武家文化と武道に触れる「金沢武道ツーリズム」

【スポーツ庁】武道ツーリズム~弓道×茶道×禅 金沢版~ BUDO Tourism Kyudo × Tea ceremony × Zen in Kanazawa

スポーツ庁ではスポーツ体験と観光を掛け合わせた「スポーツツーリズム」を通じて、訪日外国人の増加や地域・経済の活性化を推進しています。

平成30年3月に策定した「スポーツツーリズム需要拡大戦略」では、「アウトドアスポーツツーリズム」と「武道ツーリズム」を新規重点テーマとして掲げました。これまでも徳島県三好市、沖縄県での取組をご紹介してきました。

ラグビーワールドカップという大規模国際スポーツ大会の開催によりスポーツツーリズムが活況を呈している頃、今回の試合開催地ではない「金沢」では、歴史と文化の観光に「武道」を加えたインバウンド向け体験プログラム『金沢版BUDOツーリズム~武家文化のまち「かなざわ」で日本の「心」と「道」を知る』が行われました。

弓道×茶道×禅 〜金沢武道ツーリズム〜

加賀百万石・金沢のイメージ

今回のプログラムは、「金沢文化スポーツコミッション」がラグビーワールドカップ2019™️日本大会で日本を訪れたインバウンドを金沢へ呼び込むために企画し、9月下旬から10月上旬にかけて開催されました。

スポーツの側面と日本的な伝統・精神文化を併せ持つ日本古来の武道の一つ「弓道」を中心として、金沢の伝統工芸が集約された「茶道」、外国人にも認知度の高い「禅」も体験できるのが特徴です。

加賀藩とゆかりの深い弓道

伝統文化が残る金沢では、特に武家の文化が色濃く残り、武道の中でも『弓道』の歴史が深い土地柄。

江戸時代、吉田流大蔵派の始祖であり弓術の名手・吉田大蔵茂氏が弓道全国大会である「京都三十三間堂の通し矢」に藩の名誉を懸けて出場して6度の天下一に。

加賀藩は「弓道」で全国に名を馳せていました。

武道が日本と世界を繋ぐ

体験している外国人観光客

東京オリンピック・パラリンピックではフランス選手団のホストタウンに登録している金沢市は、2020年大会などに訪れるインバウンドを誘致することを目的に活動を進めており、 プログラムを企画した「金沢文化スポーツコミッション」は、「地域コミュニティ・地域経済の活性化」、「文化とスポーツの振興」、「金沢ブランドの醸成・発信」を目的として2018年7月1日に発足。

そしてインバウンドが日本で体験したい「武道」に注目し、今回、加賀藩とゆかりの深い「弓道」を主軸とした金沢版の武道ツーリズムが誕生しました。

金沢文化スポーツコミッション代表の平八郎さんは「2019年〜2021年までゴールデンスポーツイヤーズと言われ、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズ2021関西と国際スポーツ大会が続きます。金沢は会場にはなりませんが、観戦ツアーのインバンドの方たちが数多く訪れることがホテルの予約状況からもわかっています。その期間に合わせて『武道ツーリズム』という新たな体験型の商品を作ることで、『武道』に触れられる機会を用意できれば、外国人や日本人の観光客の皆さんにも喜んでいただけると思います」と語ります。

武道の中で「弓道」が選ばれたのは金沢の歴史的な意味合いも大きいですが、外国人にもわかりやすいスポーツであることも理由の一つかもしれません。

石川県弓道連盟会長・水橋美喜夫さんは「弓道は難しい言葉を使わなくても手ほどきをして、実際に矢をつがえて的に放てます。これは老若男女を問わず、外国人の方であっても同じ楽しみを味わえるスポーツだと思っています」とコメントしています。

体験者からも「実際に手を使って教えてくれたので分かりやすくて良かった」という声もありました。

茶道と鈴木大拙館


今回、ラグビーワールドカップ中に仕掛けたことにより、大会期間中は試合のない金沢でも多くのインバウンドを呼び込みました。同時期に来日していたフランスの旅行代理店などもこの弓道体験に参加し、確かな感触を得たといいます。

金沢版武道ツーリズムは、弓道を別の武道に置き換えたり、茶道や禅体験を工芸体験や美術鑑賞などに変更すれば、他地域での開催も可能といえそうです。来年の2020東京オリンピック・パラリンピックに向けて新たな動きもあるかもしれません。

実際に開催して見えてきたことについて、金沢文化スポーツコミッション代表の平八郎さんはこう語ります。

「体験者はライト層(興味本位で体験してみたい層)が中心になるので、指導レベルをライト層向けからコア層向けまで、いくつかの段階に分ける必要を感じました。また、精神性の高い武道や茶道、禅を伝える言葉の壁を越える必要もあります。他地域で『武道ツーリズム』をお考えであれば、地域の歴史背景を踏まえたストーリー作りは重要ですが、ライト層に対する場合は、可能な限り『見せる・観せる・魅せる』機会を豊富にすることも大切です。練習風景でも良いので、『武道』を見ることができるようにしたり、世界に発信するためにもアニメ素材等を活用することも良いと思います」

まとめ

インバウンドに歴史と伝統文化にあふれた魅力ある土地としてアピールしてきた加賀百万石の「金沢」。これからは「武道」を通じて日本の伝統・精神文化を伝え、新たな観光需要を促す道筋が見えてきたのではないでしょうか。

日本には著名な指導者や聖地とされる地域・施設が多数存在しており、こうした地域資源を活用することで、今後武道ツーリズムの取組は加速していくことでしょう。

日本でしか体験できない武道ツーリズムが、さらなる地域活性化・インバウンド誘客を実現しそうです。

●本記事は以下の資料を参照しています

金沢文化スポーツコミッション - 『金沢版BUDOツーリズム~武家文化のまち「かなざわ」で日本の「心」と「道」を知る』の実施について(2019-12-01閲覧)
スポーツ庁 - 訪日外国人が注目! 日本でしか体験できない「武道ツーリズム」の現場をレポート(2019-12-01閲覧)
スポーツ庁 - 人口3万人に満たない地域が「アウトドアスポーツ」の聖地に! ~自然資源を活かした徳島県三好市のスポーツツーリズム~(2019-12-01閲覧)

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