オリパラ・レガシー! スポーツ×地方創生、まちづくり!

オリパラ・レガシー! スポーツ×地方創生、まちづくり!

東京2020オリンピック・パラリンピック大会。まだ熱戦が続く中ですが、この大会は「レガシー」としてその後に何を遺していくのでしょうか?「オリパラ・レガシー」は、競技施設のような有形の遺産だけではありません。無形の社会的・経済的・文化的影響も忘れてはいけません。
スポーツ庁では、関係省庁を主導して、「オリパラ・レガシー」として、全国各地で、「スポーツ」を活用した特色ある「まちづくり」の創出・定着を推し進めようとしています(スポーツ×地方創生、まちづくり プロジェクト)。今回、その取り組みについて取材してみました。

「スポーツ」の持つ不思議なチカラ

オリパラ大会を通じて改めて感じたこと

コロナ禍の下での開催となった未曾有の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会。無観客状態でも全力で競技に取り組む、最大限のパフォーマンスで活躍する選手たちの姿に、誰もが感動や共感を引き起こすスポーツの持つ不思議なチカラを、われわれに感じさせてくれたのではないでしょうか?

スポーツは、「する」「みる」「支える」といった形でそれ自体を楽しめるだけではなく、スポーツの持つ不思議なチカラを活かして、少子高齢化、住民健康向上、過疎化、経済衰退といった、いま多くの地域が抱えるさまざまな社会課題を解決に導く、素晴らしいツールともなるものです。

スポーツを活用した特色ある「まちづくり」の全国ムーブメント創出

無形の「オリパラ・レガシー」

スポーツを活用した地域振興は、新しい話ではなく、従来から幾度となく唱えられ、また各地で行われてきましたし、いまも行われていることも事実です。しかし、その規模も地域的な広がりもいまだ充分なものとなっているとは言えないのではないでしょうか?
政府では、東京2020大会を起爆剤に、「オリパラ・レガシー」として、本格的に、スポーツを活用した特色ある「まちづくり」の全国的なムーブメント(政府では「スポーツ・健康まちづくり」と呼称)を創出していきたいと考えています。

スポーツを活用するといいましても、スポーツは、「競技スポーツ」だけではありません。体を動かす日常的な行為全般を広くスポーツと捉えています。例えば、草刈りやゴミ拾いなどもスポーツです。老若男女が気軽に参加できることもスポーツのチカラなのかもしれません。

スポーツ・健康まちづくり計画のイメージ

スポーツ×地方創生、まちづくり!に取り組もうとする自治体を応援!

長官表彰制度立上げの趣旨と背景

スポーツ庁では、関係省庁を主導して、東京2020大会のスポーツをめぐる全国各地での盛り上がりを一過性のものとせず、「スポーツ・レガシー」として、「スポーツ」の力を活用した特色ある「まちづくり」へと転化させ、各地にしっかりと根付かせていくため、スポーツを通じて「まちづくり」に積極的に取り組もうとしている全国の自治体を応援する、スポーツ庁長官「スポーツ・健康まちづくり」優良自治体表彰を立ち上げました。

第1回目となる今年度の「スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰2021」は12月表彰予定ですが、その場では、全国からの創意あふれる「まちづくり」のアイデアを目にすることができるものと思います。今後の動きにご注目ください。

自治体の自由な発想を実現させるお手伝いをしたい

地域振興担当課長の原口参事官に詳しいお話を伺いました。

スポーツ庁地域振興担当 原口参事官スポーツ庁地域振興担当 原口参事官

Q.いろいろお話をうかがわせていただきます。よろしくお願いします。

原口参事官

よろしくお願いします。
スポーツ庁というと、一般の方が思われているのは、オリンピック・パラリンピックや国際競技大会などの競技振興、スポーツ「の」振興の役所というイメージが強いのではないかと思います。実際には、スポーツ「による」振興、他の目的の実現のためにスポーツを活用することにも積極的に取り組んでいます。近年では、特に「地方創生」の分野に力を入れています。

Q.地方創生に注力しているのはどうしてですか。

原口参事官

地方を中心とした人口減少、地域衰退が言われるなか、「地方創生」は、スポーツ庁だけでなく政府全体の国家的課題となっています。スポーツ庁としても、「スポーツ」という素晴らしいツールを、スポーツ×「地方創生、まちづくり」に積極的に活用して、全国各地での「地方創生」のお手伝いをしたいと考えています。

Q.各地方自治体でも、健康スポーツ教室を開催したり、プロスポーツ選手が田舎で農業をやって地域振興に取り組みながら、競技活動に励んでいると言った話も報道で目にしたことがあります。

原口参事官

確かに、これまでも、スポーツツーリズムによる地域経済活性化、総合型地域スポーツクラブによる地域振興、地元プロスポーツと地域との連携、障害者スポーツを通じた住民の共生交流など、スポーツを活用した地域振興の動きはあります。しかし、まだまだ面的な広がりにはなっていないし、全国的な大きな流れにはなっていないのも事実です。
全国でスポーツを活用した特色ある「まちづくり」のムーブメントを作りたくて、今回、スポーツ×地方創生、まちづくり プロジェクトを始動させました。

Q.これまで大きなムーブメントとなってこなかった理由は?

原口参事官

いろいろな要因があるかと思いますが、一つには、これまではスポーツ政策の延長にとどまり、必ずしも、積極的に「まちづくり」政策として正面から捉えてこなかったこともあると思います。
例えば、自治体でいえば、それはスポーツ部局の案件、あるいは、障害者部局の案件といったように、既存の枠の中に押し込めて考えがちだったのではないでしょうか。
スポーツ×「地方創生、まちづくり」を進めていくに当たっては、「スポーツ」から「まちづくり」にアプローチするのではなく、「まちづくり」から「スポーツ」にアプローチしていく、逆転の発想が大事だと思っています。そこから、「まちづくり」の実現に向けて、「スポーツ」を最大限活用する発想が出てくるのではないでしょうか。

Q.タテ割りの打破ということですか。

原口参事官

タテ割りの弊害がよく言われますが、タテ割りはタテ割りで、一つの分野に集中してより深く追求できる良さがあると思います。
タテ割りの良さは活かしつつ、タテ割りの組織・業務に「まちづくり」というヨコ串を入れることで、「スポーツ」に囚われ過ぎず、スポーツを最大限活用する斬新な発想に繋がる、また、タテ割りの垣根を超えた、スポーツ×まちづくりという「掛け算」的な発想が生まれるのだと思います。
「まちづくり」ですから、単にスポーツ部局など一部の部局だけではなく、首長や企画部局などまちづくりを担う部局を中心に、「自治体をあげて」取り組むことが必要だと思います。またこれによって自治体の組織や機能、発想というものが活性化されるのではないでしょうか。

Q.スポーツを活用した特色ある「まちづくり」を進めていくにあたり、自治体の現場へ向けて、いくつかアドバイスいただければ。

原口参事官

各地域での具体的な「地方創生、まちづくり」の内容は、それぞれの地域の特色や各自治体の創意・工夫により、多種多様なものとなると思いますし、そうなることを期待しています。その上で、共通する事項について、3点ほど申し上げたいと思います。

最初に1点目。「スポーツ」を、「競技スポーツ」だけではなく、体を動かす日常的な行為全般を広くスポーツと捉えれば、それぞれの地域には、実は、まだまだ気付いていないさまざまなスポーツ資源があると思います。この機会に、よく地域のスポーツ資源を棚卸ししてみていただければと思います。

次に2点目。今活用されている地域のスポーツ資源も、活用し「倒す」ことができているだろうかと、今一度、客観的に見直して、さらに活用し倒していただきたいと思います。

最後に3点目。スポーツを活用した「まちづくり」とは、単にスポーツを活用した地域振興をやること、例えば、単発のスポーツイベントや健康スポーツ教室を開催すればよいといったことではありません。

あくまで「まちづくり」であり、スポーツを活用したさまざまな取り組みを組み合せ、総合的に行い、かつ、将来までも見据えながら持続的に行っていくことが重要ということを改めて意識されると良いと思います。
以上の三点を踏まえて、特色ある「まちづくり」を考えていただければ、よろしいかと思います。

Q.最後に、今年2021年度のスポーツ庁長官「スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰2021」の予定を教えてください。

原口参事官

今回、第1回目の表彰となります。まちづくり計画の募集〆切は、9月30日(木)となっています。12月中下旬に都内で開催予定の表彰式典では、室伏スポーツ庁長官から首長の皆様へ表彰状を授与いたします。
創意あふれる「まちづくり」のアイデアが多くの自治体から出てくることを期待しております。ご関心ある方は、ぜひ、メール等で、お気軽にお問合せを!以上です。

Q.ありがとうございました。

原口参事官

ありがとうございました。スポーツ×「地方創生、まちづくり」!!に向けて、共に、頑張っていきましょう!

まとめ

これまでもスポーツを軸にした地方活性化事例はありましたが、主導していたのは、自治体の限られた部門や、特定の競技団体・競技会場などで、いわば「点」としての活動でした。今後、各地域に眠っているスポーツ資源を掘り起こし、地域・自治体全体による垣根を越えた「面」によるスポーツをツールとした「まちづくり」には、まだまだ可能性が秘められているのではないでしょうか。「スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰」を機に新たなアイデアが出てくるのが楽しみです。

●本記事は以下の資料を参照しています

スポーツ庁 - 「スポーツ・健康まちづくり」に取り組もうとする自治体を応援します!-「スポーツ・健康まちづくり」優良自治体表彰制度-(2021-08-01閲覧)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop09/list/detail/1384512_00002.htm
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop09/list/detail/1384512_00003.html

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