地域版SOIPデモデイ2022受賞紹介①ヴォレアス北海道×playground

地域版SOIPデモデイ2022受賞紹介①ヴォレアス北海道×playground

スポーツ庁ではスポーツを核とした地域活性化の実現に向け、地域におけるスポーツオープンイノベーションプラットフォーム、通称SOIP(ソイップ)の構築を目指す「地域版SOIP」を推進し、地域に根差したスポーツチーム・団体と他産業界との連携による新規事業の創出を支援しています。今年度は北海道、甲信越・北陸、東海の3地域を拠点とするスポーツチーム・団体とともに、スポーツ産業の新たな未来をつくるパートナー企業を募集。10プロジェクト(以下、PJT)が採択され、アクセラレーションプログラム「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD」を通して事業アイデアのブラッシュアップが進められました。

2023年3月1日には地域版SOIPの成果発表会(デモデイ)「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD 2022 DEMODAY」が開催され、地域版SOIPを体現していると評価されたチームに対し、「審査員特別賞」「オーディエンス賞」の2賞の授与が行われました。今回、オーディエンス賞を受賞された北海道旭川市を拠点とするプロバレーボールチーム「ヴォレアス北海道」とスポーツ・エンタメ企業のDXとWeb3化を展開する会社「playground」による取り組みについて紹介します。

「地域×スポーツ×推し活」〜チームへの推し活動を街の誇りへと繋げていく

本プロジェクトは、ヴォレアス北海道とplayground株式会社が旭川市と連携し、チームへの応援=「推し活」を通じて旭川市全体を活性化させていこうという取り組みです。これまで地場のスポーツファンを獲得できているものの旭川市民の1%という状況から、「市民みんなで創っている、旭川の誇り」という存在として、 チーム、ファン、スポンサー、地域全体を巻き込みながら市民から応援される「ヴォレアス北海道のファンダム」の確立を目指します。

ファンダム証明書で広がる「推し活」の楽しさ

2月の実証実験から始められたのは、ファンダム証明書コレクション「DIG VOREAES」です。DIGは英語で「掘り下げる」などを意味し、より深くチームと関わる、チームを「推す」という意味合いが込められています。ヴォレアス北海道では、さまざまな活動に対してデジタルの証明書を発行して、ファンの「推し活」を後押します。ファンは証明書を集め、コレクションする「推し活」を通じて、チームとの関わりをより深く楽しむことができます。

実施サービス:資料

来場の際に電子チケットと連動して自動発行される「来場証明書」をはじめ、会場限定で購入することができる選手たちの活躍が描かれた「ファンダム証明書デラックス版」などの証明書があります。デラックス版では、当日の選手写真を限定で買うことができ、売上の一部はその選手に還元されます。さらに抽選でその選手から「応援ありがとう」というお礼動画のプレゼントされるファンにとっては嬉しい仕組みです。

来場証明書:資料

ファンダム証明書 DX版 販売:資料

証明書はデジタルデータですが、コピーや複製ができない所有証明書付きのデジタルデータ「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」で発行されるので、唯一性が担保されています。そのほかには「グッズ購入証明」「スタッフ遭遇証明」「ブース立ち寄り証明」など、多数のアイデアで発行され、スタッフやスポンサーなど、チームを支える人たちとの交流も促進しました。

+色んな「○○証明書」を発行:資料

また特別な撮影許可を有する「準公式カメラマン」の権利付きのチケットを販売し、撮影された写真は「ファンダム証明書」として公式で販売を行い、ファンにとっては「公式スタッフになれる」という貴重な体験を提供します。普段はできない体験をした参加者からは「満足だった」と好評を得ました。

準公式カメラマンになれるチケット:資料

地域に根差した皆さまから愛されるチームへ

実証実験では、普及には課題があるものの、一度、証明書を取得しはじめたファンは、共にチームを盛り立てようとする共創モードに切り替わることがわかりました。この取り組みについて、ヴォレアス北海道とplayground株式会社は来シーズン以降も継続する方針で合意しました。

今後の展開:資料

今回の実証実験の感想と今後に向けての展望など、ヴォレアス北海道を運営する株式会社VOREASのご担当者にコメントをいただきました。

「ヴォレアスは、これまでも、いち早く世界のトレンドをキャッチし、まず実際の事業を形にしてみる、ということを創設以来取り組んできているチームだという自負があります。その意味では、「推し活」という世の中の潮流をplayground社とともに実証できたことは、大きな前進でした。今後、サポーターの皆さまの「推し」を可視化した「ファンダム証明」が、チケット・グッズ・飲食・スポンサーシップ・放映権などに続くプロスポーツチームの新たな収益の柱になる可能性は、十分にあると思います。今回実証できたように、サポーターの皆さまのあらゆる応援活動が思い出としてアルバムに保管され、それらを肴にしながら、世代を越えてヴォレアスが応援され続け、芯から地域の皆様に愛されるチームで在れるよう、引き続き邁進してまいります。あらためて、今回の企画を形にしてくださった皆さまに感謝申し上げます、本当にありがとうございます。」

地域版SOIPに参加された感想についても伺いました。

「日々事業を行うなかで常々思っているのが、スポーツ・エンターテインメント・ビジネスのマーケットのなかで、ステークホルダー間の情報交換・連携が活発になればなるほど、新しい価値はもっとたくさん、そして早く、生まれてくるのだろうということです。一方、1スポーツチームとして地域に根差して活動していると、なかなか垣根を越えた交流を行うのが難しい側面も、どうしても出てきてしまいます。そういった環境のなかで、国が主導して今回のような企画を開催してくださるのは、業界全体の活性化に寄与すると本当に感じておりますし、SOIPのようなプラットフォームの上で、スポーツ・エンターテインメント・ビジネスの外側にいる方々が少しでもこの業界に注目してくれれば、本来コンテンツに内包されている社会的な価値がもっともっと顕在化してくるのではないかと思います。ヴォレアス、playgroundは、先陣を切って業界をリードしていくぞ!という強い覚悟とともに、これからも挑戦を続けます。そのためにSOIPをフル活用していきますし、そこに続くクラブ・企業がどんどんこの国から生まれ、世界に挑戦し、歴史に残るような場面において日本で生まれたサービスが当たり前のように使われる未来を創っていきます。」

まとめ

「ヴォレアス北海道 × playground」の「推し活」をキーワードとしたプロジェクトはとても興味深い事例でした。「好き」という気持ちを行動として表し、情報発信する側と共創関係を築きたいというファン心理は、スポーツだけではなく、音楽やキャラクター産業などエンターテイメント全般にも当てはまり、「推し活」の可能性を生かしたアイデアだと思います。チームだけではなく、地域も巻き込んだ「推し活」で、地域が元気になっていくのではないでしょうか。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 令和4年度スポーツ産業の成長促進事業「スポーツオープンイノベーション推進事業(地域版SOIPの先進事例形成)」の地域パートナーの公募について(2023-05-01閲覧)
【スポーツ庁】INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD 2022 DEMODAY2023.3.1(Wed)開催(2023-05-01閲覧)

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