室伏長官が東川町で成果報告!スポーツを通じた健康な地域づくり
(写真)前列の左より、鈴木岳.代表取締役、室伏長官、金岡恒治教授
2024年2月16日、室伏長官が北海道東川町の「東川町共生プラザそらいろ」で町民に向けて講演を行いました。本講演会では室伏広治スポーツ庁長官、金岡恒治教授(早稲田大学 スポーツ科学学術院)、鈴木岳.代表(R-Body株式会社)が登壇され、事業の成果報告に加え、国民のライフパフォーマンスの向上に向けたこれからの取組などについてお話いただきました。講演会を聴講しに来た人たちの中には腰痛予防プログラムに参加した人もおり、町民を前に、長官はどのような講演を行ったのかレポートしていきます。
当日の講演の模様は、スポーツ庁公式YouTubeでも動画公開しています。
https://youtu.be/HyLpEniN2vc
ライフパフォーマンス向上を目指した“東川町の実証研究”について語る
東川町では、2023年4月より、スポーツ庁が推進するSport in Life推進プロジェクト「コンディショニングに関する研究」の運動器機能低下に対する地域における効果的な運動療法のあり方に関する研究の一環として、18歳以上の成人男女76名を対象に腰痛予防プログラムを実施し、その介入の効果が検証されました。今回の成果報告会には、昨年4月のキックオフセミナーでも登壇した室伏長官、金岡恒治教授、鈴木岳.代表取締役の3人が、再び集まり、令和5年度に実施した実証研究を振り返りながらライフパフォーマンスの向上について語ってくれました。
これからも食事をするように運動を継続
●金岡恒治教授(講演より一部抜粋要約)
私が日本代表の水泳選手をサポートした際、2002年の時点では日本代表選手の3割が腰痛を持っていました。この腰痛を減らそうということで、2008年頃からモーターコントロールエクササイズ(運動・姿勢を制御する能力を向上させるためのトレーニング)を中心としたエクササイズを重点的に行ったところ、2016年には腰痛者が1割まで減少しました。
東京2020大会では運動器(身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称)に障害や問題がある人に対して「運動機能」を高めることで問題となる症状を減らすことに取り組みました。
東京2020大会のレガシーとして、トップアスリートに対して行ったコンディショニングの方法を一般国民にも応用していくために、今回「運動機能低下に対する地域における効果的な運動療法のあり方に関する研究」というテーマで、東川町の皆さんに運動介入をさせていただきました。
今回の調査ではエクササイズを3カ月間続けていただいたのですが、参加者76名のうち88%の方に継続していただきました。継続率が88%というのはとても素晴らしい数字です。おそらく、この会場である「東川町共生プラザそらいろ」で、スケジュールが決まっていて、教えてくれる顔なじみトレーナーがいるという環境が、エクササイズを習慣化させ、継続率を支えた要素だと思います。
今回の調査では多くの方が、エクササイズによって、自分で自分の体を動かすことができる、自分の持っている能力を最大限に出せるようになったといったことが数値から見ても分かります。自分の体の機能を今後もキープするために定期的に続けた方がいいと思いますので、食事をするのと同じように運動をしていきましょう。この実証研究で終わりではなく、これが始まりというように感じます。
町民一人ひとりが“健康な街づくりの主人公”
●鈴木岳.代表取締役(講演より一部抜粋要約)
この3年間、体を整える方法を知った東川町の皆さんとこれまであったことを思い出していただく時間になればと思います。私たちR-bodyの始まりはソチ2014年冬季大会のスノーボード銀メダリスト・竹内智香選手のサポートからです。私たちは「本物を身近に」をコンセプトに、長官の言葉をお借りすると「ハイパフォーマンスをライフパフォーマンスに」、トップアスリートが培ってきた知見を一般の方々にも広めていこうと活動を始めました。3年前から東川町のオフィシャルパートナーとして関わらせていただき、弊社トレーナー2名が町に移住してコンディショニングが行いやすい環境を整備し、皆さんのコミュニティの中に溶け込みながらコンディショニングの啓発活動に努めてきました。これを今回初めて「東川コンディショニング」という言葉で言い表します。
私の方から東川町に2つのご提案をさせていただきました。1つ目は“学校教育の中にコンディショニング”を入れていただくことです。現在、弊社トレーナーが小学校に赴いてコンディショニングの授業をさせていただいています。2つ目は町の“アイコンとなる施設”を造っていただくこと。それが昨年10月にオープンした「東川町共生プラザそらいろ」です。隈研吾氏が設計した素敵な建物で2階のコンディショニング施設には多くの利用者が訪れています。
そして、皆さんの健康を促進する「東川コンディショニング」を、より多くの方々に広める「ライフパフォーマンス室」という部署が役場の中にできたことも素晴らしいと思います。東川コンディショニングでは、町民の皆さんが“健康な街づくりの主人公”です。引き続き皆さんと一緒に「世界一健康なまち東川町」を目指していきましょう。
運動・スポーツを通じて潜在的な身体能力を開拓し、ライフパフォーマンスを高める
●室伏長官(講演より一部抜粋要約)
スポーツ界ではトップアスリートや競技ごとにさまざまなコンディショニング方法を持っています。スポーツ庁では、ハイパフォーマンスで得られた知見を一般の方々のライフパフォーマンスに還元していこうと取り組んでいます。私としては逆にライフパフォーマンスからハイパフォーマンスへという流れがあっても良いかと思っています。
例えば東川町では冬には雪で覆われますが、雪の中で走ることは、たぶん普通のウォーキングよりも体力を使いますから、アスリートにもライフパフォーマンスを取り入れることも大事かなと思います。
スポーツは、競技を行うことだけではなく、潜在的な身体能力を開拓するものだと思います。障害の有無に関わらず、若い方も高齢の方でもそれぞれに見合った能力を開拓できるはずですし、そこに希望を見出せるのが“スポーツ”だと思います。
人間には何かしら“運動をしたい”という運動欲求があるはずです。運動欲求を豊かに高めていくことがライフパフォーマンスの向上にも繋がっていくのではないかと考えています。また運動欲求が高まると、「何か買いたい、何か食べたい」など消費欲求や行動を起こすきっかけが増えることに加え、「プレゼンティーイズム」にも大きく影響を与えます。
今回の実証研究から貴重なエビデンスが取れたことは大変意義があり、他の自治体にも広がっていくように我々も努めていきたいと思います。継続的に運動を実施していただきました町民の皆さん、本当にありがとうございました。
「ライフパフォーマンスの向上」とは:それぞれのライフステージにおいて最高の能力が発揮できる状態
○ライフパフォーマンスの向上に向けた目的を持った運動・スポーツの推進について
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/001_index/bunkabukai002/toushin/1420006_00001.htm
(写真)成果報告会には数多くの町民が訪れた
まとめ〜成果報告会を終えた室伏長官のコメント
東川町で行われた運動器障害の一次予防介入の効果検証において、参加者の88%の方が継続していただいたことが驚きでしたし、今回得られた金岡教授の調査結果はエビデンスとしての効果を充分に示せたと思います。継続の理由はトレーニングを行い、自分自身の変化を感じたことに加えて、東川町ではスポーツ主管課と健康主管課が一体となり、町長をはじめ自治体がリーダーシップを発揮して環境整備を行ったことも大きいと思います。東川町モデルとして全国に展開していくには行政の首長さんのリーダーシップが重要になってくるかもしれません。日常を健康で元気に過ごせるように運動を行うことによって心身の機能に加えて、プレゼンティーイズムも改善することが分かり、スポーツ庁ではこれからもスポーツによるライフパフォーマンスの向上を目指して取り組んでいきたいと思います。
●本記事は以下の資料を参照しています
国民のライフパフォーマンスの向上に向けてスポーツを通じた健康なまちづくり~世界一健康なまち東川町~(2024-03-01閲覧)
スポーツ庁 - 「国民のライフパフォーマンスの向上に向けて スポーツを通じた健康な地域づくり」成果報告会について(2024-03-01閲覧)