未来を見据えた競技力強化のための支援方針「鈴木プラン」とは?

日本代表選手団合同パレード

アスリートは、不断の努力の積み重ねにより人間の可能性を追求しており、その活躍や努力は人々に夢と希望を届け、チャレンジする勇気を社会全体にもたらします。また、トップアスリートが才能を開花させる過程で培われた技術や知識・経験、生き方は社会的な財産でもあり、それらは多くの人々にスポーツの魅力を広げ、社会に活力をもたらします。

これらを踏まえ、スポーツ庁では我が国のトップアスリートがオリンピック・パラリンピックにおいて、優秀な成績を収めることができるよう支援に取組んでいます。今回は、その方向性を定めた「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」を紹介します。

日本中が湧いた平昌冬季オリンピック・パラリンピック

クロスカントリー 画像

韓国の平昌で、2018年2~3月にかけて開催された冬季オリンピック・パラリンピック。これらの大会において、日本の選手たちが見せてくれた活躍ぶりには目を見張るものがありました。

男子フィギュアスケートの羽生結弦選手や、女子スピードスケートの小平奈緒選手、髙木菜那選手、チームパシュート女子チームが金メダルを獲得。また男子モーグルの原大智選手、スキー女子ジャンプの高梨沙羅選手、そしてカーリング女子チームと、各種目で日本勢初のメダル獲得という喜ばしいニュースもありました。日本が獲得したメダル総数は13個(金4、銀5、銅4)。これは1998年長野大会(10個)を超える歴代最多記録です。

またパラリンピックでも、アルペンスキー女子の村岡桃佳選手が5つのメダル獲得をはじめ、ノルディックスキー男子の新田佳浩選手、スノーボード男子の成田緑夢選手が金メダルに輝くなど、日本勢の活躍が続きました。パラリンピックのメダル総数は10個(金3、銀4、銅3)で、こちらも冬の大会では日本歴代3位という好成績を残しています。

この勢いは、いよいよ2年後に迫った東京夏季オリンピック・パラリンピック(以下、東京大会)につながっていきます。

 2020年東京大会に期待すること

国民の期待 グラフ

(※)株式会社共同通信社が平成28年8月12~15日の期間で全国10~60代の男女1,100人にインターネットで実施した調査における質問「あなたは2020年の東京五輪・パラリンピックでどのようなことを期待していますか?項目ごとにあなたのお気持ちに近いものを一つお答えください」への回答結果。「期待する」の数値は質問項目の「期待する」と「やや期待する」の合計値。

株式会社共同通信社の行った意識調査では、東京大会において「日本選手の活躍」「選手の競技力向上」「世界レベルの対戦や究極のチャレンジ」への国民の期待が高いという調査結果が出ています。

こうした調査結果からしても、2020年東京大会の盛り上がりには日本代表選手の活躍が欠かせません。

そこで2016年に、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの成果と課題を踏まえながら、2020年東京大会で優れた成績を収めるよう支援するため、さらには、その取組を強力で持続可能なものとして構築・継承するため、「競技力向上のための今後の支援方針(鈴木プラン)」を策定しました。

競技力強化のために。今後の支援方針とは

ここからは「鈴木プラン」の具体的な内容を紹介します。

中長期の強化戦略プランの実効化を支援するシステムの確立

「鈴木プラン」で第1に掲げられているのが、「中長期の強化戦略プラン」の実効化を支援するシステムを確立することです。ここで言う「中長期」は、2大会先のオリンピック・パラリンピックを見通した期間を指します。シニアだけでなくジュニア(次世代)のアスリートも含め、一貫した強化策を4年、8年単位で総合的・計画的に進めていく各中央競技団体の取組を支援するのが主な目的です。

そのために、独立行政法人日本スポーツ振興センターのハイパフォーマンスセンター(※)には公益財団法人日本オリンピック委員会・公益財団法人日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会を含めた「協働チーム」が設けられ、各中央競技団体が設定した4 年、8 年単位の強化戦略プランにおけるPDCAサイクルの各段階で多面的にコンサルテーションやモニタリングを実施しています。

(※)ハイパフォーマンスセンターとは…
国内外のハイパフォーマンススポーツの強化に貢献することを目的に、オリンピック・パラリンピック競技を一体的に捉え、国立スポーツ科学センターとナショナルトレーニングセンターが持つスポーツ医・科学研究、スポーツ医・科学・情報サポートおよび高度な科学的トレーニング環境を提供し、各種スポーツ資源の開発などを行っています。
参考:https://www.jpnsport.go.jp/hpc/Default.aspx

 

ハイパフォーマンスセンターの機能強化

また、各中央競技団体の強化戦略等を支援するため、ハイパフォーマンスセンターの機能強化に取り組んでいます。
その内容としては、

  • 各国のメダル獲得戦略、選手強化方法などのあらゆる情報の収集・研究・分析
  • オリンピック・パラリンピック競技大会で使用される競技用具等の開発
  • アスリートの各種情報を一元的に管理し、トップアスリートが必要な情報を迅速に取得できるシステムの構築・活用

などがあります。
さらに、世界基準のトレーニング場や高度な科学的トレーニング環境をアスリートに提供する「ナショナルトレーニングセンター」の拡充整備も実施されています。これにより、オリンピック競技とパラリンピック競技の共同利用をさらに進めます。

アスリート発掘、女性アスリートの支援、ハイパフォーマンス統括人材の育成

その他、鈴木プランにはさまざまな支援策が含まれています。

たとえば、アスリートの才能を引き出し、育成することで「メダル獲得を期待できる競技」を増やす施策がアスリート発掘プロジェクト「J-STAR」。アスリートが個々の適性に合った競技に取組める機会を作り、また効率の良い強化につなげていくことが目的です。

また、近年の大会では女性アスリートからも多くのメダリストや入賞者が誕生していますが、女性競技種目に不足しているハイレベルの競技大会開催のためのプログラム実施や、女性アスリート出身のエリートコーチの育成など「女性アスリートへの支援強化」もプランで掲げられた方針のひとつ。

さらには、海外から優れた指導者を招聘(しょうへい)するだけでなく、“自前”でワールドクラスのコーチと、強化現場の代表として競技団体の運営に関与する人材(ハイパフォーマンスディレクター)を育成する「ハイパフォーマンス統括人材の育成」も支援することとしています。

2020年に向けた戦略的支援

こうした取組を「鈴木プラン」では東京大会に向けて2つの時期に分けて戦略的に支援する計画。2018年度現在は「活躍基盤確立期」(2017~2018年度)として「全競技パフォーマンスの最大化」という考えのもと各中央競技団体の強化活動を積極的に支援する段階。

日本はメダルの獲得が安定して期待できる競技が固定かつ少数であり、東京大会で優秀な成績を収めるには、レスリング、柔道、水泳、体操といった得意とする競技の強化を一層図るとともにメダルを獲得できる競技数を増やすことが必要となるからです。

これが2019年度になると、「ラストスパート期」(2019~2020年度)として「活躍基盤確立期」における各中央競技団体の成果を踏まえ、「メダル獲得機会の最大化」の考えのもと、支援を柔軟かつ大胆に重点化していくこととしています。

まとめ

この鈴木プランを関係者が一丸となって成し遂げ、各中央競技団体における競技力強化のプロセスを支える優れた仕組みを後世に伝えることは、競技スポーツの祭典である東京大会の開催国に創出されるにふさわしい最重要のレガシーだとスポーツ庁は考えます。

2020年東京大会だけでなく、その先のオリンピック・パラリンピックにおいて、我が国のトップアスリートの活躍を通じて、国民の皆さんがスポーツの力や価値を感じられるようスポーツ庁はこれからも取組を続けていきます。

●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています
スポーツ庁 ー 競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)(2018-03-01閲覧)

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