地域版SOIPデモデイ受賞紹介①〜シェアサイクルで健康増進と地域活性化を目指す「ガンバ大阪 × OpenStreet」
スポーツ庁ではスポーツを核とした地域活性化の実現に向け、地域におけるスポーツオープンイノベーションプラットフォーム、通称SOIP(ソイップ)の構築を目指す「地域版SOIP」を推進。地域に根差したスポーツチーム・団体と他産業界との連携による新規事業の創出を支援しています。今年度は北海道、関西、中国、沖縄の4地域を拠点とするスポーツチーム・団体とともに、スポーツ産業の新たな未来をつくるパートナー企業を募集。計11社・12プロジェクト(以下、PJT)が採択され、アクセラレーションプログラム「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD」を通して事業アイデアのブラッシュアップが進められました。
2月には地域版SOIPの成果発表会(デモデイ)を開催。そのデモデイで実施されたピッチにて、12PJTの中から審査員特別賞を受賞された関西を拠点とするプロサッカークラブ「ガンバ大阪」と全国にシェアサイクルを展開する「OpenStreet」による取り組みについて紹介します。
「サッカー×シェアサイクル事業」で地域課題の解決とSDGsに貢献
本プロジェクトは、ガンバ大阪と株式会社OpenStreetが大阪府・吹田市と連携し、大阪北摂地域にシェアサイクルのポートを設置して市民に自転車の利用を促す取り組みです。ガンバ大阪は関西のスポーツ界を30年以上リードしてきた有名プロサッカークラブ、株式会社OpenStreetは200の都市・4,500カ所にシェアサイクルサービスを展開する会社です。この両社が「サッカー×シェアサイクル事業」で「スポーツツーリズムの推進による持続可能なまちづくり・健康づくり」を目指します。
「ガンバサイクル」と命名されたシェアサイクルは4月1日から200台が稼働予定。市内数カ所にサイクルステーションが設置され、シェアサイクルはどこで借りても、どこでも返すことできます。ガンバ大阪のホームスタジアム「パナソニックスタジアム吹田」で試合がある時は周辺の駅とスタジアムの往復に利用、試合がない日にも通勤通学、市内の飲食店や小売店などへの買い物、休日の移動手段など、市内を移動する「日常の足」として利用できます。自転車の利用を通じて、市民に「健康増進」「CO2削減」の意識を持ってもらうことが目的です。
ビジネスプランのイメージ
昨年2021年12月にはOFA万博フットボールセンターおよび周辺の最寄駅などに臨時のシェアサイクルポートを設置して実証実験が行われました。駅とスタジアムとの往復移動手段として利用してもらったところ、利用者の反応は好評で今後もシェアサイクルの利用を望む声がありました。
実証実験の様子
健康増進とCO2削減、そして地域の回遊性向上で地域経済にも貢献
ガンバ大阪では、これまで地域社会を笑顔にするための『SDGsmile(エスディージースマイル)』というテーマでさまざまな持続可能な活動を続けており、青少年健全育成を目的とした「ふれあい活動」、パートナー企業と連携した再生可能なカップの利用やペットボトルキャップのリサイクル活動、エコスタジアムの実現に向けたパナソニックスタジアム吹田での取り組みなど、地域貢献とSDGsを推進し続けてきました。今回、地域版SOIPのプロジェクトに参加した理由についてガンバ大阪の伊藤慎次営業部長にお話を伺いました。
ガンバ大阪の「SDGsmile(エスディージースマイル)」ロゴマーク
21年9月よりガンバ大阪のユニフォームにはSDGs公式ロゴが入った
「これまで試合以外の約300日間、さまざまなCSR活動を続けてきましたが、さらなる地域貢献とSDGsへ取り組もうと、昨年9月26日よりユニフォームのパンツの後ろにSDGsの公式ロゴを国連に申請して入れさせてもらいました。今回OpenStreetさんと組ませていただいたのは、スタジアムへの交通手段に問題意識をもっていたことと、シェアサイクルとの共創はいままでやったことがなかったからです」と参加理由を伊藤さんは語ります。
「シェアサイクル普及により移動が便利になることで外出・運動機会が増え『健康増進』に繋がり、車から自転車に置き換えることで『CO2削減』にも貢献できます。また、地域に出かける楽しさが広がることから、市民がどのように地域を移動しているのか回遊性のデータを取ることで地域の経済効果についても期待しています」とプロジェクトの趣旨を語ってくれました。現在、ガンバ大阪ではSNSを用いたユーザー参加型キャンペーンを実施しており、選手たちも普及活動に参加。市民に地域貢献の意識づけを広めることに努めています。
ガンバサイクル
地域貢献という共通のゴールに向けてスポーツチームと共創できる機会はありがたい
共創相手のOpenStreetは今回の取り組みについて以下のように語ります。
「ガンバ大阪さんとの議論が進むなかで、たいへん手ごたえを感じています。理由としては、多くの形で地域貢献の形がディスカッションの中で出てきているためです。ガンバ大阪さんと協業することで市民の方の健康増進やCO2削減、交通渋滞緩和や街の回遊性向上等を加速するアイデアが豊富です。今後2度目以降の実証に向けて引き続き準備を進めたいと考えています」
「シェアサイクルという地域に根付いた地場のサービスを展開していく事業者として、地域貢献という共通のゴールに向けてスポーツチームと共創できる機会はたいへんありがたいと考えています。特にJリーグの各チームは地域密着を掲げており、自治体と共同で展開するシェアサイクルと大変相性よく、一方でサッカークラブと交通インフラという異業種のディスカッションには新たなビジネスや施策の創出が期待できると考えております」
地域版SOIPを通じて情報交換や連携の場ができた
最後にガンバ大阪の伊藤さんに今後の展望と地域版SOIPに参画された感想を伺いました。
「自転車の利用で地域に目を向けてくれる人が増えてくれることを願っています。自転車を安全に乗って、街の交通のこと、歩行が困難な高齢者や障がい者の方々のこと、生活環境のことなど、市民の皆さんには『街』に興味を持ってもらいたいです。われわれは一過性ではなく継続的に活動を続けていくつもりです。今年でJリーグ発足30年、Jリーグの理念のひとつ『豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与』が世間でも再認識されてきたように思います」。
「Jリーグをはじめ、各スポーツ団体も時代とともに地域で解決すべき問題が進化・深化しています。地域版SOIPに参画する皆さんのプロジェクトを見ながら参考になる部分もありましたし、情報交換ができたことがよかったと思います。こうして連携できる機会をつくっていただいたのはありがたかったです」。
まとめ
今回「ガンバ大阪 × OpenStreet」の事例をご紹介しましたが、当プロジェクトの地域に密着したプロサッカーチームと、地域内を移動する自転車との組み合わせは、お話を聞きながらとても親和性が高いと思いました。街を楽しみながら健康になり、回遊が広がることで地域の経済も発展する。シェアサイクルを通じて人々の地元意識が強まるのではないでしょうか。
●本記事は以下の資料を参照しています
スポーツ庁 - 令和3年度スポーツ産業の成長促進事業「スポーツオープンイノベーション推進事業(地域版SOIPの先進事例形成)」の運営協力事業者の採択結果について(2022-03-01閲覧)