“勝つ”ことがすべてじゃない! 多様なニーズに応えるイマドキの部活動「ゆる部活」をレポート

イマドキの部活動「ゆる部活」

近年、女子生徒による運動習慣の二極化傾向や少子化に伴う生徒数や部活動数の減少が見られるなか、新たな部活動の在り方を模索する学校があります。なかでも「ゆる部活」という体力向上や運動の楽しさを実感するための部活が出てきているのです。競技志向の強い、今までの運動部活動とは違うゆる部活は、一体どのような活動をしているのでしょうか。今回は、スポーツ庁の鈴木大地長官が視察した学校の様子をレポートします。

「ゆる部活」のニーズとは?生徒の自発的な「楽しい」を引き出すイマドキの部活動の様子を動画でチェック!

多様なニーズに応えるための「運動部活動ガイドライン」

スポーツ庁が策定した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」では、「子供のニーズを踏まえた環境整備」の重要性が謳われています。強くなりたい子、技術を向上したい子、勝ち上がって全国大会を目指したい子がいる一方で、そこまでストイックには取組めないけれど、気軽に楽しめるなら身体を動かしたいと思っている子も多くいます。運動の得意・不得意にかかわらず、子供たちが楽しめる「居場所」としての部活の需要は、非常に大きいのです。部活そのものの在り方を根本的に見直し、多様性を受け入れる提案がガイドラインには含まれています。

そこで注目したのが、今回紹介する「ゆる部活」などの多様な取組。スポーツは苦手だが身体を動かしたい、メインとなるスポーツにおける競技力向上や身体のメンテナンスのためにさらに運動したいといった、子供たちの多様なニーズに応える新しい部活動です。スポーツ庁が公表した調査結果では、女性の運動実施に二極化が見られており、こうした状況を打破するためにもこの「ゆる部活」が一役買ってくれそうです。

「ゆる部活」が盛んな学校部活動紹介

東京都世田谷区立東深沢中学校 東京都世田谷区立東深沢中学校

実際にゆる部活ではどのような活動が行われているのでしょうか。

1つ目の事例は、東京都世田谷区にある東深沢中学校の「体力向上部」。平日の4日間、始業前の早朝に45分間だけ活動している同部は、7年前につくられました。生徒たちは午前7時過ぎに集合すると、2人1組になって馬跳びをしたり、校庭を走ったり、ハードルを使って足上げをしたりと、顧問の先生の見守るなか、それぞれのペースで身体を動かしていました。

生徒たちは、サッカー部や水泳部、野球部などほかの運動部に所属している子もいれば、民間のクラブチームや、美術部といった文化部に入っている子もいます。過去には、体力向上部で運動の楽しさを知り、ほかの運動部に入部した子もいるそうです。美術部に所属する男子生徒は、「持久力がつき、マラソンでも走れるようになったことで自信がつきました。同時に忍耐力もついたので、絵を描くときにもそれが活きていると感じます。朝が早いのですが、それだけ楽しいしやりがいがあります」と話します。

同じく美術部の女子生徒は、「特に好きなスポーツはないけれど、運動もしたかったので入部しました。強度もちょうどいいし、友達がいるから楽しく続けています」と話し、日頃の運動不足解消になっていると教えてくれました。

多様なニーズに応えるゆる部活の実態を目の当たりにした鈴木長官は、「スポーツをするきっかけは、『誘われたから』というケースが多くあります。こうした部活動は、友人と誘い合って入りやすい雰囲気になっているので、とても素晴らしいと感じました。個々のペースで、あまりやりすぎないようにしながら楽しめているのがいいですね」と、その効果の高さを感じたようです。

東京都練馬区立大泉学園中学校 東京都練馬区立大泉学園中学校

2つ目の事例は、東京都練馬区大泉学園中学校の「レクリエーション部」。水曜日と金曜日の放課後、1時間ほど活動しています。部員数は全校生徒468人中、3学年でなんと110人。その人気の理由を探りました。

この日は、体育館で子供たちのやりたい球技を行うということで前半はバドミントンとバスケットボールの好きなほうを選んで行い、後半は全員でドッジボールをしました。顧問の先生は、「子供の体力低下が叫ばれるなか、こうして運動の機会を設けることで体育での怪我も減り、ひいては生涯スポーツの推進につながると考えています。運動すると気分がよくなり、友達も増えて楽しいものです。それを、子供たちに味わってほしいと思っています」と言います。

実際、子供たちもレクリエーション部の楽しさや効果を実感しているようです。土日はほかのスポーツや習い事に取組んでいる子も多く、週に2回の活動は両立しやすいとのこと。茶道部と兼部している女子生徒は、「活動日がちょうどずれているので、少しでも運動しようと思い入部しました。今は太りやすい時期ですが、レクリエーション部のおかげでそこまで太らずに済んでいます。部員数が多く、他学年の子とコミュニケーションをとれるのも楽しいポイントです」と話していました。

神奈川県立厚木北高校 神奈川県立厚木北高校

最後の事例は、神奈川県厚木市にある厚木北高校の「ヨガ同好会」です。ヨガのインストラクターを外部講師として招き、女子生徒8人で月に1回活動しています。引退がないため、3年生の3月まで参加できるところも魅力です。

外部講師の先生は、「運動の苦手な子が運動をするきっかけになればと思っています。本校には、野球部やサッカー部など強豪の部活も多くあるなか、こうした同好会が運動の苦手な子たちの居場所となり、運動は本来楽しいものなのだと気づいてもらえたらと考えています」と、この同好会の意義を話してくれました。

実際に参加する生徒は、「小学校時代から空手をやっています。ヨガを始めてから、空手でも動きやすくなりました。今は、競技の後のクールダウンにも取入れています」と、ヨガを競技にも活用していると話します。一方で、「ヨガで呼吸法を学んだので、面接の場面で実践したところ、緊張が収まりました」と、心理的な面でヨガが役立ったと教えてくれた生徒もいました。

この日は、鈴木長官も生徒たちに交じってヨガを体験。「普段は使わないところ(筋肉)を使いました。体力だけでなく、心を整えることにもなりますね」と、数十分でヨガの効果を実感しました。

そのほかにも、「軽運動部」「ヨガ・ストレッチ同好会」などのゆる部活は全国に広まっています。視察を通し、鈴木長官は「小さい頃のスポーツ体験は、そのまま大人になってからのスポーツ習慣につながります。その環境づくりは、地域や学校、保護者、そして我々のような大人たちが、責任もって取組むべきことです。身体を酷使し、順位や点数を競い合うだけがスポーツではありません。仲間と楽しい時間を共有するための新たな部活動とその効果を、今後広く伝えていきたいと考えています」と、力強く語りました。

まとめ

スポーツ庁では、改訂された学習指導要領を踏まえ、身体を動かす「楽しさ」や「喜び」を実感してもらえるような、「体育の授業」の改善に向けた取組を進めています。

これは運動部活動においても同様です。多様なニーズを取込み今まで運動から遠ざかっていた子供も含め、すべての子供たちがスポーツに親しむ「居場所」を確保するゆる部活。全国の子供がスポーツに親しむことができ、そして生涯スポーツに親しむことが当たり前になる社会をつくることが、今求められています。

●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています

スポーツ庁 ー 運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(2018-10-01閲覧)(PDF)

関連記事
「嫌い」を「好き」に変えるために~学習指導要領改訂〈小中学校・体育〉~

:前へ

【対談】俳優「志尊 淳」×「鈴木大地」スポーツ庁長官|映画「走れ!T校バスケット部」キャンペーン企画(後編)

次へ:

~「Outdoor Sports Tourism Japan - Feel The Force of Nature」~