スポーツと医療の連携促進に向けて日本医師会と未来を語る

スポーツと医療の連携促進に向けて日本医師会と未来を語る

2022年6月15日、室伏スポーツ庁長官は日本医師会より「運動・健康スポーツ施策に関する提言書」を受けました。この提言書は、スポーツと医療との連携を促進し、スポーツ医科学を基にした正しいスポーツの習慣化を国民に広げるため、3つの提言が掲げられました。今回、提言書の手交に伴い、日本医師会常任理事の羽鳥裕先生、同会運動・健康スポーツ医学委員会委員長 の津下一代先生と、室伏長官が、今後のスポーツと医療の連携について意見交換をしました。
※文中の肩書は当時のもの。

運動・スポーツに対する医療の関わりが重要に

今回の「運動・健康スポーツ施策に関する提言書」についてご紹介します。新型コロナウイルス感染症の影響で在宅時間が長くなり、運動の医学的効果があらためて見直されています。また疾病に対する運動療法の知見も大きく様変わりし、これまで運動が禁忌とされてきた疾病にも、運動が有効となるエビデンスが集積されてきています。

人生100年時代の生涯にわたる健康づくりのためには多方面の関係者が連携していくことが不可欠であり、運動に対する医療の関わりも重要になることから、今回、日本医師会からスポーツ庁への提言が行われました。

文中の提言書では以下の3点があげられています。

  1. 地域の運動に関連する施設や医療者、指導者等の情報を見える化した「運動関連資源マップ」を展開し、運動実施者と運動環境(場)・専門家(人)のマッチングを推進する。
  2. スポーツを通じた健康増進をめざし、スポーツ庁の「運動・スポーツ習慣化促進事業」において医療分野との連携を強化する。
  3. 科学的根拠に基づいて、安全かつ効率的なスポーツの実施が推進されるよう、スポーツと健康・医療に関する研究を推進するとともに、スポーツを行うことが生活習慣の一部となり、医学的支援が必要な方も含め、一人でも多くの方が安心してスポーツに親しむ社会が実現するように、スポーツ庁の「Sport in Life 推進プロジェクト」を推進する。

日本医師会の羽鳥裕先生と津下一代先生:イメージ右より日本医師会の羽鳥裕先生と津下一代先生

提言書を受け取った室伏長官は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、選手村のポリクリニック(総合診療所)で運動・スポーツと医療が連携したすばらしい取組がありました。運動・スポーツは心と体の健康に寄与できるものだと思いますので、引き続き医師会の先生方やスポーツ関係団体が一体となって取り組んでまいりたいと思います」とコメント。

室伏スポーツ庁長官:イメージ室伏スポーツ庁長官

医師にはスポーツ関係者と対話できる知識が必要

提言書手交のあと、長官は羽鳥裕先生、津下一代先生と、スポーツと医療分野の連携について意見交換を行いました。

「最近は年齢に関係なく運動・スポーツを行う方が増え、マスターズの大会が盛んですが、昔の体型と変わっていることや、体重が若い時から20㎏も増えていることを忘れてしまい、ケガをされる方がいます。」と津下一代先生。

「スポーツをするにも運動器が大切で、時には、運動器に問題がないか医師の判断を仰ぐことも必要です。正しく体を動かす運動が大事」と室伏長官。

「ケガをしないための運動ですね。人間が幸せだと感じるためには、どんな年代の人でも健康であることが一番です。健康を維持する、病気を予防するためには体を動かすことが重要だと思います」と羽鳥裕先生。

意見交換を行う様子:イメージ意見交換を行う様子

意見交換では、日本医師会運動・健康スポーツ医学委員会が会長諮問「運動を健康維持に役立てる具体的な方策―関係者の連携推進と臨床に役立つテキストの検討―」を受けて、約2年間にわたり検討を重ねて取りまとめた「健康スポーツ医学実践ガイド 多職種連携のすゝめ(※)」についても話題が及びました。同ガイドは、運動の医学的効果が見直され、疾病に対する運動療法の知見が様変わりしてきたことを背景に企画され、疾患やライフステージ別に運動・スポーツを健康づくりに役立てる具体的な方策など、健康スポーツに関することが網羅されています。

「健康スポーツ医等の医師は、スポーツ大会などの救護を頼まれることも多いので、医師もスポーツの用語を知らないとスポーツ指導者や関係者と会話がうまくできないことがあります。したがって、同ガイドにはスポーツの場で最低限必要なスポーツに関する知識が書かれています。また、健康スポーツ医の活動についても紹介されており、医師だけでなく、健康運動指導士や理学療法士など運動・スポーツ指導に当たる方々にもぜひ読んでほしいです」と羽鳥裕先生と津下一代先生が話すと、室伏長官は「先ほど、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村のポリクリニック(総合診療所)の話をしましたが、医療とスポーツの連携はなくてはならないものになってきていると思いますし、もっと広まるように取り組んでいきたいと思います」と語りました。

※日本医師会 - 健康スポーツ医学実践ガイド
https://www.med.or.jp/doctor/ssi/sports_info/004543.html

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響で、身体不活動になった方が増え、健康二次被害が懸念される中、運動・スポーツの医学的効果が改めて見直されています。自己免疫力を高めることや、生活習慣病の予防や改善、膝や腰の痛みの解消など、運動・スポーツの重要性が高まってきています。誰もが安心して安全かつ効果的な運動・スポーツを楽しめる環境確保のためには、医師・医療関係者と、運動・スポーツに携わる人たちが連携することが鍵となります。

スポーツ庁では、医療とスポーツの連携を推進するために、地方公共団体における取組支援や、運動・スポーツ関連資源マップの構築に向けた取組を行っています。

●本記事は以下の資料を参照しています

運動・スポーツ関連資源マップ構築に向けたアンケート調査 報告書(2022-08-19閲覧)
スポーツ庁ホームページ スポーツによる地域活性化推進事業(運動・スポーツ習慣化促進事業) 取組事例(2022-07-01閲覧)
「パーソナル筋力トレーニング」でのけがや体調不良に注意!-コロナ禍でより高まる健康志向や運動不足解消の意外な落とし穴!?- (kokusen.go.jp)(2022-07-01閲覧)

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