「嫌い」を「好き」に変えるために~学習指導要領改訂〈小中学校・体育〉~

運動会 写真

「体育」が人気教科の一つである一方で「スポーツが嫌い」という方も少なからずいらっしゃるでしょう。もちろんその考え自体は尊重されるべきです。スポーツ庁は、それらを理解したうえで生涯にわたる健康で豊かなスポーツライフを実現するため、スポーツの価値の中核である「楽しさ」や「喜び」を知ってもらうための施策を行っています。そこには「すべての子供たちにスポーツの楽しさや喜びを知ってもらい、触れてみてほしい」という願いが込められています。

女子中学生の2割が「スポーツ嫌い」という現実

「好き」だけでなく「嫌い」にもフォーカスする

スポーツ嫌いの中学生 グラフ
引用:スポーツ庁「平成29年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」

平成29年度に実施した「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」で、小学5年生、中学2年生が「運動やスポーツをすることは好きですか」という質問に対し、「好き・やや好き」と答えた割合は、小学5年生が90.4%、中学2年生が83.7%と高い数値となっています。

一方で、「嫌い・やや嫌い」と答えている割合は小学5年生が9.6%、中学2年生が16.3%、とりわけ中学2年生女子は21.5%となっている事実も見逃すことはできません。また、体育・保健体育の授業以外で一週間の運動時間が60分未満の女子の割合は、小学5年生が11.6%、中学2年生が19.4%となっていることが分かりました。

新学習指導要領が日本の体育を変える

目標は「スポーツ嫌いの中学生を半減させる」こと

中学生 写真

こうした課題を解決すべく、スポーツ庁が第二期スポーツ基本計画で掲げている目標値は、中学生全体の16.3%にあたるスポーツ嫌いの生徒を8%まで減らすこと。つまり「スポーツ嫌いの子供を半減させること」です。

非常に高い目標ですが、スポーツが嫌いな子は「運動やスポーツが大切ではない」「体育の授業は楽しくない」と考えている層が多いことも分かっており、誰もが楽しいと思う体育の授業を行うことにより、達成可能な数値だと考えています。

では、そのためにどういった策を講じているのか、具体例を明示しましょう。

文部科学省とスポーツ庁は、小学校の体育、中学校の保健体育の学習指導要領の改訂を行いました。これらは小学校で2020年から、中学校で2021年から適用される予定です。

これまでの学校体育は、技能の指導が重視された時期もありました。そうすると向き不向きによって技能的に「できる子」と「できない子」が生まれ、「できない子」は苦手意識や劣等感を感じてスポーツから離れてしまいます。

そこで、新たな学習指導要領においては、従来よりも「多様なスポーツの楽しみ方を共有する」という指針が明文化されました。つまり、「できる」「できない」だけではないスポーツの楽しみ方を子供たちに感じてもらうことの大切さ、また「運動が苦手」や「意欲が低い」児童にも配慮した指導の在り方、授業の改善方法が示されたのです。

「する・みる・ささえる」だけでなく「知る」

中学生 写真

もう1つのポイントは、スポーツを「知る」ことに重きを置いた指導を増やすことです。運動には「する」の他に、「みる」「ささえる」といった楽しみ方がありますが、そこに「知る」喜びを加えています。

運動をすることで心身が健康となる理由を知ったり、スポーツを通じて心を動かされたり、人と人がつながったりする尊さを知ってもらうこと、また、幼い頃から継続的に身体を動かすことで、体力の向上など好影響が多々あることなど、さまざまな効果を理解してスポーツに対する意欲や自主性を持ってもらうことが狙いです。

東京オリンピック・パラリンピックを機に……スポーツ庁の願い

新学習指導要領が小学校で適用される2020年は、東京オリンピック・パラリンピック開催の年でもあります。スポーツを「する」だけでなく、「みる」「ささえる」ことが身近に感じられるタイミングであることから、今回の改訂はスポーツの価値をより広く子供たちに知ってもらうチャンスと言ええそうです。

「あのスポーツが楽しそうだからやってみたい」「あのメダリストみたいにプレイしてみたい」「あのアスリートがかっこいいから応援したい」「あの競技のことをもっと知りたい」……そうやって自主的にスポーツと触れ合う“きっかけ”をたくさん作り、生涯にわたって豊かなスポーツライフを楽しめる能力を子供たちに育んでもらうことが、スポーツ庁の目標です。平成29年3月に公示された新学習指導要領には、そんな願いが込められているのです。

まとめ

スポーツ庁としては、子供たちに「できる」「できない」だけではないスポーツの価値、つまり「楽しさ」や「喜び」を知ってもらいたいと考えています。スポーツとは、必ずしも頑張らなければいけない、うまくならなければいけない、勝たなければいけないものではありません。

他人と比較することなく、自分に合ったプレイの仕方を見つけられれば、子供たちは大人になっても進んでスポーツと関わり、自然と生涯スポーツを楽しみながら、健康で豊かな生活を送っていくことができるでしょう。これこそ「スポーツ立国」を目指す日本の理想なのです。

●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています
スポーツ基本計画(本文)(PDF)
小学校学習指導要領解説 体育編(新学習指導要領)(PDF)

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