各都道府県が集い、スポーツでひとつになった「いちご一会とちぎ国体」
2022年10月1日~11日、第77回国民体育大会「いちご一会(いちえ)とちぎ国体」が開催されました。2020年の第75回鹿児島国体、2021年の第76回三重国体が新型コロナウイルス感染症拡大のため中止となり、3年ぶりの国体開催となります。栃木県では1980年の「栃の葉国体」以来、42年ぶりの開催です。県内各所の会場では、連日、各都道府県の代表による熱戦が繰り広げられました。DEPORATREでは大会の様子を現地取材したのでレポートします。
「いちご一会とちぎ国体」とは
国民体育大会は、広く国民の間にスポーツを普及し、国民の健康増進と体力向上を図り、地方スポーツの振興と地方文化の発展を図ることを目的として行われる大会です。1946年から毎年都道府県持ち回りで開催され、都道府県対抗方式となっており「冬季大会」と「本大会」の各競技で競技得点の合計を競い合います。男女総合成績第1位には「天皇杯」、女子総合成績第1位には「皇后杯」が授与され、各都道府県は獲得を目指します。
いちご一会とちぎ国体では、「夢を感動へ。感動を未来へ。」の大会スローガンが掲げられ、会期中は37の正式競技(※1)、特別競技の高等学校野球(硬式、軟式)、5つの公開競技(※2)のほか、栃木県内に居住の方を対象としたデモンストレーションスポーツが31競技行われました。
※1 正式競技(37競技):陸上競技、水泳、サッカー、テニス、ボート、ホッケー、ボクシング、バレーボール、体操、バスケットボール、レスリング、セーリング、ウエイトリフティング、ハンドボール、自転車、ソフトテニス、卓球、軟式野球、相撲、馬術、フェンシング、柔道、ソフトボール、バドミントン、弓道、ライフル射撃、剣道、ラグビーフットボール、スポーツクライミング、カヌー、アーチェリー、空手道、銃剣道、なぎなた、ボウリング、ゴルフ、トライアスロン
※2 公開競技(5競技):綱引、ゲートボール、パワーリフティング、グラウンド・ゴルフ、武術太極拳
総合開会式では県民の力を結集した演出
10月1日、メイン会場の宇都宮市「カンセキスタジアムとちぎ(栃木県総合運動公園陸上競技場)」で、総合開会式が執り行われました。式典に先立ち、上州名物「八木節」、ダンスパフォーマンス、和太鼓演奏などのオープニングプログラムが披露されました。
開会式は、天皇皇后両陛下御臨席の下、各都道府県の選手団約1600人が入場。なかでも栃木県選手団の入場ではスタンドは大いに盛り上がりました。選手入場に続いて栃木県の福田富一知事の開会宣言が行われ、大会会長、文部科学大臣からの挨拶。天皇陛下からは「選手の皆さんには日頃の練習の成果を充分に発揮されるとともに、改めてスポーツのすばらしさを実感しつつお互いの友情を育み、地元栃木県の皆さんとの一期一会を大切にしてすばらしい思い出を作ってください」などと激励のお言葉ありました。
写真:福田富一栃木県知事/永岡桂子文部科学大臣
写真:栃木県選手団の入場シーンではスタンドから一段と大きな歓声がわきあがる
オリンピックの聖火にあたる炬火(きょか)を携えた走者たちが会場内をリレーで繋ぎ炬火台に点火。栃木県選手団の代表選手2人が選手宣誓を行い、本大会の幕が開きます。
写真:走者たちによって炬火が1つにまとめられた/
栃木県選手団を代表してスポーツクライミング男子・楢崎智亜選手とホッケー女子の狐塚美樹選手が選手宣誓を行う
開会式の後は地元の中学生・高校生ら約1350人によるエンディングプログラムが披露され、栃木県の自然・歴史・産業などをテーマにした躍動的なパフォーマンスが会場を湧かせました。
各競技会では連日熱戦が繰り広げられる
開催期間中、各都道府県の選手たちによる熱戦が連日繰り広げられました。参加者には、東京2020大会に出場した約100名の選手をはじめ、多くの日本代表選手が含まれており、各競技会場でハイレベルな試合が展開。アスリートたちの技量や姿勢に多くの観客が魅了されました。
期間中は冷雨に見舞われた日もありましたが、陸上、自転車などの競技では悪天候ながらもベストに迫るタイムが続出。また若いアスリートたちによる大会記録の更新など、未来を担う選手たちの台頭が目覚ましい大会でした。特別競技の高校野球軟式では、国体開催地の栃木代表・作新学院と、次の国体開催地となる鹿児島代表・鹿児島実業が引き分け両校優勝という結果。ここでも開催地のバトンタッチが行われたようです。本大会前には、綱引き、グラウンド・ゴルフなど公開競技が行われ、ゲートボールでは栃木県代表が男女ダブル入賞しました。
大会運営からの発表によれば、競技会には延べ328,983人の選手・監督、大会関係者、観覧者などが参加。総合得点では、天皇杯(男女総合)では、1位:東京、2位:栃木、3位:埼玉。皇后杯(女子総合)は、1位:東京、位:栃木、3位:愛知という順番でした。
写真:陸上ハードル少年女子/バレーボール少年男子
引き継がれるバトン、国体から障スポへ。そして栃木から鹿児島へ
10月11日には総合閉会式がカンセキスタジアムとちぎにて行われました。式典には、前日に那須塩原で行われた馬術競技会を観戦された佳子内親王殿下が御臨席。閉会式には選手団671人が参加しました。大会成績発表が行われ、総合成績上位の選手団には大会会長より表彰状が授与。この表彰状は栃木の伝統工芸品である和紙とのこと。天皇杯・皇后杯は佳子内親王殿下から授与されました。
大会会長の挨拶に続き、スポーツ庁の室伏長官からも挨拶が行われ、以下のようなことを語りました。 「若いアスリートたちへ新たな刺激を与えてくれた大会でもあり、今後、本大会から世界に羽ばたくアスリートが数多く輩出され、そして活躍することを期待しております」。
写真:室伏スポーツ庁長官の挨拶
大会のシンボルともいえる炬火が分火・納火され、29〜31日に行われる全国障害者スポーツ大会へと炬火が引き継がれました。そして栃木県知事から次の開催地である鹿児島県知事へと大会旗が手渡され、無事に国体のバトンタッチが執り行われました。
写真:栃木県知事から次回開催地の鹿児島県知事へ大会旗が手渡された
まとめ
3年ぶりの国体開催を待ち望んでいたのはアスリートたちだけではなく、開催地となる地元の人たちも同じ想いだったようです。総合開会式・閉会式および競技会では、老若男女問わず数多くの栃木県民が全力で大会を応援し、大会スタッフやサポートボランティアなどの皆さんからは大会名の由来である「一期一会」の言葉どおり、出会った人に対しての「おもいやり」が伝わってきました。スポーツを通じて、人の気持ちが一つになれることを本大会の成功が証明したのではないでしょうか。
●本記事は以下の資料を参照しています
いちご一会とちぎ国体・とちぎ大会(国体・障スポ)-第77回国民体育大会・第22回全国障害者スポーツ大会(2022-10-01閲覧)