や板など身近な道具でも行えることを伝えると、自分の施設でも取り入れてみたいという受講者の声も聞かれました。
参加した受講者に話を聞いたところ「車いすの操作は難しいけど、楽しかった」「施設を利用する障害者の生の声を聞けたのが参考になった」というコメントもありました。
体験交流の後、東京都障害者総合スポーツセンターの館内設備を見学。設計されたもの以外にも、利用者の意見を取り入れたスタッフの手作りによる工夫箇所などが紹介され、受講者にとっては参考になることが多かったようです。
まとめ
講習会では、施設を改修するだけではなく、既存の設備に少しの工夫を加えるだけでも障害者の使い勝手が変わってくることや、コミュニケーションの大切さなどを教えてくれました。
スポーツ施設管理の現場で働く人たちの知識や意識が上がれば、きっと施設利用者の使い勝手も上がり、障害者も健常者も一緒にスポーツを楽しめる安心安全なスポーツ施設が増えていくことでしょう。
●本記事は以下の資料を参照しています
公益財団法人日本体育施設協会(2020-02-01閲覧)
公益財団法人 日本障がい者スポーツ協会(2020-02-01閲覧)
公益社団法人東京都障害者スポーツ協会(2020-02-01閲覧)
障害者のスポーツ施設利用促進マニュアル(東京都オリンピック・パラリンピック準備局、公益社団法人東京都障害者スポーツ協会)(2020-02-01閲覧)