長崎を魅力あるまちに、そして全国を元気に『長崎スタジアムシティプロジェクト』

長崎を魅力あるまちに、そして全国を元気に『長崎スタジアムシティプロジェクト』

スポーツ庁および経済産業省では、まちづくりや地域活性化の核となるスタジアム・アリーナの実現を目指す「スタジアム・アリーナ改革」に取り組んでおり、2025年までに20拠点を実現することとしています。この度、モデルとなる「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として選定された中から、いくつかの拠点をピックアップしてご紹介。今回は長崎県長崎市で2024年に完成を予定している「長崎スタジアムシティプロジェクト」を取り上げます。
(※本記事に掲載しているパース図は、2022年3月現在の構想段階のため今後デザイン含め変更の可能性があります)

参考:スポーツの成長産業化に向けて、スタジアム・アリーナ改革の選定拠点を表彰
https://sports.go.jp/tag/life/post-73.html

覚悟をもった民間企業のチャレンジで、長崎、日本を元気に!

2022年9月23日に開通が決まった「西九州新幹線」によって、今後、観光やビジネスで大きな地域振興と発展が期待されている長崎県。現在、長崎市を中心に急ピッチで都市整備計画が進められています。「長崎スタジアムシティプロジェクト」は、新幹線駅「長崎」駅から徒歩10分ほどの三菱重工長崎造船所幸町工場跡地に建設が計画され、サッカースタジアム、アリーナを中心に、オフィス・商業施設・ホテルなどの周辺施設を民間主導で開発するプロジェクトです。事業主体は株式会社ジャパネットホールディングス、企画・運営はグループ会社である株式会社リージョナルクリエーション長崎が行っています。今回、リージョナルクリエーション長崎・スタジアムシティ戦略部の折目裕さんにプロジェクトについて話を聞きました。

長崎スタジアムシティ施設配置イメージ:イメージ長崎スタジアムシティ施設配置イメージ

計画地の長崎市は市外への転出人数が2018年、2019年と全国自治体ワースト1(2019/2/2 長崎新聞より)と人口流出問題を抱えており、長崎出身の会社として地元・長崎を活性化したい想いが、プロジェクト発足の大きなきっかけの一つになっています。
「長崎をどれだけ魅力的にできるか、元気にできるかにチャレンジしてみたい気持ちが最初にありました。スタジアム・アリーナ開発は行政主導で行われているケースが多いですが、民間企業が覚悟をもってチャレンジして、それを地域創生に繋げたいです。長崎スタジアムシティが前例となって全国に広がり、日本全体を元気にしていきたいという想いがあります。今回、私たちが得ていくノウハウや知見は他の自治体や企業ともシェアしていきたいと思っています」と折目裕さんは語ります。

スタジアム完成後の鳥瞰イメージ:イメージスタジアム完成後の鳥瞰イメージ

試合のない日も稼働する“普段使いのスタジアム”を目指す

長崎スタジアムシティプロジェクトの全体像を紹介します。

日本一ピッチに近いスタジアム

プロジェクトの中心となるのがプロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」の新スタジアムです。約2万人収容、ピッチと観客席の距離がJリーグ規定の最短5メートルとサッカー専用に特化された観戦環境が予定されています。もう一つの特長はスタジアムとホテルが一体となった複合施設ということです。ホテルの客室、レストラン、プール・スパ施設などからもスタジアムを望むことができる日本初のスタジアムビューホテルです。試合に観戦にきたファンや長崎を訪れた観光客などを約240室のラグジュアリーホテルで迎え入れることが可能です。そしてスタジアムやホテルの利用ではICT技術を使って、顔認証や携帯端末のアプリを利用した入退場、そしてチケットや売店でのフードやグッズなどの購入もキャッシュレスにする計画もあるとのこと。

試合のない日でもスタジアムはプロジェクションマッピングで演出されるなど、定期的にイベントも予定され、ユニークな試みとしては、スタジアムの上空を横断するジップラインが計画されています。試合のない日はサッカーフィールドを眼下に眺めながらの空中散歩を楽しむことができそうです。

スタジアム観客席イメージ:イメージスタジアム観客席イメージ

「サッカー観戦に特化していると同時に、年間約20試合以外にも収益を生み出せる“普段使いのスタジアム”を目指しています。ジップラインもそうですが、スタンド内のフードホールでは試合のない日でも周辺の商業施設で購入した商品を飲食できるようにするなど、設計段階から日常で気軽に利用できるスタジアムを考えています」と折目さん。

ホテルからスタジアムを望むことができる(左)プール、(右)客室イメージ:イメージホテルからスタジアムを望むことができる(左)プール、(右)客室イメージ

行政や鉄道会社とも連携して地元を盛り上げる

プロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のホームとなるアリーナは約6000人収容を予定。バスケットボールの試合はもちろん、コンサートなどエンターテイメント分野での利用に特化した会場として計画が進んでいます。ホテルも隣接していることから大規模の本格ディナーショーも開催できるとのこと。このアリーナによってエンターテイメント興行開催に地元からも期待されているようです。

アリーナ内観、アリーナ内の音楽と飲食イベントのイメージ:イメージアリーナ内観、アリーナ内の音楽と飲食イベントのイメージ

スタジアム周辺を囲むように商業施設、オフィス施設が配置される予定になっています。商業面積の合計は2万3000平方メートル(約7000坪)もあり、スタジアムを眺めながら広い敷地内をゆっくりとショッピングできるような作りになっているようです。オフィスビルは賃貸面積約4204坪が計画され、長崎県内でも最大規模となる見込みです。県外からの企業誘致をはじめ、県内ビジネスの活性化などが期待されています。

「V・ファーレン長崎、長崎ヴェルカという2つのスポーツクラブと自前のスタジアムで新たな地域創生ができればと思っています。長崎駅からスタジアムを結ぶ遊歩道“Vロード”も計画されていて、行政や鉄道会社とも連携しながら地元を盛り上げていこうと動いています」と折目さん。

(左)店舗が並ぶ商業棟、(右)アリーナとオフィス棟の外観イメージ:イメージ(左)店舗が並ぶ商業棟、(右)アリーナとオフィス棟の外観イメージ

重ね使いや収益ポイントの数を増やして黒字化へ

最後にプロジェクトの特長、地域の活性化についてお話を聞きました。

「まずは民間企業なので赤字にはできません。スタジアム単体では黒字化は難しいと思うので、重ね使いや収益ポイントの数を増やして黒字化することが重要だと思います。設計段階から自分たちの強みを活かせるアイデアを反映できるのは特長かもしれません。商業施設やオフィスなど複合化することで黒字化できるモデルを作れればいいと思います。
今回、『多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ』選定を受けたことで、スポーツを通じての交流拠点して認められたことは嬉しいですね。対外的にもスポーツ庁、経済産業省からも認められているプロジェクトという見られ方に変わった気がします」。

「イチ企業なので地域活性化に寄与できることには限りがあります。これまで私たちがやってきたことは、皆さんにサッカーのある暮らし、バスケットボールのある暮らしをお届けしてきて、今回、新たにスタジアムシティのある暮らしというのが加わるのかなという意識です。地域に少しずつ加わっていくことで長崎が活性化して、皆さんの生活が豊かになっていけばいいなと思います」。

まとめ

長崎スタジアムシティプロジェクトは、スタジアムの周りにさまざまな施設が集められた、まさに「シティ」という一つの小さな街のようです。今年秋の西九州新幹線開通により人の流れも変わり、地域全体が大きな変化を遂げるなかで長崎スタジアムシティは人、スポーツ、ビジネスなどの「交流の場」として大きな役割を果たしてくれるのではないでしょうか。2024年の完成が楽しみです。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁ホームページ 令和2年度「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」選定の結果について (2022-03-01閲覧)

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