まち全体まるごとスポーツに親しむことができる場へ!「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2024」
スポーツ庁では、「第3期スポーツ基本計画」に基づき、スポーツによる健康増進や、スポーツによる地方創生・まちづくりなど、さまざまなスポーツ施策に取り組んでいますが、まち全体で誰もがスポーツに親しめる「場」こそ、スポーツの機会を増やし、ライフパフォーマンスの向上に繋がるものではないかと考えています。
私たちのQOL(Quality of Life, 生活の質)を高め、充実した日々を過ごすため、どのような「場」が必要なのか、学生の皆さんに呼びかけ「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2024」を開催。11月6日、室町三井ホール&カンファレンスにて応募総数45点の中から選出された17点がプレゼンテーションを行い、最終審査および受賞式が行われましたので、その模様をレポートいたします。
「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション」の開催背景
「スポーツの実施状況等に関する世論調査(2023年度)」の調査によれば、直近1年間に行った運動・スポーツの実施場所として、「道路」、「公園」、「山岳・森林・海・湖・川 等の自然環境」、「公共体育・スポーツ施設」等が多く挙げられており、まちの中でスポーツを行うことが当たり前になりつつあることが分かりました。
さらに一歩進んで、まちを、運動・スポーツの観点からデザインしていくことができれば、誰もが気軽にスポーツに親しめる世界が到来します。このコンペティションでは、対象地域を決め、まちが、運動・スポーツに親しみやすい「場」となるようなアイデアやデザインの提案を学生の皆さんに募集しました。
具体性が高まった提案の数々、サッカー元日本代表監督の岡田氏による基調講演も
テーマは、『まち全体でスポーツに親しめる「場」づくり』。
応募部門は、①アイデア部門、②デザイン部門の2つ。①アイデア部門では空間デザインのアイデアとその場での活動シーン、②デザイン部門では具体的な空間デザインを中心とした提案となります。
45点の応募の中から審査員による1次審査を経て、①アイデア部門12点、②デザイン部門5点が選ばれました。2次審査では室伏長官も審査に加わり、審査員の前でプレゼンテーションが行われ、「スポーツ庁長官賞」、「審査員賞」、「優秀賞」が決定されました。
今年は2回目の開催ということで、具体的な内容にまで踏み込んだ提案が増え、いずれも、すぐに実行されてもおかしくないアイデアばかりでした。また審査員も学術的な面だけではなく、自治体や都市開発現場に携わる専門家たちが加わり、提案の具体性に向けたアドバイスが行われました。
さらに今回は、最終審査に先駆けて、サッカー元日本代表監督の岡田武史氏による基調講演が行われました。岡田氏は現在FC今治運営会社「株式会社今治.夢スポーツ」代表取締役であり、ご講演では、サッカースタジアムの建設および運営、地域創生への携わり方、人材育成など、スポーツと地域コミュニティの関わり方を学生の皆さんに語りました。
(写真)岡田武史氏による基調講演
審査員(敬称略)
- 室伏 広治(スポーツ庁長官 ※2次審査から参加)
- 花里 真道(千葉大学予防医学センター健康都市空間デザイン学分野・准教授)
- 川田 翔子(京都府八幡市市長)
- 福岡 孝則(東京農業大学 地域環境科学部造園科学科・教授)
- 藤村 龍至(東京藝術大学美術学部建築科・准教授/RFA主宰)
- 飯石 藍 (公共R不動産メディア事業部マネージャー/株式会社nest取締役)
- 七尾 克久(三井不動産株式会社 日本橋街づくり推進部部長)
- 三浦 詩乃(一般社団法人ストリートライフ・メイカーズ・代表理事/中央大学 理工学部 都市環境学科 准教授)※ご欠席
甲乙のつけがたい提案の数々
2次審査では各学生ともに工夫を凝らしたプレゼンテーションを披露。スポーツ庁長官賞を受賞したのは、<アイデア部門>は滋賀大学大学院 データサイエンス研究科(井下敬翔)、<デザイン部門>大阪市立大学 生活科学部 居住環境学科(松本恵利香、北村和津)の皆さん。
授賞式の最後、室伏長官から「どの発表も素晴らしく、甲乙のつけがたい作品でした。受賞の有無にかかわらず、全ての学生の皆さんは今回応募いただいた提案内容に自信を持ち、胸を張っていただきたい」との言葉がありました。
(写真)挨拶を行う室伏長官
スポーツ庁長官賞
<アイデア部門>
スポーツの小型化とモジュール型小規模競技場によるウェルビーイングな都市デザイン
滋賀大学大学院 データサイエンス研究科(井下敬翔)
街全体に小規模の競技場を設置して、日常的に住民がスポーツを楽しめる空間にしようという提案です。小型競技場は都市景観と調和し、生活空間の一部として機能。スポーツ自体を小型化することで、小規模スペースの競技場でも遊べるスポーツを増やし、老若男女、障がいの有無を問わずプレーができる環境を創出します。
受賞作品
https://www.mext.go.jp/sports/content/20240712-spt_stiiki-000036924_01.pdf
《受賞コメント》
このたびは、私の作品をスポーツ庁長官賞にお選びいただき、誠にありがとうございます。室伏長官より直々に賞を賜り、甚だ光栄に存じます。今回、私はスポーツと街並みを双方向からデザインするというテーマのもと、小型化に焦点を当てた提案をさせていただきました。苦労した点といたしましては、いかに相手に私のアイデアを理解し、納得していただくかということでした。参加者の皆様のアイデアの質は非常に高かったと存じますが、私が選ばれたのは、アイデアを鮮明に伝えることや熱意を表現する点において優れていたからだと考えております。このようなアイデアコンテストは、発表のみで終わってしまうことが多く見受けられます。しかし、発表だけではその価値は限定的であり、記録としては残りますが記憶にはすぐに薄れてしまいます。私は、アイデアを発表するだけでなく、実際に実現することで、その価値が記録としても記憶としても確かなものになると考えております。今後は、社会実装に向けて尽力してまいります。関係者の皆様には心より感謝申し上げますとともに、改めましてこの度の栄誉に深く感謝申し上げます。
<デザイン部門>
産学官民一体のまち丸ごとスポーツジム化計画
大阪市立大学 生活科学部 居住環境学科(松本恵利香、北村和津)
大阪市が計画している「阪和線」沿いの都市計画道路をスポーツの力を借り、緑道としてだけではなく、気軽にスポーツや身体活動を行える空間にしようという提案です。緑道の周辺全体を大きなスポーツジムと捉え、さまざまなスポーツの場を各コンセプトに基づいて「目的地」として点在させ、移動を含め、住民の身体活動の活性化を促します。
受賞作品
https://www.mext.go.jp/sports/content/20240712-spt_stiiki-000036924_02.pdf
《受賞コメント》
この度はスポーツ庁長官賞に選出頂き、大変光栄に存じます。思うように制作が進まず苦しい思いもしましたが、長官賞を目指して努力した結果が実を結び、心から嬉しく思います。室伏長官、審査員・スポーツ庁関係者の皆様に、素晴らしい機会を頂いたこと、この場をお借りして感謝申し上げます。二次審査の準備では、限られた発表時間の中で、いかにして私たちの作品のポイントを理解して頂くか、どうすれば皆様の心に刺さる発表にできるかを考えて、プレゼンテーションをまとめることの難しさを感じました。しかし、一次審査を通過したからと油断せずに、話す練習を70回以上行うなど、審査会に向けて準備を重ねたことで、審査員の方々に顔を上げて興味を持って頂ける発表ができたと感じました。懇親会で頂いた審査員の皆様のご意見をもとに、作品を改善し、少しでも私たちの提案を実現できるように大阪市へのプレゼンに向けて準備を進めていきたいと思います。
審査員賞
<アイデア部門>
- 居心地が良く走りたくなるまつもと
-松本市における地域資源を活かしたランニングまちづくりの提案-
東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻(東條秀祐、石田翔) - サブスク制の総合スポーツサービス『ツナグコト』
名古屋大学 経済学部 経営学科(大野慶吾) - スポーツでつながる・笑顔がぎゅっとつまったCOMPACT CITY WARABI
早稲田大学 スポーツ科学部 スポーツ科学科(長濱碧生)
<デザイン部門>
- 街を沸かす~銭湯・サウナが熱するスポーツの街~
東京農業大学大学院 地域環境科学研究科 造園学専攻(若林英範、小清水亮太) - MOMOTI Urban Health ~暮らしに浸透する運動と健康~
九州大学 建築学科(日隈貴斗、喜多川寛汰、増野大輝、藤原統太、碓井和佳奈)
優秀賞
<アイデア部門>
- 公園管理×カフェ
千葉工業大学 創造工学部 デザイン科学科(大山瑛) - 『サイクルスマートシティ-新たな自転車によるまちづくり-』
北海道教育大学 岩見沢校 教育学部 芸術・スポーツ文化学科
(関口翔太、小原一真、西島萌恵、上野雅姫、伊勢澤颯太) - 『ヘルメットスポーツ』の普及促進プロジェクト
~ヘルメット着用意識の向上をめざす新たなコミュニティの創出と活用~
新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科
(西川虎徹、齋藤稜太、谷澤悠、加藤恵太、田邊和真、桑原理子) - お米作り スポーツで自然と触れ合いながら体を動かそう!!
筑波大学 体育専門学群(辻ななる) - ぽちゃ0(ゼロ)プロジェクト
大阪経済大学 人間科学部 人間科学科(山本風花、棚町真音、西浦凛) - 香川県の運動まちづくり~スポーツしよう店街&す5Eすごろく~
香川大学大学院 創発科学研究科(大田紘子、中矢恵美子) - 国立青少年教育施設と子どもを繋げ、自然体験活動の機会が多い街へ
鹿屋体育大学 体育学部(植木一喜、永岡勇次郎) - 廃校を開校し、健康な未来にさぁいこう!
和歌山信愛大学 教育学部 こども教育学科
(松原杏果、上田愛莉、大石純平、太田陽、樫谷久奈、黒岩美帆、小林唯音、角美咲、園田美咲、髙橋明希、田中夏葵、月原歩未、刀禰雄誠、東出篤興、湯瀬媛月、渡邊愛)
<デザイン部門>
- まちまるごとスポーツキャンパス
新潟大学大学院 自然科学研究科
(片柳智稀、鈴木伶梓、堀川夏実、中村大輔、瀬戸大貴、佐藤紬、足利美菜、前田駿) - ウォータブルプラン~「見る・動く」健康なまち、東大島~
日本大学 理工学部 海洋建築工学科
(高田悠真、森田健太郎、嶋川隼央、鈴木陸、芦ヶ原治希、草野真司)
まとめ
昨年に引き続き「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション」を開催いたしました。応募作品は、いずれも素晴らしい内容でした。柔軟な発想力、斬新なアイデアなど、スポーツによる課題解決案を数多く示していただき、大いなる刺激を受けました。これからもスポーツ庁は、学生コンペティションなどを通じて、さまざまな世代の方々と共に「スポーツ・健康まちづくり」を推進してまいります。
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まち全体まるごとスポーツに親しむことができる場へ!「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2023」初開催!
●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁 - スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2024(2024-11-01閲覧)
スポーツ庁 - スポーツの実施状況等に関する世論調査(令和5年度)(2024-11-01閲覧)