サッカー界全体と地域が協力して7つの障害者サッカーをアシスト!
これまでスポーツの分野においては「障害者」と「健常者」は分けて捉えられ、各競技を管轄する団体は大半の競技が「障害者団体」と「健常者団体※1」が個別に存在している状況です。
行政でも、かつては障害者スポーツの所管は「厚生労働省」でしたが、現在はスポーツ庁に業務が移管され、例えばトップアスリートの強化では「オリパラ一体化」の方針で取組が進んでおり、自治体レベルでも障害者スポーツの管轄を福祉部局ではなくスポーツ部局に一元化する動きが一定程度認められます。しかし、活動ベースでは、まだまだ「障害者」と「健常者」で個別に実施されているのが現状です。
このような課題に対応して水泳界では2013年10月に3つの障害種の水泳団体を構成員に日本障がい者水泳協会を設立し、2014年2月に日本水泳連盟に加盟。2016年4月には日本サッカー協会の傘下団体として7つの障害種のサッカー団体を構成員に日本障がい者サッカー連盟を設立。また、2018年4月には日本バスケットボール協会の傘下団体として4つの障害種のバスケットボール団体を構成員に日本障がい者バスケットボール連盟が誕生しました。
このような障害の有無や障害の種類に関わらない連携が活発になり、課題の解決等が図れることが望まれます。
今回はサッカー界の取組についてレポートしていきます。
※1 現在、障害種に応じたルール変更・設定を行った競技ごとに個別に競技団体が組織されることが一般的であり、結果として、一般の競技団体が健常者を対象とした競技団体となっている状況にある。
障害の有無を問わず、みんなが一緒に1つのボールを追いかける
現在、障害者サッカーは下記のとおり障害別に7つの団体が存在。 日本障がい者サッカー連盟はこれら団体と日本サッカー協会を繋ぐ役割として活動しています。
パートナー制度、補助金制度の運用、障害者サッカーに関する情報発信をはじめ、指導者を増やすために登録制度を定め、講習会などを開催したり、手話通訳の補助制度を運用したりしています。
また、2017年には、これまで団体ごとに異なっていた日本代表ユニフォームを統一。ますます障害者サッカーチームの世界での活躍が期待されています。
- ①日本アンプティサッカー協会(切断障害)
- ②日本CPサッカー協会(脳性麻痺)
- ③日本ソーシャルフットボール協会(精神障害)
- ④日本知的障がい者サッカー連盟(知的障害)
- ⑤日本電動車椅子サッカー協会(重度障害等)
- ⑥日本ブラインドサッカー協会(視覚障害)
- ⑦日本ろう者サッカー協会(聴覚障害)
2016年から「インクルーシブフットボールフェスタ」を継続開催
日本障がい者サッカー連盟では、2016年から障害者も健常者も混ざり合ってサッカーを楽しめる「JIFF インクルーシブフットボールフェスタ」を開催。
地元サッカー協会やJリーグクラブ、Fリーグクラブ、なでしこリーグクラブの関係者らも協力して、共生社会の実現に向けた活動を行っています。
インクルーシブフットボールフェスタのプログラム内容は、「障がい者サッカー体験会」「キフティング(寄付×リフティング)」「まぜこぜサッカー」「まぜこぜスマイルウォーキングサッカー(誰でも参加)」といったものが行われています。
- ◆障がい者サッカー体験会
- アンプティサッカー、電動車椅子サッカー、ブラインドサッカーをすべて体験できるプログラム。参加者からは「難しいけど楽しい」という声があがっています。
- ◆キフティング(寄付×リフティング)
- リフティング100回にチャレンジし、その成功回数×10円を寄付するもの。個人のチャレンジを社会貢献につなげるアクティビティです。
- ◆まぜこぜサッカー
- 小学生を対象として、学年や性別に関係なくチームを組みます。各チームともアイスブレイクの時間を長く設け、よりチーム内の交流を深めてから試合にのぞんでいました。
- ◆まぜこぜスマイルウォーキングサッカー
- 障害の有無も種別も、子どもも大人も関係なく、誰でも参加。このサッカーでは「歩く」が前提ルール。だから、年配の人でも、未就学児でも、電動車椅子の人でも、さまざまな「違い」のあるメンバー同士が、力を合わせてボールを繋ぎ、笑顔で交流を行っています。
これまでインクルーシブフットボールフェスタは地元企業の協賛や地域のサッカー協会・サッカークラブの協力を得ながら東京・広島で開催されています。今年度は茨城県での開催も決定しており、今後は更なる全国展開を目指しています。
全国9地域で障害者団体と健常者団体の連携を促進
現在、新たな取組として、誰もが、いつでも、どこでもサッカーを楽しめる環境づくりの推進と、地域における障害者サッカーと健常者サッカーの連携を図るため、全国9地域(北海道、東北、北信越、関東、東海、関西、中国、四国、九州)で「9地域障がい者サッカー連携会議」を開催。
競技団体は、全国レベルの団体では、健常者団体と障害者団体が別個に存在する状況にありますが、地域レベルでは、そもそも障害者スポーツの競技の地方団体・都道府県協会が存在しない場合が多く、地域における障害者スポーツ競技の普及に向けた大きな壁になっています。
そこで、この新たな取組では、地域における障害者サッカー団体と、都道府県サッカー協会・Jリーグクラブ・Jリーグ百年構想クラブによる協力体制を整備することを目指しているのです。
2019年度スポーツ庁委託事業「障害者スポーツ推進プロジェクト(障害者スポーツ団体の連携及び体制整備への支援事業)」を 日本障がい者サッカー連盟が受託して、これまで日本サッカー協会が各都道府県FAと行ってきた会議をさらに拡大したものがこの「地域連携会議」となります。
サッカーから他の競技団体へと水平展開できるモデルとして情報公開することにより、 各団体の継続的な活動に繋がることが期待されます。
一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟 : 【メディアリリース】JFAとJIFFが協働し、全国9地域で障がい者サッカー連携会議を初開催〜日本障がい者サッカー連盟が2019年度スポーツ庁委託事業「障害者スポーツ推進プロジェクト」を受託
https://www.jiff.football/news/20191021-jiff/
今回、「9地域障がい者サッカー連携会議」が行われたのは北信越エリアで、2020年1月19日に長野県松本市の「やまびこドーム」で行われました。
会議では、始めに日本サッカー協会およびJIFFの取組事例が紹介され、続いて、Jリーグ加盟のプロサッカーチーム「松本山雅FC」、北陸初のブラインドサッカーチーム「ツエーゲン金沢」、「長野県サッカー協会」から、それぞれの取組について発表が行われました。
その後、参加メンバーの自己紹介を兼ねた取組事例が語られ、それぞれが抱える問題点を取り上げたグループディスカッションが行われました。
この会議を通じて、互いの課題や取組のアイデアを知り、参加者同士の理解を深めていました。今後、地域を中心に新たな繋がりへと発展していく予感がみられます。
参加者の声のなかには「接点が少なかった団体同士が顔を合わせて情報を共有できたことは大きい」「今後、団体同士が協力しながら共同イベント開催ができたら」などといったコメントが語られていました。
まとめ
日本障がい者サッカー連盟のキャッチコピー「サッカーなら、どんな障害も超えられる。」のとおり、サッカー界全体で「障害者サッカー」をサポートしていく姿が見られました。
インクルーシブフットボールフェスタで行われた障害者も健常者も、年齢も性別も分け隔てなく一緒にプレイできる「ウォーキングサッカー」では、参加者全員が笑顔で1つのボールを追いか、「共生社会」の素晴らしさを体現。まさに「スポーツ」のもつ可能性を示していました。
今回の日本障がい者サッカー連盟のような動きは、他のスポーツ競技でも参考になるものではないでしょうか。
●本記事は以下の資料を参照しています