官民戦略プロジェクト「スタジアム・アリーナ改革」によってもたらされる効果とは?

官民戦略プロジェクト「スタジアム・アリーナ改革」

スタジアム・アリーナは、地域活性化の起爆剤となることが期待されています。たとえばサッカーが盛んなヨーロッパでは、多くのスタジアムが「複合型」となっており、競技が見やすい専用競技場でありながら、公園やレストラン、さらにはホテルやショッピングモール、フィットネスクラブといった「街に暮らす人々が日常的に利用できる施設」を複合化しているのが特徴です。

またアメリカのメジャーリーグベースボールにおいては、球場は「ボールパーク」と呼ばれ、試合日以外でも訪れた人々が楽しんで過ごせる工夫がなされています。アリーナは、イベントに応じて席を変化させ、スポーツやコンサートを楽しめるライブエンターテインメント空間を創り出しているのです。

我が国においても、スポーツ観戦を主目的に多くの集客が見込める「スタジアム・アリーナ」を最大限に活用し、スポーツの枠を超えた市民の憩いの場にーー。 そんな思いのもと、スポーツ庁と経済産業省は平成28年7月、「スタジアム・アリーナ推進 官民連携協議会」を立ち上げました。これは国土交通省や観光庁の協力も得て、プロスポーツリーグや地方自治体の関係者とともに「スタジアム・アリーナの在り方を考えよう」という議論の場です。

スタジアム・アリーナ改革指針の策定(概要)

上記の協議会のなかで、スポーツを通じた地域振興や地域経済の活性化を実現するために策定されたのが「スタジアム・アリーナ改革指針」です。成長戦略(未来投資戦略2017)では、多様な世代が集う交流拠点となるようなスタジアム・アリーナを2025年までに20ヶ所を整備することが、具体的な目標として掲げられています。

スタジアム・アリーナを核として官民が連携し、スポーツを日本の基幹産業へと発展させることができれば、街づくりにおいては以下のような波及効果が期待できます。

  1. にぎわいの創出 集客施設として人々の地域内交流やスポーツツーリズムなどによる地域間対流が促される
  2. スポーツ機会の増加 身近にスポーツチームやスタジアム・アリーナが存在することで地域住民がスポーツに触れる機会が増え、青少年の健全育成や多世代にわたる健康増進が促進される
  3. 地域の社会課題の解決 スポーツチームによる社会貢献活動や、スポーツ選手が地域の“顔”となってメッセージを発信することによって社会問題の啓発、被災地復興などの社会課題を効果的に解決へ導ける

改革指針に続き、平成29年5月には「スタジアム・アリーナ整備に係る資金調達手法・民間資金活用のプロセスガイド」も策定しています。これまで、日本における大規模なスポーツ施設の整備は「官」が主導していましたが、今後は民間事業者のノウハウなどを活用し、官民が対等に、そして総合的な「官民プロジェクト」として目指すべきスタジアム・アリーナの姿に合意して進めていく試みです。  

全国各地で進むスタジアム構想
全国各地で進むスタジアム構想

ここからは国内での先進事例をいくつか紹介していきましょう。

プロ野球の横浜DeNAベイスターズは、「横浜スポーツタウン構想」を掲げています。市やスポーツ庁、経済産業省、外部のパートナー企業と連携し、横浜スタジアムを中心とした広範囲の街づくりや産業創出を推進する取組です。現在、同構想の取組の一つとして「電子地域通貨」サービスの開発を検討中で、横浜DeNAベイスターズが持つデータやネットワークを生かし、スタジアムや周辺エリアのお店でスマートに買い物ができるこの仕組が実現すれば、スポーツを軸に街全体が盛り上がることになるでしょう。

 「ジャパネットたかた」で知られる通販大手の(株)ジャパネットホールディングスが事業主体となり、長崎駅から歩いて行ける場所にサッカーJリーグV・ファーレン長崎の新たなホームスタジアムを建設する計画が進められています。同プロジェクトには、周辺にホテルやマンション、オフィスや地元密着のマーケットなどを同時に整備する計画が含まれており、県や市と連携して新たな長崎のランドマークを作ることを目指しています。

沖縄市で進むアリーナ整備 沖縄市で進むアリーナ整備

沖縄県沖縄市では、1万人規模を収容する新しい多目的アリーナの建設工事が着工し、バスケットボールBリーグの人気クラブ、琉球ゴールデンキングスの新たなホームアリーナとなる予定で、クラブの活躍や人気によって地域活性化になることを期待しています。沖縄市では、スポーツ庁や経済産業省、使う側のキングスやイベントプロモーターなどと意見交換を行ったり、本場アメリカのアリーナ設計を参考にしたりと、足を運ぶ利用者が「楽しめる」かつ使う側にとって「使いやすい」施設を作ろうとしています。

これらは一例ですが、いずれも「スタジアム・アリーナ改革」のモデルケースとして大きな期待を寄せているプロジェクトです。現在、全国のスタジアム・アリーナ新設・建替構想は以下のとおりです。

スポーツ庁が相談窓口を設置

スポーツ庁が相談窓口を設置

スポーツ庁では、今年7月より「スタジアム・アリーナ改革の推進に関する相談窓口」を開設しています。

 全国各地でスタジアム・アリーナの整備を構想・計画している地方公共団体などに、各種情報の提供や専門家の派遣などを行っています。「整備プロジェクトの検討手順」「資金の調達方法」「運営・管理・設計のポイント」といったアドバイスから、協力事業者の紹介、そして「国内外の先進事例を知りたい」という声にも応えるなど、幅広く対応しています。

まとめ

冒頭でも述べたように、欧米ではすでに多目的・複合型のスタジアムやアリーナがスタンダードと言えるでしょう。日本でもそうした先進的で付加価値のあるスタジアム・アリーナを増やしていくために、引き続き官民連携をさらに推進していきます。

 今後スポーツ庁では、計画策定における具体的な課題や解決策などの把握・整理を行いつつ、広く情報発信をしながらスタジアム・アリーナ整備の形成支援を推進していくこと−−。それこそが、スポーツを中心とした街づくりで国全体を活性化することにつながると考えています。

●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています

スポーツ庁 - スタジアム・アリーナ改革指針(2018-11-01閲覧)(PDF)
スポーツ庁 - スタジアム・アリーナ運営・管理計画検討ガイドライン(2018-11-01閲覧)
スポーツ庁 - スタジアム・アリーナ整備に係る資金調達手法・民間資金活用プロセスガイド(2018-11-01閲覧)(PDF)
スポーツ庁 - スタジアム・アリーナ改革の推進に関する相談窓口(2018-11-01閲覧)

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