パラスポーツの“クラス分け”とは何か?〜JPCクラス分け情報・研究拠点〜
今春2024年4月、公益財団法人 日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会(以下、JPC)が「JPCクラス分け情報・研究拠点」を開所しました。パラリンピックをはじめとしたパラスポーツ大会に出場する条件となる「クラス分け」について、国内外の情報を収集・発信して活用する拠点です。設置されたのは東京北区にあるナショナルトレーニングセンター。ハイパフォーマンスアスリートや競技団体が集まる環境を活かして、クラス分けの体制整備に取り組みます。
“クラス分け”は「パラスポーツの礎」
まず、“クラス分け”という言葉に馴染みのない方も多いと思いますので、“クラス分け”について説明 します。
“クラス分け”とは、競技に参加できる人とできない人を定め、アスリートを障害の種類や程度によってカテゴリー分けする作業です。パラスポーツにとってクラス分けなくして競技としてのスポーツは成立しません。パラスポーツでは、障害の種類、障害の程度によって出場できるカテゴリーが決められています。さらに、競技・種目ごとに必要な動作や技術が異なるため、各競技でクラス分けの仕組も変わってきます。
1948年から、診断名や病態などの医学的な診断を基にした「医学的クラス分け」が行われていましたが、選手の残存している身体機能を基準にした「機能的クラス分け」の必要性が求められ、バルセロナ1992大会以降、急速に世界中で普及していきました。
“クラス分け”を行うのは、「クラシファイア(Classifier)」と呼ばれる専門家です。医学的、運動生理学的、スポーツ科学的な知識を持ち、選手の障害の種類や程度に応じて、適切な競技クラスを決定する役割を担っています。なお、国際大会でのクラス分けは専門の資格を持つ国際クラシファイアしか審査することができません。
パラスポーツの根幹をなす“クラス分け”
“クラス分け”はパラアスリートとって重要なものです。公正に競技を行うためでもあり、選ばれたカテゴリーによって競技の卓越性にも大きな影響を与えます。アスリートが異なるカテゴリーにクラス分けされると、より障害の軽い選手と競い合うこともあります。また、成長期を迎える若い選手などは、身体の成長・発達によって障害の程度が変化し、カテゴリー変更となるケースがあります。一方、自分が有利になるように障害が重いように見せる事例もあり、問題となっています。
なぜ、JPCクラス分け情報・研究拠点が必要なのか?
競技成績への影響の大きさから、国内でも“クラス分け”の体制整備を求める声がたくさんありました。現在、中央競技団体(以下、NF)ごとにクラス分けが行われています。クラス分けは、国際パラリンピック委員会(以下、IPC)の規程と国際競技連盟(IF)の規則に沿って行われていますが、NFによっては、ルール変更や国内外の最新動向など情報収集に差が出ていました。そのほかにも、人材不足、研修会の実施ができていないなどの課題がありました。
このような課題を解決するために設置されたのが「JPCクラス分け情報・研究拠点」です。
主な活動としては、以下のようなものがあります。
- ●教育・研修
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- クラシファイア・クラス分け担当者の育成教育
- アスリート・コーチ・スタッフ・ドクター等へ競技横断的な教育・研修
- ●国際情報の収集・共有
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- 競技別、障害別の最新情報の取得、NF共有
- IPC等の国際動向(コード改正等)の取得、NF共有・検討調整
- ●クラス分けに係る書類作成・測定支援
- ●研究・調査
- ●アスリート情報の管理
今後は国内外のネットワークを活かし、クラス分けの体制整備に向けて支援を行っていくということです。
まとめ
いよいよパリ2024パラリンピック開催までカウントダウンがはじまり、パラスポーツへの注目も高まっています。今回の記事では、パラスポーツにおける「クラス分け」の重要性、そしてパラアスリートが公平に競い合える環境の実現に向けた「JPCクラス分け情報・研究拠点」の開所についてお伝えしました。この夏はぜひ、選手の出場クラスにも注目しながら、パラアスリートたちの熱い戦いをご覧いただければと思います!
●本記事は以下の資料を参照しています
公益財団法人 日本パラスポーツ協会(2024-07-01閲覧)
公益財団法人 日本パラスポーツ協会 - JPCクラス分け紹介ビデオ(クラス分け委員会 クラス分け情報・研究拠点)(2024-07-01閲覧)