スポーツツーリズムモデル事業による新たな価値創出〜モデル事例紹介

スポーツツーリズムモデル事業による新たな価値創出〜モデル事例紹介

スポーツ体験や観戦をアクティブに楽しみながら各地域の魅力を満喫する「スポーツツーリズム」。スポーツ庁では、スポーツツーリズムを通じた交流人口の拡大による地方創生・まちづくりを推進するため、高付加価値コンテンツの創出に向けた取組をモデル的に支援しています。
スポーツ庁事業において、日本の特色ある自然・文化等を活かした、国内外旅行者から選ばれるスポーツツーリズムのテーマから、重点分野である「武道」と、「アウトドアスポーツ」の取組をご紹介します。

自然と歴史が織りなす熊野古道で合気道を学ぶ

●和歌山県田辺市/武道ツーリズム事例

合気道は、現在約140の国と地域で広まり、日本のみならず世界中に数多くの愛好家がいます。相手の力を利用して技をかけ、調和と円滑な動きを重視する武道で、年齢や性別などを超えて共に稽古を重ねています。合気道創始者の植芝盛平(うえしば・もりへい)氏は様々な武術遍歴と精神的修養を重ね、独自の武術「合気道」を創始しました。植芝盛平氏は田辺市の出身で、熊野界隈は合気道創始者生誕の地として愛好家たちから知られています。

取り組みの概要

今回、企画された武道ツーリズムは、合気道創始者生誕の地で行われた「合気道と熊野古道体験2泊3日 プラン」です。合気道と熊野古道ウォークの両方を体験できるツアーとなっています。今回の武道ツーリズム事業では田辺市・民間事業者・合気道関係者の3者が連携して企画・運営を行いました。合気道関係者の協力のもと、本格的な合気道体験をさらに高付加価値体験へと昇華させ、加えて豊かな自然、歴史的名所、地元食材による料理など、地域資産を活用したツアー内容となっています。

第1回モニターツアーは、2022年10月25〜27日(2泊3日)に開催されました。モニター参加者は4名で、欧米人3名(イギリス・フランス・ポーランド)、フランス語圏のトップエージェントを招請。ツアー内容は、合気道体験・熊野古道ウォーク・アグリツーリズム(農場や農村で楽しむ滞在型の休暇スタイル)で構成されています。ガイドを合気道精通者と熊野古道精通者に分け、より精度の高いガイディング設計を心がけ移動はすべてチャータータクシーによる富裕層向けのサービスを採用しました。

ツアー参加者の感想は全員が満足したという評価でした。「合気道創始者生誕の地である和歌山で実際に合気道の練習ができることは、エキサイティングな体験を求めている旅行者にとって大きな魅力」「森の中を歩くパートと、地元の方の生活が垣間みえるような道を歩くパートと、熊野古道の色々な面が体験できて、非常にバランスが良かった」などの感想がありました。

自然と歴史が織りなす熊野古道で合気道を学ぶ:イメージ

総括・今後の展望

モニターツアー実施を終えた主催からのコメント。

「合気道ツーリズムの肝である合気道関係者の合意形成を入念に進めました。田辺市側の合気道関係者らとの事業進捗ごとの合意確認と同時に、合気道精通者でもありガイド、さらに本事のスーパーバイザー役でもあるレオポール・ダアン氏による体験の質と外国人目線での設計による合気道体験の高付加価値体験へと仕立てました。
こうした関係者を巻き込んだ事業進行スキームとし、合気道体験・ツアーが、田辺関係者にとっても経済活動の一環として将来的な進行を円滑に行えるよう環境整備と合意形成を入念に実施しました。
2025年大阪・関西万博を大きな直近目標に据え、合気道をフックとした田辺誘客の選択肢を増やし、少人数・プライベート体験だけでなく教育旅行への誘導も市と民間が一体となり進めていきたいと思います。
地元の人が地域の誇りと感じるものには旅行者の目にも独自の魅力や本物の価値と捉える力を持ちます。こういった普遍的な価値をより浮き彫りにするためにもさらなる連携・前進を促進していきます」。

岩木川に沿ったニュースタイルのトライアスロン

●青森県/アウトドアツーリズム

トレッキング・カヤック・サイクリングを合わせたアクティビティを「ライトトライアスロン」として定義し、青森県にある岩木川を舞台に「ライトトライアスロン」の可能性を検証しました。本事業では、岩木川の源流である白神山地から河口である十三湖まで、「ライトトライアスロン」で縦走し、途中、青森の日常的生活であるリンゴ畑の中での非日常体験を織り込んだアドベンチャーツーリズムとなっています。

取り組みの概要

岩木川は、青森県中西部を流れる一級河川で岩木川水系の本流となり、中流域はリンゴの特産地として知られています。今回、岩木川という自然資源を活かし別々の観光コンテンツをつなげていくツアーを企画。普段は眺めることしかない場所をサイクリングで移動し、湖ではカヤックで自然を体験しながら別の角度から楽しめます。世界自然遺産・白神山地をはじめとする岩木川沿の美しい風景がより身近に感じられる特別な体験です。途中、リンゴ畑で青空レストランを開催し、青森の地元料理を提供します。
ツアーは岩木川流域合計100キロ以上を移動する広域周遊です。地元事業者が提供するコンテンツやサービスを最大限に活用し、地域一体となってツーリストをお迎えします。

ツアーのターゲットは、①健康志向が高く、アウトドアに関心を持っている台湾人、②アドベンチャーツーリズムに関心を持っている欧米豪人。いずれも30代〜50代、ある程度消費力を持っている中間層以上の方を想定しています。モニターツアーは2回開催。第1回目は2023年9月18〜21日(3泊4日)で台湾からの訪日観光客6名、第2回目は2023年10月4〜7日(3泊4日)で日本在住欧米人4名が参加しました。
白神山地からトレッキング〜サイクリングで美山湖に移動し、湖でカヤッキング。そのあとは自転車やカヤックで各ポイントに移動しながらヨガ体験などを楽しみました。

総括・今後の展望

モニターツアーでは天候不良により予定変更がありましたが、ツアー参加者からは満足度の高い評価を得ることができました。
今回、サスティナブルツーリズム(レスポンシブル・ツーリズム)を強く意識し、使い捨て製品は用意せず、地産地消による地域経済とCO2排出削減への貢献を心がけました。また地元食材を使用した料理、地元に所縁があって馴染み深い料理など、地域の食文化を意識しました。
また、“日本らしいスポーツホスピタリティ”として、コミュニケーションとおもてなしが上手なガイドを起用したり、気軽に地域住民やほかの観光客と交流できる環境を整えたり、地域交流に注力しました。今後も地域住民にとっての日常的生活を自然に体験できる環境を用意し、ハードなアクティビティではなく、あまり負担にならないアクティビティを繋げ、スポーツを通じて地域の魅力を知っていただけるよう、サポート体制を構築していく予定です。

岩木川に沿ったニュースタイルのトライアスロン:イメージ1

岩木川に沿ったニュースタイルのトライアスロン:イメージ2

まとめ

スポーツツーリズムは、スポーツを通じて観光資源の創出、地域資源の掘り起こしを促し、地方誘客による交流人口の拡大、幅広い関連産業の活性化や関連消費の拡大など地域活性化に大きく寄与するポテンシャルを持っています。
スポーツ庁では、第3期スポーツ基本計画で全国各地が「スポーツによる地方創生、まちづくり」に取り組み、それらを将来にわたって継続させ、各地に定着・促進することを掲げています。スポーツの可能性と地元にある地域資源を見直すことで、新たな糸口が見えてくるかもしれません。スポーツツーリズムに興味のある自治体やスポーツ団体は、ぜひ検討してみてください。

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●本記事は以下の資料を参照しています

JAPAN SPORT TOURISMホームページ(2024-01-01閲覧)

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