知っておきたいスポーツ時の熱中症対策

スポーツ時の熱中症対策について

総務省消防庁の発表によると、2018年に熱中症で救急搬送された人は9万5137人と過去最多となり、特に夏の暑さのピークとなる7月中旬から8月は発生件数が増えることが予想され、いまや熱中症は大きな社会問題となっています。

スポーツの現場では適切な水分補給や活動環境の整備など防止策が行われていますが、万が一、発症した場合、迅速な応急処置が求められます。スポーツ環境における防止と処置を中心に熱中症対策について考えてみましょう。

動画はこちら - 熱中症を予防しよう―知って防ごう熱中症―

熱中症はなぜ起きる?

「熱中症」は、暑熱環境によって生じる障害の総称で、大きく分けて4つの型があります。いずれも体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなる症状を起こし、判断を誤ると死亡に繋がることもあります。

熱失神(血圧低下など)
炎天下にじっとしていたり、立ち上がったりした時、運動後などに起こります。皮膚血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下し、脳に血液を十分に送ることができず、めまいや失神の症状がみられます。

熱けいれん(塩分濃度低下など)
電解質を補給しないまま水分だけを摂取することで血液の塩分濃度が低下。大量の発汗と身体のあちこちの筋肉が痛みとともにけいれんを起こします。

熱疲労(脱水症状など)
大量の発汗や、不十分な水分補給など脱水によるもので、全身倦怠感、脱力感、めまい、吐き気、嘔吐、頭痛などの症状が起きます。

熱射病(発熱・意識障害など)
体温調節が破綻して起こり、高体温と意識障害が特徴。意識障害は、周囲の状況が分からなくなる状態から昏睡まで、程度はさまざま。適切な措置が遅れた場合、高体温から多臓器不全を併発し、死亡率が高くなります。

熱中症を引き起こす条件

人間の身体は、平常時は体温が上がっても汗や皮膚温度が上昇することで体温が外へ逃げる仕組みとなっていますが、暑さによって、それがうまく機能しない状況となり、熱中症を引き起こします。そうした状況を引き起こす条件は、「環境」「からだ」「行動」によるものと考えられます。

環境
気温が高い/湿度が高い/風が弱い/日差しが強い/閉め切った屋内など

からだ
高齢者や乳幼児、肥満の人/糖尿病や精神疾患といった持病/低栄養状態/下痢やインフルエンザでの脱水状態/二日酔いや寝不足といった体調不良など

行動
激しい筋肉運動や、慣れない運動/長時間の屋外作業/水分補給できない状況など、これらの要因が重なることで、熱中症が引き起こされます。

スポーツ活動での熱中症予防

熱中症予防運動指数公益財団法人日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」より作成

「環境」「からだ」「行動」を踏まえながら、スポーツ活動時の熱中症予防を考えてみましょう。

①環境条件を把握し、それに応じた運動、水分補給を行う
暑い時期の運動は、朝や夕方など、なるべく涼しい時間帯にするようにし、休憩を頻繁に入れ、こまめに水分を補給。気温が25~30℃でも湿度が高い場合は注意が必要です。WBGT(※)等により環境温度を測定し、上記の「熱中症予防運動指針」を参考に運動を行います。汗には塩分も含まれているので水分補給は0.1~0.2%程度の食塩水がよいとされ、運動前後の体重減少が2%以内におさまるように補給を行います。激しい運動では、30分に1回の休憩が望ましいとされています。

※WBGT(暑さ指数)=人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標。

体重測定で汗の量を知る公益財団法人日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」より作成

②暑さに徐々に慣らしていく
熱中症は梅雨明けなど急に暑くなった時に多く発生する傾向にあります。また、夏以外でも急に暑くなると熱中症が発生。これは体が暑さに慣れていないためで、急に暑くなった時は運動量を軽くして、1週間程度で徐々に慣らしていきます。

③個人の条件を考慮する
肥満傾向や低体力、暑さに慣れていない人は運動を軽減しましょう。特に肥満傾向の人は熱中症になりやすく、トレーニングの軽減、水分補給、休憩など十分な予防措置をとる必要があります。また、運動前の体調のチェックや運動中の健康観察を行い、下痢、発熱、疲労など体調の悪い者は暑い中で無理に運動をしない、させないようにします。
このほかに、服装は透湿性や通気性に優れた素材のものを選び、帽子で直射日光を防ぐのも有効です。
とにかく具合が悪くなった場合は早めに運動を中止し、適切な応急手当など必要な措置をとりましょう。

屋外だけではない、屋内スポーツやプールでも熱中症対策を!

スポーツ種目別熱中症発生数(2012)独立行政法人日本スポーツ振興センター「体育活動における熱中症予防 調査研究報告書」(2014年3月発行)より作成

熱中症というと屋外スポーツばかりに目を向けがちですが、じつは屋内スポーツでも発生しています。日本スポーツ振興センターが2014年3月に発行した『体育活動における熱中症予防 調査研究報告書』によると、熱中症発生数の割合は屋内スポーツでも27%と決して低い数字ではありません。

発生数の多い競技種目は「バスケットボール」、「バレーボール」で、気流の少ない室内環境で湿度が高く、運動量も多いために脱水症状になりやすい傾向にあります。また防具を着用して熱が逃しにくい「剣道」や、飛球への影響を考えて窓やドアを締め切った条件で練習・試合を行う「バドミントン」なども注意が必要とされています。

屋内スポーツでの熱中症予防対策としては、「窓・扉を開け、換気をよくする」「気流を積極的に設ける」「水分の補給を積極的に行う」ことに気をつけます。

「プール」でも熱中症は発生します。2013年度〜2017年度の5年間で「プール」でも熱中症の発生件数は179件。屋外プールの場合、日光や気温によってプールの水温が上がり、中性水温(33℃~34℃)より高い場合は、水中でじっとしていても体温が上昇します。水中運動は陸上運動より体温は上がりにくいとはいえ、運動強度が高い水泳の特性を考慮する必要があります。また、口腔内が水で濡れるため、のどの渇きを感じにくくなり、水分補給を忘れがちですが、しっかりと水分補給を行わなければいけません。

知っておきたい熱中症対処法

熱中症対策フロー出典:独立行政法人日本スポーツ振興センター「体育・スポーツ活動中の熱中症を予防しよう!!/熱中症対応フロー(先生・顧問向け)」

顔面蒼白で吐き気やめまい、足がもつれたり、ふらついているような熱中症を疑う症状が見られた場合は、以下のような順番で措置を行います。

①意識障害の有無を確認
意識がはっきりしているかどうか、いくつか簡単な質問してみます。問題なく応答するようであれば、涼しい場所へ移動させましょう。もし、この時点で応答が遅かったり、意味不明な応答をしたりしているなら救急車を要請します。

②涼しい場所で措置
クーラーのある室内、風通しの良い木陰など、涼しい場所に移動させ、ズボンのベルト、靴下など衣服をゆるめて寝かせます。首筋、脇の下、足の付け根など太い血管が近くを通っている箇所に冷たいタオルや水、アイスパックをあて、体温を下げる措置を行います。

③水分塩分を補給する
0.1〜0.2%食塩水あるいはスポーツドリンクなどを少しずつ飲ませます。いきなり大量に飲ませると吐き出すこともあるので気をつけましょう。熱けいれんの場合は生理食塩水(0.9%)など濃いめの食塩水を補給します。

この順番で措置を行い、症状改善が見られるか経過観察します。もしも症状改善が見られない場合は、すみやかに医療機関に搬送するようにしましょう。熱中症は迅速に対処することが回復のカギです。少しでも異常がないか、常に選手へ声をかけて確認するように心がけたいものです。

まとめ

7〜8月は、数多くの大きなスポーツ大会が開催される時期です。大会本番に向けて消耗の激しい練習や長時間練習を取り入れたいところですが、気象状況に応じた運動量を心がけることも大切です。スポーツによる熱中症死亡事故は無知と無理によって健康な人に生じます。WBGT計測器は市販もされているので、スポーツ指導者はこまめに状況を確認して熱中症予防運動指針に沿った行動が求められます。

スポーツに限らず、日常生活でも水分補給とこまめな休憩を行い、熱中症を意識しましょう。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 熱中症事故の防止について(依頼)(2019-07-01閲覧)
独立行政法人日本スポーツ振興センター - 熱中症を予防しよう-啓発資料(2019-07-01閲覧)
環境省 - 熱中症予防情報サイト(2019-07-01閲覧)
消防庁 - 平成30年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況(2019-07-01閲覧)(PDF)
公益財団法人日本スポーツ協会 - スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(2019-07-01閲覧)

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