コロナ禍からの再生と飛躍「かごしま国体」

コロナ禍からの再生と飛躍「かごしま国体」

2023年10月7日〜17日、特別国民体育大会「燃ゆる感動 かごしま国体」が開催されました。本来、かごしま国体はオリンピックイヤーである2020年に第75回大会が開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、国体史上初の本大会中止となりました。鹿児島県では燃ゆるような想いで、今回の大会開催に漕ぎつけたといいます。デポルターレでは、大会の様子に加えて、開催までの経緯や県および県民の国体にかける想いをレポートします。

特別国体「燃ゆる感動 かごしま国体」とは

国民体育大会は、広く国民の間にスポーツを普及し、国民の健康増進と体力向上を図り、地方スポーツの振興と地方文化の発展を図ることを目的として行われる大会です。1946年から毎年都道府県持ち回りで開催され、都道府県対抗方式となっており「冬季大会」と「本大会」の各競技で競技得点の合計を競い合います。男女総合成績第1位には「天皇杯」、女子総合成績第1位には「皇后杯」が授与されます。国民体育大会という大会名称は2024年の佐賀大会から「国民スポーツ大会(略称:国スポ)」へと変更となります。

鹿児島県での国体開催は、1972(昭和47)年の第27回国民体育大会「太陽国体」以来51年ぶり。今回行われた「燃ゆる感動 かごしま国体」では、「熱い鼓動 風は南から」をキャッチフレーズに、鹿児島県の各市町村で熱戦が繰り広げられました。今年は奄美群島の日本復帰70年であることから、奄美群島で開かれた競技大会名には「奄美群島日本復帰70周年記念」の冠称がつけられました。

会期中は37の正式競技(※1)、特別競技の高等学校野球(硬式、軟式)、5つの公開競技(※2)のほか、鹿児島県内に居住の方を対象としたデモンストレーションスポーツが36競技行われました。デモンストレーションスポーツの中には「史跡巡りウォーキング」「歴史探訪ウォーキング」といった地元の特色を活かした競技もありました。

柔道女子団体戦/陸上女子400Mリレー:イメージ(写真)柔道女子団体戦/陸上女子400Mリレー

※1 正式競技(37競技):陸上競技、水泳、サッカー、テニス、ローイング、ホッケー、ボクシング、バレーボール、体操、バスケットボール、レスリング、セーリング、ウエイトリフティング、ハンドボール、自転車、ソフトテニス、卓球、軟式野球、相撲、馬術、フェンシング、柔道、ソフトボール、バドミントン、弓道、ライフル射撃、剣道、ラグビーフットボール、スポーツクライミング、カヌー、アーチェリー、空手道、銃剣道、なぎなた、ボウリング、ゴルフ、トライアスロン
※2 公開競技(5競技):綱引、ゲートボール、武術太極拳、パワーリフティング、グラウンド・ゴルフ

会場中が大歓声に包まれた総合開会式

10月7日(土)、鹿児島市「白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)」で、総合開会式が執り行われました。天皇皇后両陛下御臨席の下、各都道府県の選手団が入場すると、コロナ禍以降、初めて行動制限のない大会ということでスタンドからは大きな歓声があがり、特に鹿児島県選手団の入場は会場中が湧き立ちました。
選手団入場に続き、塩田康一鹿児島県知事から「夢と感動をもたらす素晴らしい大会になりますことを祈念します」と開会宣言が行われました。続いて、大会会長、文部科学大臣からの挨拶。天皇陛下からは「この特別国民体育大会が“コロナ禍からの再生と飛躍”を象徴する大会として皆さんの心に残る実り多い大会となることを期待します」と激励のお言葉がありました。

会場には県内をリレーによって繋ぎ運ばれてきた炬火(きょか)が炬火台に点火され、鹿児島県選手団の代表選手2人が選手宣誓を行い、本大会の幕が開きました。開会式後には、県ゆかりの著名人や大会運営に携わったボランティアからの激励メッセージ、そして鹿児島出身のシンガー・長渕剛さんからは歌による力強い激励が選手団に送られました。

選手宣誓の様子:イメージ(写真)選手宣誓の様子

熱い鼓動のバトンは、かごしま国体からSAGA2024へ

開催期間中、各都道府県の選手たちによる熱戦が連日繰り広げられました。各競技会場ではハイレベルな試合が展開され、観客席でもとても熱のこもった応援が見受けられたのが印象的でした。まさに大会名のごとく「燃ゆる感動 かごしま国体」だったと思います。

総合得点では、天皇杯(男女総合)では、1位:東京、2位:鹿児島、3位:大阪。皇后杯(女子総合)は、1位:東京、2位:鹿児島、3位:大阪という順番でした。天皇杯、皇后杯ともに2位の鹿児島は、馬術や剣道など17競技30種目で優勝を果たし、昨年の栃木大会14位から大きく躍進しました。

17日に行われた閉会式では、大会成績発表が行われ、総合成績上位の選手団には大会会長より表彰状が、式典に御臨席の佳子内親王殿下からは天皇杯・皇后杯が授与されました。
藤江文部科学審議官からは、当日出席できなかったスポーツ庁の室伏長官からのメッセージが代読されました。
「国内最高峰の総合競技大会として国民の皆さまから永く親しまれてきた国民体育大会は、来年、国民スポーツ大会へと新しく生まれ変わります。今回のかごしま国体は、まさに新しい未来へバトンをつなぐ特別な役割を担っている大変意義のある大会となりました」。
炬火は28〜30日に行われる全国障害者スポーツ大会へと引き継がれるとともに、塩田康一鹿児島県知事からSAGA2024開催地の山口祥義佐賀県知事へと大会旗が手渡され、無事に大会のバトンタッチが執り行われました。

室伏長官のメッセージを代読する藤江文部科学審議官/来年開催の佐賀県知事、大会会長、鹿児島県知事(写真左より)によって、大会のバトンタッチが行われた:イメージ(写真)室伏長官のメッセージを代読する藤江文部科学審議官/来年開催の佐賀県知事、大会会長、鹿児島県知事(写真左より)によって、大会のバトンタッチが行われた

炬火が国体から全国障害者スポーツ大会へ引き継がれた/選手団退場では観客から惜しみない拍手と声援が続いた:イメージ(写真)炬火が国体から全国障害者スポーツ大会へ引き継がれた/選手団退場では観客から惜しみない拍手と声援が続いた

「燃ゆる感動 かごしま国体」開催にかけた県民の想い

特別国体「燃ゆる感動 かごしま国体」を終えて、大会実行委員会の運営を担った鹿児島県国体・全国障害者スポーツ大会局の千代森修一局長に、大会についてお話を伺いました。

鹿児島県国体・全国障害者スポーツ大会局の千代森修一局長:イメージ(写真)鹿児島県国体・全国障害者スポーツ大会局の千代森修一局長

本来、2020年に予定されていた「かごしま国体」でしたが、開催中止から今回の開催までの経緯はどのようなものだったのでしょうか?
「かごしま国体」は、新型コロナウイルス感染症の影響により残念ながら中止となってしまいました。しかし、スポーツ庁、日本スポーツ協会、佐賀県や滋賀県などの後催県の皆様方に、多大なご理解・ご協力をいただき、本年に無事に開催することができました。延期に当たってご尽力いただいた皆様に改めてお礼を申し上げたいと思います。中止となってしまった際は、選手をはじめ多くの県民が残念な思いをしました。それでも県一丸となって全力で選手の強化や機運の再醸成に取り組んできました。
「かごしま国体」では、どのように「鹿児島らしさ」をアピールしましたか?
鹿児島には、世界自然遺産に登録されている屋久島、奄美大島、徳之島をはじめとする多様で豊かな自然や、昨年10月に開催された第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会で2大会連続となる「和牛日本一」に輝いた鹿児島黒牛をはじめ、黒豚、鰻、鰹節、ブリ、カンパチ、お茶、本格焼酎など世界に誇れる食、優れた県産品の数々、そして個性ある歴史や文化など多くの「宝物」を有していました。こうした「宝物」を、県、市町村、民間事業所や地域の方々がさまざまな形でPRしました。また家庭レベルでも県内外から集まった選手を手料理でもてなすなど市民レベルの交流もありました。
コロナ禍から学んだことはありましたか?
「かごしま国体」は、まさに「コロナ禍からの再生と飛躍」を象徴した大会にしたいと願っていました。国体に参加した多くの選手や監督、応援してくださる観客の皆さんを見て、何の制限もなく、スポーツを心おきなくできることの素晴らしさを再認識することができました。県民はもとより、全国の皆様にとっても素晴らしい、思い出に残る希望に満ちた大会になったのではないでしょうか。そして、来年開催される「SAGA2024 国スポ・全障スポ」に素晴らしい形でバトンタッチができたと考えています。
今後、鹿児島県における「スポーツ」の位置付けは、どのように変わっていくと思いますか?
「燃ゆる感動 かごしま国体」での鹿児島県選手の活躍が、多くの県民に自信と誇りと感動を届けるとともに、県民の一体感、連帯感を高め、郷土愛を培うことにもつながったと考えています。国体には数多くのボランティアにも協力してもらい、競技ボランティアには高校生・大学生が数多く参加しました。彼らも自ら競技者で、ボランティアとして大会を支えながら、最高峰の舞台を間近で見る貴重な体験ができたようです。若い人が大会レガシーを引き継ぎ、今後、国体の経験を自らの競技に活かしながら、県内のスポーツ界を活性化してくれると思います。
鹿児島県としては、「かごしま国体」を一過性のスポーツイベントに終わらせず、国体開催を契機として整備された競技施設等を活用し、県民の積極的なスポーツ参加の促進やスポーツ水準の向上など、広くスポーツを普及・振興する機会にしたいと考えています。そして、県民の誰もが、それぞれの関心や適性に応じて、生涯にわたりスポーツに親しむことができるようになればと思います。

開・閉会式の会場となった白波スタジアム/競技ボランティアには多くの学生が参加:イメージ(写真)開・閉会式の会場となった白波スタジアム/競技ボランティアには多くの学生が参加

まとめ

「燃ゆる感動 かごしま国体」は、中止を乗り越え、開催までの道のりは大変な労力を要したと思われます。それだけに“コロナ禍からの再生と飛躍”に向けて県民が一丸となれた大会だったのではないでしょうか。鹿児島県は今回の国体で得た大会レガシーを活かし、県内スポーツ界のさらなる発展、スポーツによる健康づくりなどに向けて躍進していくことでしょう。

●本記事は以下の資料を参照しています

燃ゆる感動かごしま国体・かごしま大会(2023-11-01閲覧)

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