スポーツの力を活かせ! 地域活性化のカギは「地域スポーツコミッション」

スポーツの力を活かせ! 地域活性化のカギは「地域スポーツコミッション」

皆さんは「地域スポーツコミッション」をご存知でしょうか? その役割は地域によって異なりますが、スポーツによる“まちづくり”にとって重要な存在です。デポルターレでも「スポまち!長官表彰」や「スタジアム・アリーナ」などの記事に「地域スポーツコミッション」の存在は登場しています。今回、茨城県笠間市の事例を紹介しながら「地域スポーツコミッション」について解説したいと思います。

地域スポーツコミッションとは?

地域スポーツコミッション(地域SC)とは、地域の様々な社会課題をスポーツの力を活用して解決する取組、すなわち「スポーツによるまちづくり」の取組を促進・支援するための組織をいいます。スポーツと地域資源(景観・環境・文化など)を掛け合わせ、戦略的に活用することで“まちづくり”や地域活性化につなげる取組を推進するネットワークとなります。地方公共団体・スポーツ団体・民間企業・大学などが一体となっているのが特徴です。多くは自治体、観光協会、統合型クラブなどが事務局を担っています。

地域SCが担当する役割や活動は地域によって異なりますが、「住民向け活動」「対交流人口向け活動」の2つに大別することができます。

■住民向け活動

  • 地域住民が幅広いスポーツ活動に参加できるように地域スポーツ教室や運動プログラムを提供
  • 地域のスポーツ施設や公共の運動施設を管理
  • 住民がスポーツにアクセスできるようバリアフリーな環境を提供
  • スポーツの重要性を広く普及・啓発、健康促進を推進

■対交流人口向け活動

  • スポーツイベントや大会を企画・開催し、地域コミュニティの活性化と賑わいを創出
  • スポーツツーリズムやスポーツ合宿など地域のスポーツ資源を活かして交流人口の拡大を推進

ネットワーク:「地域スポーツコミッション」(総称):図

スポーツの力を活用して地域課題(住民の健康、高齢化・少子化、過疎化、経済衰退)を解決する取組を担う存在が「地域SC」となります。

地域SCの設置数は年々増加に推移しており、東京2020大会を起爆剤にさらに増え、2022年10月の時点で195の設置が確認されています。スポーツ庁では、こうした地域SCの設立支援に加え、次のフェーズとなる「質の向上」に向け、運営の基盤となる人材の育成に向けたサポートや持続性確保のため事業多角化支援に注力しています。

地域によって形態と活動内容が異なる地域SCですが、実際にコミッションがどのような活動を行っているのか茨城県笠間市の「笠間スポーツコミッション」の活動を例に紹介します。

アーバンスポーツを中心としたスポーツと地域資産を活かした“まちづくり”へ

【コミッション概要】

笠間スポーツコミッション(以下、笠間SC)は、2021年に、笠間市とスポーツ団体・民間企業等の構成機関により、スポーツを活かしたまちづくりを推進するため、新たな公民連携機関として設立。笠間市教育委員会教育部生涯学習課スポーツ振興室が事務局として活動していましたが、2022年8月に「一般社団法人 笠間スポーツコミッション」として独立しました。笠間市内のスポーツ資源を活用した大会誘致、スポーツ教室などを展開し、スポーツ振興および地域活性化に取り組んでいます。

【主な取組例】

①スポーツイベントの誘致・支援
笠間SCの特徴として、アーバンスポーツ(スケートボード、BMX、ブレイキンなど)を中心とした取組を推進。カテゴリーの異なる各種スケートボード大会、イベント、合宿の誘致・支援を行っています。
2023年、県内最大規模のブレイキン大会『Breakin' 1on1 Battle KASAMA-舞闘炎- Vol.01』を開催。ブレイキンはパリ2024オリンピック大会で正式種目に採用されたダンス競技ということもあり大いに注目されました。参加人数は個人と県選抜チーム含め141名、各部門で熱いバトルが繰り広げられました。
2022年に『茨城県知事杯スケートボード大会』を開催し、市内外の中学生までの選手たちが技を競い合いながら交流を深めています。2023年には第2回も開催されました。
アーバンスポーツ以外でも『かさま陶芸の里 ハーフマラソン大会』を定期的に開催。2023年で第18回を数えます。陶芸で知られる笠間市の伝統文化、豊かな自然とハーフマラソンを組み合わせた地域の特色を活かした大会となっています。

2023年に開催されたブレイキン大会『Breakin' 1on1 Battle KASAMA-舞闘炎- Vol.01』:イメージ(写真)2023年に開催されたブレイキン大会『Breakin' 1on1 Battle KASAMA-舞闘炎- Vol.01』

②スポーツツーリズム
そのほか、モニターツアー等を通じた付加価値のある「スポーツツーリズム」の造成、既存地域資源の魅力の掘り起こしを行っています。
2023年には、笠間市と縁が深い合気道の体験を中心に、居合道体験、江戸時代から続く笠間焼を作る陶芸体験などを行う武道ツーリズムを開催しました。
③スポーツを通じた地域活性化
アーバンスポーツに力を入れている笠間SCでは地域におけるスケートボードの普及啓発による裾野拡大、マナーアップに努め、代表クラスの選手輩出によりローカルアイデンティティの形成を目指します。またBMX親子教室など家族でスポーツ体験ができる機会も創出しています。

まとめ

スポーツによる“まちづくり”を推進していくうえで、地域SCの役割が重要だということがわかります。しかし継続的に地域SCの経営の安定や運営を担う基盤人材の育成・確保(質的な向上)を行うことが今後の課題とされています。スポーツ庁では「スポーツによる地域活性化・まちづくり担い手育成総合支援事業」にて、①新たな事業展開へのチャレンジ等をモデル的に支援、②人材育成サポートや人材確保に向けたマッチングの実証を促進しています。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 【担い手】「地域スポーツコミッション」の設立・活動の支援(スポーツツーリズム関連)(2024-01-01閲覧)
スポーツ庁 - 令和5年度「スポーツによる地域活性化・まちづくり担い手育成総合支援事業」の公募について(2024-01-01閲覧)
笠間スポーツコミッション(2024-01-01閲覧)

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