満員感が満足感に繋がる!『ヨドコウ桜スタジアム』

満員感が満足感に繋がる!『ヨドコウ桜スタジアム』

スポーツ庁および経済産業省では、まちづくりや地域活性化の核となるスタジアム・アリーナの実現を目指す「スタジアム・アリーナ改革」に取り組んでおり、2025年までに20拠点を実現することとしています。この度、モデルとなる「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として選定された中から、いくつかの拠点をピックアップしてご紹介。今回は大阪市の「ヨドコウ桜スタジアム」です。

参考:スポーツの成長産業化に向けて、スタジアム・アリーナ改革の選定拠点を表彰
https://sports.go.jp/tag/life/post-73.html

世界のサッカースタジアムを参考に臨場感のあるスタジアムへ

ヨドコウ桜スタジアムは、1987年に「長居球技場」としてオープンした大阪市東住吉区の長居公園内にあるフットボール専用球技場です。Jリーグチーム「セレッソ大阪」の本拠地となるのを機に改修がはじまります。2017年に募金団体を設立して改修計画がスタート。2019年7月〜2021年4月まで改修が行われました。改修部分は大阪市に寄付。施設は大阪市が所有し、セレッソ大阪の関連団体である「一般社団法人セレッソ大阪スポーツクラブ」が指定管理者となり30年間施設の運営管理を行います。今回、セレッソ大阪スポーツクラブスタジアム事業部・佐伯真道さんにスタジアムの改修についてお聞きしました。

スタジアム改修に際しては、4つのコンセプトが掲げて行われました。

1.クラブの成長に応じた段階的改修
①既存建築物を最大限活用した継続的な改修
②エコスタジアムの実現
2.日本一の親近感を!
①さらなる臨場感と一体化の追求
②誰もが楽しめる空間に
③緑に囲まれた優しさを
3.地域のための都市型スタジアム
①防災拠点としての機能
②地域の賑わい、振興の創出
③複合施設
4.みんなで育む
①みんなが参加できるスタジアム構想の反映
②みんなの力でできるスタジアム(寄付、ふるさと納税等の活用)

ヨドコウ桜スタジアム:外観

満員感が満足感に繋がる

コンセプトの中でも「日本一の親近感を!」と臨場感、一体化を大事にした改修が多くみられます。まず挙げられるのは「観客スタンドとピッチの近さ」。ヨドコウ桜スタジアムでは陸上トラックがないため観客スタンドとピッチとの距離が近く、臨場感あふれる試合を楽しめるようになっているのが大きな特長の一つ。もう一つは「収容客席数」にあります。客席を2万5000人収容に設定した理由について佐伯真道さんにお聞きしました。
「ヨドコウ桜スタジアムの隣には、4万7000人収容できてサッカーW杯2002、世界陸上や陸上日本選手権が開催された『ヤンマースタジアム長居』という大きな会場もありますが、約5万人の会場を毎回満員にするには現段階ではハードルが高い状況です。セレッソ大阪のコロナ禍前の平均集客数が約2万1000人ということで、客席数を2万5000人にし、常に満員感を出すことができます。選手やファンにとって満員感は満足感に繋がり、全体のモチベーションも高まります」。

世界のサッカースタジアムのトレンドを参考にしながら2021年7月に新メインスタンドが完成。ホームチームのロッカールームには温水と冷水の交代浴ができる浴槽などの最新機能が揃います。またVIPエリアや多目的に利用できるスペースが設置されてより高いサービスが提供可能となりました。そのほかにはチームカラーのピンクをはじめ、青、緑、レインボーなどシチュエーションに応じて8種類のライティングが行える照明システム、新たな大型ビジョンも新たに設置され、演出面も充実しています。

ホームチームのロッカールームと交代浴できる浴槽:イメージホームチームのロッカールームと交代浴できる浴槽

複合機能を整備して多様な利用が可能に

現在、セレッソ大阪のほか、ラグビーチーム「NTTドコモ レッドハリケーンズ大阪」がホストスタジアムとして使用しており、ヨドコウ桜スタジアムでは、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールの試合が年間を通じて開催されています。一方で、そうしたスポーツ施設として以外での利用もできるように複合機能の整備やイベントなどを開催し、地域活性化の核となる施設を目指しています。

歓喜わくスタジアム:イメージ歓喜わくスタジアム

利用例を挙げれば、21年4月に行われたのは大学の入学式。コロナ禍で密にならないように観客スタンドが式典として使用されました。ほかにはウエディングとして利用できるプランもあります。おもしろいところでは「大人のキャンプ」と題してスタジアム内にテントを設営して宿泊体験できるイベントが行われ話題を呼びました。ビジネスラウンジではコワーキングスペースとして利用できるサービスをはじめ、企業研修やセミナーの会場としても使われるなど、ビジネス利用にも対応しています。

地域のためのスタジアムとして、地域社会に根ざした取り組みにも積極的です。「桜カレッジ」は市民に向けた教室で、サッカースクール、チアダンス、卓球、バトミントン、ヨガなどのスポーツ教室のほか、英会話、ロボットプログラミング、ドローン操作などカルチャー教室といった多種多様なプログラムを用意。
「これらの講座や教室によって地域の方たちが気軽に集まれるスタジアムを目指しています。定年後世代への生涯学習、子どもたちへの教養の“場”にしていただければと思います」と佐伯真道さんは語ります。

大人のキャンプ:イメージ

来場者アンケートでは満足度が上がっている

最後に佐伯真道さんに利用者からの反応についてお話ししていただきました。
「来場者から定期的にアンケートをとっているのですが、とても臨場感があると言っていただいて、満足度は上がっていました。既存建築の改修のため、新しい箇所と既存箇所が混在しており、まだまだ改善点も多いのですが、アンケートを参考にこれから改修していけたらと思います。改修内容について、大阪市の方からも利用者のためならポジティブに考えて頂き、自由度の高い運営ができるよう柔軟に対応していただいています。市民のためのスタジアムであることを常に考えています」

ヨドコウ桜スタジアムを拠点にしているセレッソ大阪、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪のコメントも紹介します。

式会社セレッソ大阪 社長 森島寛晃氏:イメージ
株式会社セレッソ大阪 社長 森島寛晃氏のコメント

ヨドコウ桜スタジアムはスタンドとピッチが近く、それが親近感や臨場感を生みます。メイン、バック、ゴール裏からでもピッチが凄く身近に感じられます。スタジアムにサポーターの方が来てくれることで選手たちのテンションは上がるし、われわれスタッフも気持ちや気合が入りますね。スタジアムの雰囲気でサポーターの方もワクワクすると思いますし、臨場感がいい循環を生んでくれているなと思います。

NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 小島佑太選手(ポジション:LO(ロック)):イメージ
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 小島佑太選手(ポジション:LO(ロック))のコメント

他の競技場と違い陸上トラックがないため、ファンの皆様との物理的な距離が近いことで、声援が非常に大きく近く聞こえます。プレーをしていてもその声援が背中を押してくれて、ファンの皆様と一緒に戦っているような感覚を味わえる、素晴らしいスタジアムです。

まとめ

サッカー、ラグビー、アメフトのファンにとっては迫力あるプレーが間近で観られる臨場感あふれるスタジアムであり、市民にとっては美しい自然に囲まれた運動や娯楽を楽しめる「憩いの場」であるヨドコウ桜スタジアム。これからもスポーツファンと地域の声を聞きながら、その姿を変えていく地域が育むスタジアムのように思いました。

写真提供:株式会社セレッソ大阪・一般社団法人セレッソ大阪スポーツクラブ/NTTドコモ レッドハリケーンズ大阪

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁ホームページ 令和2年度「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定の結果について(2022-03-01閲覧)
ヨドコウ桜スタジアム(2022-03-01閲覧)

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