“スポーツの価値を最大化する”ため、スポーツ団体が取り組む「ガバナンスコード」とは?

“スポーツの価値を最大化する”ため、スポーツ団体が取り組む「ガバナンスコード」とは?(写真)スポーツ審議会総会において、「スポーツ団体ガバナンスコードの今後の在り方について(答申)」が早川スポーツ審議会会長から室伏長官に手交された

2023年9月、「スポーツ団体ガバナンスコード〈中央競技団体向け〉」の改定が、2019年6月の策定以降初めて行われました。「スポーツ団体ガバナンスコード」は、一般的にはあまり知られていませんが、たとえば役員の体制整備やコンプライアンス教育の実施、危機管理・不祥事対応体制の構築など、スポーツ団体の適切な組織運営の原則・規範を示す大切なもので、スポーツの価値を最大化にするには必要不可欠なものです。今回、デポルターレでは「スポーツ団体ガバナンスコード」について解説します。

なぜガバナンスコードが必要なのか?

まず、一般的な「ガバナンスコード(Governance Code)」とは、組織・団体が活動を続けていくうえで遵守すべき基準や規範を指します。組織の統治体制を確立し、透明性、公正性、信頼性等を保つための枠組みです。

スポーツにおいても、競技の普及やアスリートの競技力の向上、大会の開催などの取組はスポーツ団体が中心となって行っています。そのため、規模の大小やその取組の違いはありますが、その組織に応じた適切な組織運営が求められます。

2020東京大会をはじめとする国際舞台での我が国のアスリートの活躍は、国民に大きな勇気と感動を与えてくれました。しかし、残念ながらスポーツ界では不正行為や不祥事など、スポーツへの信頼が大きく損なわれるような事案が起きているのも事実です。スポーツの価値を高め、国民の皆様にスポーツを応援していただける環境を醸成していくためには、中央競技団体(以下、NF)をはじめとするスポーツ団体が、ガバナンスコードを遵守し、透明性・公正性を確保していくことが重要なのです。

スポーツ団体ガバナンスコードとは?

2019年6月、スポーツ庁が、「スポーツ団体が適切な組織運営を行ううえでの原則・規範」として策定・公表したのが「スポーツ団体ガバナンスコード」(以下、ガバナンスコード)です。ガバナンスコードは、団体の性質に応じて〈中央競技団体向け〉と〈一般スポーツ団体向け〉の2つに分かれています。

スポーツ団体ガバナンスコードについて:図(図)スポーツ団体ガバナンスコード〈中央競技団体向け〉と〈一般スポーツ団体向け〉の違い

スポーツ団体ガバナンスコードの概要:図(図)スポーツ団体ガバナンスコードの各種原則の概要

〈中央競技団体向け〉ガバナンスコード

NFは、特定のスポーツにおける唯一の国内統括組織として国際競技大会の代表選手選考や選手の競技力強化予算の配分等、社会的影響力が大きく、公共性の高い業務を独占的に行っており、高いレベルのガバナンスの確保が求められます。
組織運営における役員等の体制の整備やコンプライアンス教育の実施、危機管理・不祥事対応体制の構築などが定められた13の原則(上図を参照)のすべてが適用され、毎年ガバナンスコードの適合状況を自ら点検し、社会に対してその結果を説明・公表することが定められています。
さらに、各NFは、4年に1度、統括団体=日本スポーツ協会(以下、JSPO)、日本オリンピック委員会(以下、JOC)、日本パラスポーツ協会(以下、JPSA)によるガバナンスコードへの適合性審査を受けます。審査の評価結果は「競技力向上事業助成金」の配分額に反映される仕組みになっています。
また、適合性審査の評価の際には、他のスポーツ団体の参考となるよう、NFのガバナンス確保の好事例の取組も公表しています。

〈一般スポーツ団体向け〉ガバナンスコード

NF以外のスポーツ団体が対象となります。公的助成を受給する団体(都道府県・指定都市体育協会、都道府県単位の競技団体、総合型地域スポーツクラブ、スポーツ振興を主たる目的とする一般法人、NPO法人等)のほか、公的助成を受給していない団体についても、コードに基づく自己点検及びその結果の公表を広く促しています。
一般スポーツ団体向けガバナンスコードは、中央競技団体向けのエッセンスを抽出し、基本方針の策定・公表やコンプライアンス意識の徹底、適切な情報開示の実施などの6原則(上図を参照)で構成されています。

NFのガバナンス強化の取組

スポーツ団体の適正なガバナンス確保のための仕組みとして、スポーツ庁、日本スポーツ振興センター(JSC)、統括団体であるJSPO、JOC、JPSAの5者の緊密な連携を図るため、各組織の長を構成員とする「スポーツ政策の推進に関する円卓会議」(以下、円卓会議)を設置しています。円卓会議では、適合性審査の結果の報告や、不祥事事案の対応についての協議などを行います。

中央競技団体のガバナンス強化のための新たな仕組み:図(図)円卓会議における各組織の役割

まとめ

今年2023年、ガバナンスコードの運用状況をはじめ、社会の変化や国民のスポーツに対する期待の高まりなどを踏まえ、「スポーツ団体ガバナンスコード〈中央競技団体向け〉」の見直しが行われました。13の原則には変更はありませんが、よりガバナンスコードの実効性を確保するため、いくつかの記載が見直されました。

東京2020大会後も日本国内ではさまざまな国際大会の開催が予定されており、スポーツへの注目も、期待も高まりをみせています。「感動していただけるスポーツ界」を実現するためにも、健全で透明性のあるスポーツ界であることが求められます。今後もスポーツ団体のガバナンスを強化していくための取組により、スポーツの価値を最大化するとともに、高潔性(インテグリティ)を確保することで、スポーツ界が発展していくことが望まれます。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - スポーツ団体ガバナンスコード(2023-10-01閲覧)

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