スポーツビジネスイノベーションが生み出す新たな価値 ~「スポーツ×IT」のポテンシャルとは?~

スポーツ×ITのポテンシャル

スポーツを支援する方法はさまざま。これまでは「競技力向上」のための支援が中心でしたが、スポーツ庁では平成30年度より、新しい方法でスポーツの価値を高める取組を行っています。その施策のひとつが「スポーツビジネスイノベーション推進事業」です。

スポーツの場から新たな財やサービスが創出され、そこで生まれたプロフィット(利益)がしっかりとスポーツに還元される──。そんなサイクルを作ることによってスポーツの成長産業化を目指すべく、「IT技術を活用した他産業との融合による新たなビジネスの創出」が行われています。今回はその事例にスポットを当てます。

スポーツビジネスイノベーション推進事業とは

スポーツ庁では、スポーツ産業の市場規模拡大によってスポーツ環境が改善されれば、日本のスポーツ参画人口はさらに増えると考えています。そのために、2015年時点で5.5兆円とされるスポーツ市場の規模を、2025年までに15兆円まで引き上げるという目標を掲げました。

市場規模拡大に向けたイノベーション創出のためには、他産業の企業や人材の協力を得て強固なプラットフォームの構築が不可欠。産学官の連携によってスポーツ関連団体の経営力を強化し、中長期的なビジョンの下でスポーツを「産業」として発展させるための取組支援、それが「スポーツビジネスイノベーション推進事業」です。

ITでフェンシングを“見る”ものから“遊ぶ”ものに

フェンシング

スポーツビジネスイノベーション推進事業の一環で、スポーツ庁は「中央競技団体の経営基盤強化」を目的とし、中央競技団体が民間企業の知見を活用して競技の普及・マーケティングを図る委託事業を行っています。ここでは公益社団法人日本フェンシング協会(太田雄貴会長)の「競技団体×IT(レジャー産業)」の先進的な取組への支援例を見てみましょう。

競技自体は認知されているものの、競技経験者は少ないという課題を抱えていた日本フェンシング協会が協業したのは、日本最大級のレジャー・遊び・体験予約サイト「asoview!」でした。「フェンシング競技を“見る”ものから“遊ぶ”ものに変えたい」。これは、フェンシングスクールの体験プログラムをフェンシングに関心ある人に発信する現状から、レジャー体験のポータルサイトより新しい関心層にリーチし、もっと気軽にフェンシングを「体験」できる機会を拡げようという試みです。

2月7日には、東京・渋谷にて「フェンシングパーク produced by asoview!」が催されました。同パークでは「メダリスト太田雄貴に挑め!」というイベントが実施され、ここでは体験予約サイトにて応募した2名の参加者が太田雄貴選手に挑戦。実際にフェンシングを楽しみながら、「フェンシングは気軽に楽しめるもの」というイメージを発信しました。

新たなスポーツビジネス創出に向けた市場動向

新たなスポーツビジネス創出に向けた市場動向

フェンシングの例にとどまらず、テクノロジーの進化により「スポーツ×IT」の融合は大きな可能性を秘めています。スポーツ庁は、スポーツ団体が有するデータや権利、施設などのオープン化、そしてデータ活用などによる新ビジネス創出を促進する「スポーツオープンイノベーションプラットフォーム」の構築を進めており、今後さらに多くの新ビジネスが生み出されることが期待されています。

「スポーツ×テクノロジー」で楽しさを日常に

2月22日には、大阪商工会議所の企画・運営によりスポーツ・テクノロジー・エンターテインメントが融合した体験型イノベーション・ショーケース「Ex-CROSS(エクス・クロス)」が開催。テクノロジーとスポーツが融合したスポーツクライミング、デジタル卓球、サイレントヨガなどのニュースポーツ、サイバースポーツ、パラスポーツといったより身体を動かす楽しみが増すような新たなエンターテインメント性を持ったスポーツの可能性が注目されています。

また、特別なイベントでなくとも、多くの人が所有しているスマートフォンのアプリにも「スポーツ×テクノロジー」の可能性が多くあります。

たとえばスポーツ庁の「FUN+WALK」アプリや歩数計アプリを使えば、1日の歩数に合わせて割引クーポンがもらえるなど、「歩く」ことが楽しくなります。ランニングやトレーニングデータを記録することでSNSにラン結果や写真のシェアができるアプリのように、「走る」体験をより豊かにするアプリも。また、「ポケモンGO」のように楽しみながら歩く機会を拡大するといった効果を得られることもあります。

健康増進や身体を動かす「きっかけ」をつくり、「継続」する楽しみや「モチベーション」をより向上させてくれるスマホアプリの活用もまた、「スポーツ×テクノロジー」の融合によるスポーツ産業活性化のひとつと言えるでしょう。

スポーツオープンイノベーションプラットフォームの構築を目指して

クライミング

1月26日には、スポーツ庁主催の「スポーツオープンイノベーションネットワーキングカンファレンス」が東京・有明で開催されました。

スポーツ庁の鈴木大地長官も登壇した同カンファレンスでは、さまざまな「スポーツ×テクノロジー」の先進事例を紹介するワークショップや、先進的な取組を行っている企業と対話ができる「権利、SNS、データ、外部人材等活用に係る相談会」などを実施。スポーツ庁が目指す「スポーツオープンイノベーションプラットフォーム」の構築を促進する交流が行われました。

まとめ

スポーツの現場から、新しい価値の発信を。そしてスポーツを、より大きな「産業」へ────。

スポーツを通じて生まれる価値を見える化・高度化し、広めていくことが「スポーツ参画人口の拡大」や、ひいては社会課題の解決につながっていきます。 スポーツを「する」「みる」「ささえる」「知る」がより豊かになるテクノロジーの活用と、それを促進する一連の取組に、ぜひ今後とも注目してみてください。

●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています

スポーツ庁 - 新たなスポーツビジネス等の創出に向けた市場動向(平成30年3月)(PDF)(2019-03-01閲覧)
スポーツ庁 - スポーツオープンイノベーションプラットフォーム(SOIP)推進会議(第1回) 配付資料(2019-03-01閲覧)


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