スポーツに国境はない! スポーツを通じた国際貢献「スポーツ・フォー・トゥモロー」でつなげる世界の輪

スポーツフォートゥモロー

2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会まで、早いもので残り2年を切りました。サッカーワールドカップロシア大会での日本代表の活躍が記憶に新しいサッカーでは、「東京五輪世代」にあたるU-21日本代表男子チームが今年3月に南米のパラグアイに遠征。パラグアイ、チリ、ベネズエラのU-21代表チームと4ヶ国対抗の国際交流大会を行いました。この遠征で、森保一監督(現在は五輪代表と日本代表監督を兼任)が率いる若い選手たちは、貴重な実戦経験を積むことができました。

しかし、この遠征の目的はチームの「強化」だけではありませんでした。
合宿や試合に励む一方で行われていた選手たちの「国際交流」を、みなさんはご存知でしょうか?

スポーツの喜びを届ける「スポーツ・フォー・トゥモロー」を知っていますか?

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滞在中にU-21日本代表チームは在パラグアイ日本国大使館と協力し、現地日系人向けのサッカー交流会で子供たちと触れ合いました。また「ガールズフェスティバル」という催しも行われ、日本サッカー協会の女性コーチが南米各国の女性指導者向けに講習会を開き、地元の女の子を集めたサッカークリニックが実施されました。

こうした交流は、日本政府が推進する「スポーツ・フォー・トゥモロー(SFT)」プログラムの一環で行われています。SFTとは、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催国として、開発途上国を中心とした100ヶ国・1000万人以上を対象に官民協働で行うスポーツ国際貢献・交流事業です。言語や文化を超えてスポーツの価値や喜びを世界中の人々に届けていこうという取組で、2020年東京大会招致のプレゼンテーションにて、安倍総理が世界に向けて約束しました。

 「スポーツ・フォー・トゥモロー」の3つの柱

スポーツ・フォー・トゥモローには、「スポーツを通じた国際協力および交流」「国際スポーツ人材育成拠点の構築」「国際的なアンチ・ドーピング推進体制の強化支援」と大きく3つの柱があります。

1つ目の柱「スポーツを通じた国際協力および交流」では、外務省やJICA(独立行政法人国際協力機構)などの活動が知られていますが、スポーツ庁は、我が国がこれまでに積み重ねてきた体育教育やスポーツ政策の実績を生かし、途上国の「学校体育カリキュラム策定支援」を行っています。

2016年12月には、カンボジアの中学校体育科教育の指導内容確立を目的とし、関係機関と連携を図りながら作成された指導要領がカンボジア教育・青年・スポーツ大臣に認定され完成しています。これによってカンボジア全国の中学生が同じ理念を持って体育の授業を受けられる基盤ができ、体育教育の発展において重要な役割を担うことができました。これもまた、SFTの大きな実績と言えるでしょう。

また、意義深いものの一つに「パラリンピック参加国・地域拡大支援事業」があります。パラリンピック参加国は、2012年ロンドン大会で過去最多の164ヶ国を記録。2020年の東京大会ではさらに多くの国や地域の参加が期待されています。オリンピックと一体になってパラリンピックを盛り上げ「より多くの人がパラスポーツの価値を感じられるようにしたいーー」、そんな思いの下でさまざまな国で実現に向けた支援を広げています。

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SFTの柱の2つ目が「国際スポーツ人材育成拠点の構築」ですこれは未来の国際スポーツ界のリーダーを育成することを目的にした取組で、国内外の若者などを対象とした大学院修士コースの開設、日本文化とスポーツマネジメントを学べる短期セミナーの開催などが挙げられます。

スポーツ庁で取組んでいる「スポーツ・アカデミー形成支援事業」では、筑波大学、日本体育大学、鹿屋体育大学にスポーツ・アカデミーを設置。IOC委員など国際的に活躍するスポーツ関係者を外国人教員として招くなどして、将来的に国際スポーツ界の核となれるような人材を養成する拠点としています。

さらにSFTの3つ目の柱となるのが「国際的なアンチ・ドーピング推進体制の強化支援」です。スポーツ庁と日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が中心となる取組で、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)やUNESCO(国際連合教育科学文化機関)などの国際機関や各国・地域のアンチ・ドーピング機構、スポーツ関係機関と連携し、活動を世界的に普及・促進していくための支援やパートナーシップ構築などを行っています。

2017年度末までに202の国と地域、664万人にスポーツの価値を届けています。

SFT事業で活動するコンソーシアム会員の輪

SFT事業は、SFTの趣旨に賛同し、スポーツを通じた国際貢献に携わる国内スポーツ団体などからなる「コンソーシアム会員」の協力により成立しています。

SFTコンソーシアムはスポーツ庁や外務省などの政府機関のみならず、さまざまな会員団体で構成されています。各競技の協会・連盟やプロスポーツリーグ、クラブといったスポーツ関連団体から、NGO・NPO団体、地方自治体や学校法人、さらに民間企業まで幅広く参加しており、現在の会員団体数は約400にのぼっています。各団体が行う独自の活動をSFTの「認定事業」とし、さまざまな形でスポーツの価値が届けられているのです。

国や障害の垣根を越えた認定事業による取組

もちろんその活動は先に紹介したサッカーに限らず、多岐にわたります。たとえば空手では、コートジボワールやサウジアラビアといった国々に指導者や専門家を派遣し、現地で空手道場の開設や大会の開催を支援しました。競技用具の寄贈事業もあり、日本卓球協会は民間企業からの協力のもと卓球ボール1200ダース分を54ヶ国に送っており、さらに一宮町サーフィン業組合はサーフボードを民間企業に輸送してもらい、世界の社会課題への解決に取組むNGOの協力を得て南アフリカに寄贈する活動を行いました。

一方では、ナイジェリア連邦共和国青年スポーツ省との連携で現地の有望なアスリートが日本の高校に3年間留学できる制度を運営し、現地で不足しているスポーツ用具をSFT会員に呼びかけ寄付をした団体もあります。2015年に震災被害に遭ったネパールで「ネパール震災復興支援野球大会」を開催し、野球を通じて現地の状況を把握しながら、物質的・精神的支援を行っているNPO法人も存在します。

障害者スポーツ

他にも障害者スポーツに関係している活動もいくつかあります。たとえば柔道では、ジンバブエ、南アフリカ、ザンビア、マラウイといったアフリカ諸国の協会・連盟を、「視覚障害者柔道を紹介する講習会」に招く試みが行われました。他にも、ケニアの盲学校でクライミングクリニックを開催してスポーツの楽しさを伝える活動や、日本パラ陸上競技連盟と連携してパラリンピアンを講師に迎え、大腿切断者向けのランニングクリニックを実施した企業もありました。

 まとめ

「スポーツが変える。未来を創る。Enjoy Sports, Enjoy Life」

このスローガンの下、スポーツをきっかけに「世界とつながる」のが、SFTのプログラム。2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催という世界の注目が集まっている今だからこそ、私たち日本人は世界中にスポーツの価値を発信することができると考えています。

スポーツ・フォー・トゥモローは、これからもさまざまな形で世界の国々へスポーツの価値を届けていきます。「スポーツの力で輝くことにより、前向きで活力ある社会と、絆の強い世界を創る」。その未来のために――。

 ●本記事は以下のスポーツ庁発表の資料を参照しています

スポーツ庁 ― SPORT FOR TOMORROW(2018-08-01閲覧)
スポーツ庁 ― 国際交流・国際協力(2018-08-01閲覧)

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