秋田の名産“米”愛による、スポーツと地域の共創ビジネス〜地域版SOIPデモデイ2023〜

秋田の名産“米”愛による、スポーツと地域の共創ビジネス〜地域版SOIPデモデイ2023〜

今年3月21日、令和5年度『SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD』のデモデイ(成果発表会)が都内にて開催され、10の共創プロジェクトの中から、秋田ノーザンハピネッツ × エーエスピー『秋田米を活用したローカルヘルシーフードの開発』が最優秀賞に選ばれました。地元名産の“米”とスポーツの共創プロジェクトとはどのようなものかご紹介します。

地域版SOIPデモデイとは

スポーツ庁では、スポーツを核とした地域活性化の実現に向け、地域におけるスポーツオープンイノベーションプラットフォーム、通称SOIP(ソイップ)の構築を目指す「地域版SOIP」を推進し、地域に根差したスポーツチーム・団体と他産業界との連携による新規事業の創出を支援しています。『SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD』は、地域版SOIPの一環として行われ、今年度(2023年度)で3回目を迎えます。今年度は「東北」「関東」「九州」の3エリアから10の共創プロジェクトが誕生。地域サポーターとメンターの協力のもと、事業化に向けた取り組みが行われました。

地元・秋田の“米”愛で始まった共創ビジネス

2023年度の最優秀賞に選ばれたプロジェクトは、秋田ノーザンハピネッツ × エーエスピー『秋田米を活用したローカルヘルシーフードの開発』です。

秋田のプロバスケットボールチーム“秋田ノーザンハピネッツ”は、「スポーツを通じて秋田を元気にしていきたい!」という想いから、「県民球団宣言」を掲げてチーム運営を続けています。スポーツ事業のほか、地域の人々に愛されるチームづくりの一環として、“飲食事業”、“道の駅事業”などにも取り組み、その中の“子ども食堂事業”を通じ、秋田の「米余り」問題に強い危機感を持ったといいます。

共創パートナーは、未活用農水産物を活用したファブレス製造業(※)の“エーエスピー”です。地元の名産“米”愛を掲げる企業同士によってプロジェクトが立ち上げられ、過剰米を使った新たな食品の開発に乗り出しました。

※ファブレス製造業=自社で工場や生産設備を所有せず、製造業としての活動を行うメーカーおよびビジネスモデルのこと

地元・秋田の“米”愛で始まった共創ビジネス:スライドイメージ

ヘルシーフード開発のきっかけは“秋田名産きりたんぽ”?!

共創ビジネスは3つの柱から成り立ち、コンセプト作成と食品開発が行われました。

共創ビジネス 概要:スライドイメージ

①安心な食品で健康をサポート
無添加かつ高たんぱく質な食品で保護者も安心
②プロスポーツ選手も食べる食品
子どもたちの夢であるスポーツ選手も愛用
③隠れフードロスの削減
秋田県産の米を活用して秋田の生産者に貢献

手軽に食べられる無添加で高たんぱくな『お米プロテインバー』

商品はスポーツに打ち込む子どもの保護者らをメインターゲットに考えられました。無添加かつ健康的でありながら、腹持ちが良く手軽に食べられる食品として浮上したのが「きりたんぽ」でした。秋田の名産であるお米を活用した伝統食品「きりたんぽ」をヒントに『お米プロテインバー』のアイデアが生まれ、新市場創出に乗り出すことになりました。

SOIPデモデイでは、『お米プロテインバー』を発想した理由について以下のように語っています。

「アスリートの方は、おにぎりをよく食べるという話を聞いていますが、市販のおにぎりには添加物が含まれていることが多いです。同様に手軽に栄養を摂取できるプロテインにも添加物が含まれています。無添加で安心して食べられ、アスリートのパフォーマンスを上げることができる米食品が『きりたんぽ』でした。しかも常温で保管ができる特性も“強み”といえます」

地元企業のネットワークをはじめ、秋田ノーザンハピネッツの選手やトレーナーからの意見も取り入れながら『お米プロテインバー』の開発が進められました。

コンセプト:スライドイメージ

プロテインが取れる商品のポジショニング:スライドイメージ

試食イベントで保護者たちへアンケート調査

試作品が完成し、メインターゲットである保護者らユーザーに受け入れられるのか、秋田ノーザンハピネッツのホームゲームで試食イベントを開催。「ごまきなこ味」「みそかつお味」「いぶりがっこチーズマヨ味」の3種類が用意されました。試食ではいずれの味も好評で、50名のアンケートを目標にしていたところ、予想よりも早くアンケート数を達成し、55件の回答が得られました。アンケートの67%は20〜50代の子育て世代が占め、保護者からは子どもに食べさせたいという回答が多く寄せられました。

秋田県民へ、全国へ、新たな米市場を創出

プロジェクトに株式会社ジェイエイ秋田しんせいサービスを加え、新会社の設立を目指しています。製品開発・製造・販売を行い、県内販路を活かして秋田県民に広め、全国的な販売網も構築できるように動き出しているようです。来年2025年4月には販売開始を計画しており、大阪関西万博への出店も決まっています。国内外に向けて『お米プロテインバー』のPRが積極的に行われます。今後は『お米プロテインバー』以外にも、秋田県内の未活用農水産物を活用しながら、他の栄養成分が摂取できるような商品開発も計画されています。

SOIPデモデイのプレゼンテーションの最後には、このようなことが語られました。

「本事業が農林水産省ではなく、スポーツ庁の事業をきっかけに、スポーツチームと食品会社という組み合わせでオープンイノベーションが実現したことに感謝しています。今後も新しい“米”の使用創出で、次世代の子どもたちに伝えていきたいと思います」

今回のデモデイに参加してみて

秋田ノーザンハピネッツ、エーエスピーの両担当者に、『SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD』に参加した感想を伺いました。

−今回のプロジェクト、共創してみて良かったことを教えてください。

秋田ノーザンハピネッツ
良かったこととして、共創パートナーのエーエスピーさんとの出会いがあります。スポーツオープンイノベーション推進事業に参加しなければ、おそらく出会うことがなかったからです。エーエスピーさんの持つノウハウ・リソースと秋田ノーザンハピネッツの持つノウハウ・リソースを上手く組み合わせることでプロジェクトを推進することができた点も良かったです。

エーエスピー
お米の消費が減り、米離れ、米余りが長く言われている中で、今回のスポーツという観点のプロジェクトで共創したからこそお米を使った新しい価値は生まれたと思います。また秋田ノーザンハピネッツさんの地元の郷土料理をベースに食文化の継承について考える良いモデルにもなり、波及効果も大きいと感じています。

−開発を進める中で苦心されたこと、また何か気づきはありましたか?

秋田ノーザンハピネッツ
私たちのプロジェクトでは「お米プロテインバー」の開発・商品化を目指しています。これは秋田県の郷土料理である「きりたんぽ」をベースにしています。従来きりたんぽは、鍋に入れる、味噌を塗って焼くといった食べ方が主流でした。しかし今回は電子レンジで温めることで手軽にプロテイン摂取もできる元氣食品というかたちでの開発を試みました。この発想自体はイノベーティブかなと思いますが、ここに至るまでの議論には産みの苦しみが伴っていたように思います。

エーエスピー
さまざまなターゲットに展開するため、コンセプトの検討に何度も原点に立ち返り、何のために取り組んでいるのか、両者の米愛を確認しながら進めることで乗り越えられたように思います。技術的には無添加でたんぱく質を摂取すること、保存料を使わないことにこだわったことで苦心しましたが、短い期間だったことが逆に熱量を維持して走り抜けることができた気がします。

−SOIPデモデイに参加された感想をお願いします。

秋田ノーザンハピネッツ
デモデイでは私たち以外の共創プロジェクトの事例を聞くことができ、大変参考になりました。また、デモデイに向けて自身のプロジェクトの内容を磨いていくことができましたので、そういう意味でも良い機会になったと思っております。

エーエスピー
デモデイでいろいろなご縁をいただき、ビジネス機会の創出にも繋がりました。特に最優秀賞に選んでいただけたことで「お米プロテインバー」自身だけでなく、お米の可能性やフードロスのアップサイクルに関心を持っていただける方、共感いただける方が確実に増えたと実感しております。貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

まとめ

今回の秋田ノーザンハピネッツ、エーエスピーによる共創ビジネスのプロジェクトに見られるように、『SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD』も数を重ねるごとに各プロジェクトによる提案の具体性と実装スピードが高まってきました。スポーツと他産業のオープンイノベーションへの可能性を示す場である地域版SOIPを通じて、スポーツ庁は引き続き、事業者の参加を歓迎し、挑戦を今後とも応援していきます。

●本記事は以下の資料を参照しています

地域版SOIP スポーツ産業の新たな可能性(2024-06-01閲覧)
10の共創プロジェクトが実証実験の成果をプレゼン!スポーツと他産業の連携によって生まれた新たな事業とは?――地域版SOIPデモデイレポート<後編>(2024-06-01閲覧)

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