「運動遊び」で子どもたちが笑顔になる「山梨市ACPクラブ」の活動紹介

「運動遊び」で子どもたちが笑顔になる「山梨市ACPクラブ」の活動紹介

近年、子どもたちの外遊びの機会が減っており、新型コロナウイルス感染拡大によってさらに運動機会が奪われてしまいました。日常的に運動を行う習慣を定着させるべく、子どもたちが楽しみながら積極的に身体を動かせるアクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)が全国的に普及の広がりをみせています。今回、競技性にとらわれず、遊びを通じて子どもたちに多様な運動経験をさせているスポーツ少年団「山梨市ACPクラブ」の取り組みについて紹介します。

天然芝で思い切り身体を動かしながら「運動あそび」を楽しむ子どもたち

山梨県内初の運動遊びクラブとして2017年8月26日に設立された山梨市ACPクラブ。対象は年中児から小学3年生までの子どもたちで、プレ・ゴールデンエイジと呼ばれる運動能力が形成される世代です。山梨市ACPクラブでは「運動遊び」を通じて「走る」「跳ぶ」「投げる」といった基礎的な運動や身体を動かす楽しさを体験できる活動を行っています。

主な活動場所である「芝生エリア」は、クラブ設立の際、安全で安心な活動場所を提供したいという想いから代表者・武井正英さんが私有地の畑に芝生を植えて作ったスペースです。「天然芝は転んでもケガが少なく、子どもたちの身体に負荷がかかりません。みんな喜んで遊んでいます」と武井さんが語るように、子どもたちは芝生の上を元気に走ったり、転がったり、跳ねたり、楽しそうに遊びに興じています。

活動場所である「芝生エリア」は、自らクラブ設立時に地域の協力を得ながら芝を植えた:イメージ活動場所である「芝生エリア」は、自らクラブ設立時に地域の協力を得ながら芝を植えた

指導委員の大村さんに運動遊びの内容をお聞きしたところ、「鬼ごっこ」「大縄跳び」「障害物走行」をはじめ、サッカーやドッヂボールなども競技としてではなく、ごっこ、マネごととして、子どもたちが興味を持ち、飽きないようなアイデアを取り入れながら、さまざまな運動遊びを実践。同じフィールド内でも指導者が分かれて異なる運動メニューを同時に行い、子どもたちが自分の意思で選べるようにも心がけていると言います。
「基本はACPプログラムの指導要領を踏まえながら、その日の子どもたちの様子を見ながら指導者がアレンジを加えています。子どもが自発的にチャレンジしてみたいと思えるような取り組みが、私たちの特長だと思っています」。

天然芝なので思い切り身体を動かしながら運動あそびができる子どもたち:イメージ天然芝なので思い切り身体を動かしながら運動あそびができる子どもたち

運動で身体を鍛え、遊びの中から社会性学ぶクラブの子どもたち

クラブには年齢も性別も学区も違う20〜30人の子どもたちが週1で活動に参加。クラブでは子どもたちに「大事な3つの約束」をお願いしています。

①先生が「話を聞いて」と言ったら、遊びやおしゃべりをやめて、先生の方をむいて話を聞く
②先生や皆が決めたルール(やくそく)は守る
③自分のまわりの友だちも全員で楽しく遊ぶ、嫌なことは言っても言われても嫌

「運動のできる子、運動の嫌いな子、さまざまな子どもがいるので、子ども同士のケンカも起こり、その時はどうしてケンカしたのかを子どもたちとよく話し合います。運動以外にルールを学ぶ機会をつくることも大事だと思っています」と指導員の樋川さん。

「幼い頃から参加していた子が年齢が上がって自分よりも年下の子が入ってくると、その子のことを気遣うような言動がでてきてきます。運動遊びを通じて子ども同士の関係性を学びながら心身ともに成長しているなと思います」と指導員の武井和枝さんは語ります。

またクラブでは「大事な3つの約束」や活動方針について、保護者にも理解してもらうことも重要だと言います。保護者たちは子どもの送り迎えのほか、時間があれば子どもたちと一緒に体を動かしながら、子どもの運動遊びを一緒に楽しむことがあるそうです。またクラブを通じてこれまで接点のなかった保護者同士も交流するきっかけとなり地域の輪が広がった人もいるとのこと。
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、活動を休止している期間は、クラブでは家でも運動遊びをできるように、保護者にメールで簡単な運動遊びを紹介していたそうです。

オープニングセレモニー時のACPクラブの皆さん:イメージオープニングセレモニー時のACPクラブの皆さん

県内からもACPへの取り組みに注目が集まる

クラブ代表の武井正英さんは山梨市スポーツ少年団本部長も務め、県内唯一のACPクラブとして、市内スポーツ少年団、県スポーツ協会、行政などに運動遊びの重要性を説き、ACP普及活動に尽力。山梨市役所生涯学習課に話を聞いたところ、「子どもたちが安心して身体を動かせる場が必要だという山梨市ACPクラブの想いに賛同しており、幼児の体力向上という側面においても期待しております。市としてはACPクラブをはじめスポーツ少年団やスポーツ振興に携わる団体を応援していきたいと思います」とコメント。

山梨県スポーツ協会スポーツ振興課からはこのようなコメントをいただいています。「これまでスポーツ少年団では参加資格が小学生からでしたが、いま3歳から参加できるようになりました。幼児やスポーツを苦手とする子どもをいかにスポーツの場に取り込めるか考えた場合、運動遊びのACPはとても重要だと思います。県スポーツ協会としてもACPクラブとともにACP普及に取り組みたいと思います」。
山梨県ではACP活動への注目が集まり、これから普及に向けた動きがあるかもしれません。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響から、活動を自粛することも多かった山梨市ACPクラブですが、状況が落ち着いたら親子参加のイベントなどを開催し、もっと多くの人に「運動あそび」に触れられる機会をつくりたいということでした。今後もクラブが掲げている「多様な動きを体験」「運動能力の向上」「約束を守れるように自立を促す」「こころの発達や社会性の獲得」という活動目標のように、幼い頃から身体を楽しく動かしながら、地域の人々との社会性を築いていける子どもが増えていけばいいと取材を通じて感じました。

●本記事は以下の資料を参照しています

山梨スポーツ少年団ホームページ(2022-03-01閲覧)
https://yamanashi-jsb.jp/archives/295
https://yamanashi-jsb.jp/archives/357

ACP(アクティブ・チャイルド・プログラム)(2022-03-01閲覧)

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