まち全体まるごとスポーツに親しむことができる場へ!「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2023」初開催!
(写真)受賞者全員と審査員による記念撮影
スポーツ庁では、まち全体で誰もがスポーツに親しめる「場」こそ、スポーツの機会を増やし、ライフパフォーマンスの向上に繋がるものではないかと考えています。そこで、私たちのQOL(Quality of Life, 生活の質)を高め、充実した日々を過ごすため、どのような「場」が必要なのか、学生の皆さんに呼びかけ「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2023」を開催しました。11月10日、応募総数94点の中から選出された16点がプレゼンテーションを行い、最終審査および受賞式が行われましたので、その模様をレポートいたします。
(写真)大学生によるプレゼンテーション風景
「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2023」の開催背景
東京2020大会のレガシーを契機として、全国各地で地域が抱える課題の解決のためスポーツの力を活用した取組が広がりをみせています。
スポーツ庁では、スポーツ施設のみならず、低未利用地(オープンスペース)や既存ストックの活用を促進し、スポーツの場の量的・質的な充実を図ってきましたが、中長期的な視点でみると、施設や場のデザインに加え、「都市デザイン」の観点を盛り込んだ「スポーツ・健康まちづくりデザイン」といった視点が求められてきます。
まち全体がスポーツに親しめる場となり、どこでもスポーツに親しむことができる空間を実現するための「スポーツ・健康まちづくりデザイン」を、学生の皆さんから募集したのが「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2023」です。
(図)スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2023の応募から受賞までの流れ
学生たちが長官や審査員に向けて熱気あふれるプレゼンテーション
テーマは、『まち全体において、運動・スポーツに親しみやすい「場」をどのように作っていくのか』。対象地や地域を決め、運動・スポーツに親しみやすい「場」となるよう、その場所や地域の10年後の未来を描いていただきました。
応募部門は、①アイデア部門、②デザイン部門の2つ。①アイデア部門では空間デザインのアイデアとその場での活動シーン、②デザイン部門では具体的な空間デザインを中心とした提案となります。
94点もの応募の中から審査員による1次審査を経て、①アイデア部門11点、②デザイン部門5点が選ばれ、2次審査では室伏長官も審査に加わり、審査員の前でプレゼンテーションが行われました。未来を担う学生だからこそ見えてくる多様で柔軟なアイデアばかりで、審査は難しかったようです。
審査員(敬称略)
- 室伏 広治(スポーツ庁長官 ※2次審査から参加)
- 久野 譜也(筑波大学大学院人間総合科学学術院・教授)
- 高岡 敦史(岡山大学学術研究院教育学域・准教授)
- 花里 真道(千葉大学予防医学センター健康都市空間デザイン学分野・准教授)
- 福岡 孝則(東京農業大学 地域環境科学部造園科学科・准教授)
- 藤村 龍至(東京藝術大学美術学部建築科・准教授/RFA主宰)
- 三浦 詩乃(一般社団法人ストリートライフ・メイカーズ・代表理事/東京大学客員連携研究員)
(写真)7名の審査員
長官賞受賞は【アイデア部門】九州共立大学、【デザイン部門】関西大学大学院
2次審査では各学生ともに工夫を凝らしたプレゼンテーションを披露。審査員との質疑応答では、審査員の鋭い質問に緊張の表情を見せたものの、しっかりと自分たちの提案を力強く説明していました。
プレゼンテーションを踏まえた審査会では、予定時間をオーバーするほど、白熱した議論になりました。
その結果、スポーツ庁長官賞を受賞したのは、アイデア部門・九州共立大学 スポーツ学部・スポーツ学科、デザイン部門・関西大学大学院 理工学部環境都市工学専攻の皆さんでした。
(写真)スポーツ庁長官賞を受賞した2グループは同日午後に行われた「スポまち!長官表彰2023」で、自治体の首長ら参列者の前でプレゼンテーションを行いました
【アイデア部門】
先人たちが築いてきた「遊び」の文化を「身体」を使って次世代(未来)へ継承する<福岡県宗像市>
九州共立大学スポーツ学部・スポーツ学科(橋口 采音、徳重 奈桜、長田 莉穂、田中 萌、牧島 彩華、飯盛 優和、吉元 大空)
福岡県宗像市の宗像ユニックスの芝生広場において、地域交流の活性化の実現に向け、誰もが知っている遊びを通して、身体を動かしたくなる「大判オセロ」のアイデアを提案。大判オセロによって、「考える」だけではなく、「飛ぶ」「置く」「持つ」「笑う」「動かす」「座る」といった動作が生まれ、多世代の人が共に体を使って遊べる場所(共同遊び空間)が創出される。また、隣接する日の里団地では団地再生が急務であり、団地の壁を活用した「壁面クライミング」が整備されており、これらの空間をつなぎ合わせ、「あそび場ロード」の設置を目指す。
大学を中心とし、市内の地域団体との連携体制を構築し、このエリアが「共同遊び空間」が人々の生活圏の一部になる10年後を提案。
受賞作品
https://www.mext.go.jp/sports/content/20231120-spt_stiiki-000030253_1.pdf
- 《受賞コメント》
- この度は、素晴らしい賞をいただき、素直に嬉しい気持ちでいっぱいです。まさかスポーツ庁長官賞をいただけるとは思ってもいませんでした。この場をお借りして、室伏広治長官をはじめとする審査員の先生方、スポーツ庁関係者の皆様方に感謝申し上げます。私たちのアイデアは、第3期スポーツ基本計画に記されるスポーツの価値を高める新たな視点、スポーツを「つくる/はぐくむ」に注目し考案しました。今回のコンペティションに参加する中で、普段の大学の授業では味わうことのできない、全員で0からアイデアを創り上げることの楽しさや、考案したアイデアを人々に分かりやすく伝えることの難しさを知ることができました。最後に今回の受賞を励みに、私たちが提案した「10年後のスポーツ・健康まちづくりビジョン」の実現に向けて、大学生が主体となり、地域の方々を巻き込みながら、個々の役割を明確にし、活動を進めていきたいと思います。
(写真)表彰式、「スポまち!長官表彰2023」でのプレゼンテーション風景
【デザイン部門】
男山スポーツビレッジ構想<京都府八幡市>
関西大学大学院理工学部環境都市工学専攻(岩田 博登、大倉 悠、中村 友昭、水本 佳吾)
まちびらきから50年が経過したUR男山団地では、少子高齢化等によって小学校が廃校、住民構成の変化により、公共施設運営にも影響。市では「男山地域再生基本計画」に基づき、ストックの有効活用を図っているが、策定してから10年が経過しており、これからの10年に向けた新たなビジョンが求められていることから、ソフト事業とハード事業を部分的かつ効果的に織り交ぜ、多中心的な拠点がゆるやかにつながる構造への再編計画を提案。
スポーツを支える「ファン」の存在に着目し、「まちのファン」を中心としたまちづくりプラットフォームの構築、そして、スポーツをひとつの切り口に「まちのファン」を巻き込みながら、廃校の暫定利用、UR団地のリノベーション、高校施設の開放、小中一貫校の整備と段階的にまちをつくり変え、再編した空間にスポーツ施設を整備するといったフェーズを構築し、持続可能な住環境の実現を目指す。
受賞作品
https://www.mext.go.jp/sports/content/20231120-spt_stiiki-000030253_02.pdf
- 《受賞コメント》
- この度は、スポーツ庁長官賞を頂戴し大変光栄に思います。
応援していただいた住民の皆様、先生方、地域コーディネーターの皆様のお力添えあってこその賞だと思っています。本当にありがとうございました。
また、すばらしい発表の場を設けていただいたスポーツ庁関係者の皆様にも、この場を借りてお礼申し上げます。
今回はスポーツ・健康まちづくりをテーマに団地再編について考えたことで、今までになかった新たな視点で提案することができたと思っています。まちの構造や仕組みをどのように変えていけば、健康なまちになっていくのか?ということに対して、たくさんの議論を重ねた時間は自分たちにとってとても貴重なものになりました。
今回の経験を生かして、引き続き団地再編について考え、実践していきたいと考えています。この度は本当にありがとうございました。
(写真)表彰式、「スポまち!長官表彰2023」でのプレゼンテーション風景
いずれも光り輝く提案ばかりの受賞作品
受賞者の皆さんを紹介します。提案内容の詳細についてはスポーツ庁の別ページをご参照ください。
<アイデア部門>
受賞者 | 受賞作品タイトル<提案自治体> |
---|---|
鎌倉女子大学家政学部 管理栄養学科 |
はい、ちーず。 ~スポーツ栄養弁当と鎌倉の地形を生かした運動の提案~ <神奈川県鎌倉市> |
宇都宮大学地域デザイン科学部 コミュニティデザイン学科 |
宇都宮市における自転車による健康まちづくり <栃木県宇都宮市> |
熊本県立大学総合管理学部 総合管理学科 |
MASHIKIWALK <熊本県益城町> |
新潟医療福祉大学健康科学部 ・健康スポーツ学科 |
Gosen “PUSH” PROJECT <新潟県五泉市> |
びわこ学院大学教育福祉学部 スポーツ教育学科 |
[福岡孝則審査員賞] Sports Life Balance ~東近江市ver~ <滋賀県東近江市> |
帝京大学医療技術学部 スポーツ医療学科 |
ちょいスポしよう!~放課後の学校校庭・体育館で行う運動~ <東京都稲城市> |
東北大学公共政策大学院 | 伊達(DATE)なボッチャのまち 仙台 <宮城県仙台市> |
同志社大学スポーツ健康科学部 ・スポーツ健康科学科 |
[花里真道審査員賞] 〜空き家から始まる〜まちのみんなのふらっと健康拠点 <京都府京都市> |
和歌山信愛大学教育学部 子ども教育学科 |
[藤村龍至審査員賞] 運動がしたくなる公園・街づくり <和歌山県和歌山市> |
北九州市立大学 地域創生学群・地域創生学類 |
[久野譜也審査員賞] 運動するためにコクライク!!~歩行空間と低未利用地の改革提案~ <福岡県北九州市> |
<デザイン部門>
受賞者 | 受賞作品タイトル<提案自治体> |
---|---|
熊本大学大学院自然科学教育部 土木建築学 |
醸すまち ~スポーツ健康文化の醸成と未来~ <福岡県那珂川市> |
立命館大学理工学研究科 環境都市専攻 |
[高岡敦史審査員賞] コトマチ計画 ー児童遊園から始まる能動的なまちなか場づくり提案 <大阪府茨木市> |
東京農業大学地域環境科学部 造園科学科 |
町とスポーツを縫う高架下 <東京都江戸川区> |
新潟大学自然科学研究科環境科学専攻 社会基盤 |
[三浦詩乃審査員賞] 日常をアクティブに ~まちなかスポーツストリート計画~ <新潟県加茂市> |
(写真)受賞者のプレゼンテーション・表彰式の様子
まとめ
今回初めて開催された「スポーツ・健康まちづくりデザイン 学生コンペティション2023」。甲乙のつけがたい素晴らしい内容の応募の中から選ばれた16点にて2次審査のプレゼンテーションが行われました。柔軟な発想力による斬新なアイデアでありながら、裏付けとなる具体策や課題なども提示。
今後、長官賞の作品は、提案自治体に対して、実際に受賞学生からプレゼンテーションが行われる予定です。その他の応募作品についても、いつか本当に各地域で実現されることがあるかもしれないと思わされたほど、熱気の感じられるコンペとなりました。
●本記事は以下の資料を参照しています