あなたの1日の身体活動を「運動強度(METs)」で見える化しませんか!

あなたの1日の身体活動を「運動強度(METs)」で見える化しませんか!

スポーツ庁の調査※1では、8割近くの方が運動不足を感じているようですが、皆さんはいかがでしょうか。新型コロナウイルス感染症の影響で新しい生活様式になったことにより、自らの生活習慣、一日の過ごし方に目を向けるようになった方も多いのではないでしょうか。

※1 (出典)スポーツ庁 - 令和3年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」

さて、『「運動強度(METs)」で見る、効果的な身体活動は?』では、様々なスポーツ活動の強度について解説しました。今回は、「運動強度(METs)第2弾」として、一日の過ごし方を振り返りながら、私たちのエネルギー消費量について考えてみたいと思います。

日常生活における仕事や家事などの身体活動量は数値化できる

最近、「体重が増えた」、「ズボンやスカートのウェストがきつくなった」、「運動不足を感じる」などということはありませんか。まずは、自らの生活習慣、一日の過ごし方を数値化して振り返り、生活の中に取り込めるスポーツを見つけて「Sport in Life」を目指してみてはいかがでしょうか。

『「運動強度(METs)」で見る、効果的な身体活動は?』でお示ししたように、「自転車で通勤する」「掃除機をかける」「子どもと遊ぶ」など、日常生活活動でも、「卓球」や「バドミントン」、「アクアビクス(水中運動)」や「軽い筋力トレーニング」などと同じように、エネルギーを消費することが可能です。日常生活におけるさまざまな身体活動の強度は数値化でき、その単位を「メッツ(以下、METs)」で表します。METsは、安静時(横になったり、座って楽にしている状態)を「1」とした時と比較して、何倍のエネルギーを消費するのかが分かります。METsを知った上で、1日の過ごし方を工夫すれば、手軽に「Sport in Life」を実現できます。

働き盛りの「ビジネスマンSさん」と、仕事と子育て両立中の「ワーキングマザーMさん」の1日

20代後半男性「ビジネスマンSさん」は一人暮らしで、郊外のアパートに住み、都心の職場に通っています。スポーツが好きで、学生時代は友人たちと一緒にフットサルチームで活動していましたが、就職してからはやめてしまいました。また、仕事はデスクワークが多く、最近、お腹周りが気になってきました。

30代前半女性「ワーキングマザーMさん」は夫と4歳の娘の家族三人暮らしで、地元企業の事務職員として、子育てしながら働いています。学生時代から運動は苦手でしたが、ママ友に誘われて地域のヨガ教室に通っていました。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響でヨガ教室の休講が続いたため、退会してしまいました。最近、運動不足を感じています。

二人とも定期的に運動・スポーツを行っていましたが、生活環境の変化に伴い運動・スポーツをする機会が減ってしまいました。

そこで、現在の二人の1日の行動をMETsを用いてグラフ化(見える化)してみました。

※身体活動量は、強度(METs)×時間(分は時間に換算)で計算します。

●ビジネスマンSさんの1日

いつものSさん:グラフ

時間 所要時間
(分)
活動内容 身体活動
強度(METs)
身体活動量
(METs・時)
6:00 (15) 起床、支度 2.0 0.5
6:15 (30) 朝食 1.5 0.8
6:45 (40) 朝食の片付け、身支度 2.0 1.3
7:25 (15) 通勤 駅まで自転車 4.0 1.0
7:40 (45) 電車 1.3 1.0
8:25 (5) 会社まで徒歩 2.5 0.2
8:30 (60) 仕事 デスクワーク 1.5 1.5
9:30 (15) 社内ミーティング(着座) 1.5 0.4
9:45 (135) デスクワーク 1.5 3.4
12:00 (10) 昼休み 昼食場所まで徒歩(往復) 2.5 0.4
12:10 (50) 昼食 1.5 1.3
13:00 (60) 仕事 来客対応(着座) 1.5 1.5
14:00 (240) デスクワーク 1.5 6.0
18:00 (5) 通勤 駅まで徒歩 2.5 0.2
18:05 (45) 電車 1.3 1.0
18:50 (30) 自宅最寄駅前スーパーで買い物 2.3 1.2
19:20 (15) 自宅まで自転車 4.0 1.0
19:35 (10) 夕食の支度 2.0 0.3
19:45 (50) 夕食 1.5 1.3
20:35 (20) 夕食の片付け 2.0 0.7
20:55 (20) 風呂掃除 2.0 0.7
21:15 (20) 洗濯 2.0 0.7
21:35 (45) 休憩:テレビ、読書など 1.3 1.0
22:20 (30) 入浴 1.5 0.8
22:50 (10) 身支度 2.0 0.3
23:00 就寝
合計 28.5
●ワーキングマザーMさんの1日

いつものMさん:グラフ

時間 所要時間
(分)
活動内容 身体活動
強度(METs)
身体活動量
(METs・時)
6:00 (60) 起床・朝食の支度と弁当づくり 2.0 2.0
7:00 (30) 朝食 1.5 0.8
7:30 (10) 朝食の片付け 2.0 0.3
7:40 (25) 子どもの通園準備など 2.5 1.0
8:05 (30) 掃除・洗濯などいろいろな家事 2.8 1.4
8:35 (15) 身支度 2.0 0.5
8:50 (10) 通勤 職場まで自転車で移動(約5分) 4.0 0.7
9:00 (180) 仕事 出社・デスクワーク 1.5 4.5
12:00 (60) 昼休み 昼休み・昼食 1.5 1.5
13:00 (180) 仕事 デスクワーク 1.5 4.5
16:00 (30) 通勤 終業、自転車で保育園へ娘を迎えに(約15分) 4.0 2.0
16:30 (5) 地元スーパーまで自転車で移動(約5分) 4.0 0.3
16:35 (50) 買い物 2.3 1.9
17:25 (5) 自転車で帰宅(約5分) 4.0 0.3
17:30 (15) 帰宅後、洗濯物の取り込みと片付け 2.8 0.7
17:45 (45) 夕食の準備 2.0 1.5
18:30 (60) 娘に絵本読んだり、世話 2.0 2.0
19:30 (30) 夫の帰宅、家族で夕食団らん 2.0 1.0
20:00 (30) 夕食の片付け 2.0 1.0
20:30 (60) 家族団らん(風呂掃除、娘の入浴は夫が担当) 1.8 1.8
21:30 (30) 娘の就寝後、入浴 1.5 0.8
22:00 (40) くつろぎ時間 1.3 0.9
22:40 (20) 就寝準備 2.0 0.7
23:00 就寝
合計 32.1

運動強度「METs」を意識した生活習慣に変更

「METs」を意識したビジネスマンSさんの1日

運動強度を意識したビジネスマンSさんの1日:イメージ

ビジネスマンSさんは、上司がエレベーターを使わずに階段を使っている、少し早歩きで一駅先の駅まで歩いているということを聞き、自分も真似してみることにしました。また、憧れのアスリートが紹介していたトレーニングを1日15分試してみることにしました。

●運動強度(METs)を意識したビジネスマンSさんの1日

METsに意識したSさん:グラフ

時間 所要時間
(分)
活動内容 身体活動
強度(METs)
身体活動量
(METs・時)
6:00 (15) 起床、支度 2.0 0.5
6:15 (30) 朝食 1.5 0.8
6:45 (30) 朝食の片付け、身支度 2.0 1.0
7:15 (15) 通勤 駅まで自転車 4.0 1.0
7:30 (45) 電車 1.3 1.0
8:15 (5) 会社まで徒歩 2.5 0.2
8:20 (10) 12階まで階段上る(エレベーターは使用しない) 4.0 0.7
8:30 (60) 仕事 デスクワーク 1.5 1.5
9:30 (15) 社内ミーティング(着座) 1.5 0.4
9:45 (135) デスクワーク 1.5 3.4
12:00 (10) 昼休み 12階から階段下る 3.5 0.6
12:10 (10) 昼食場所まで徒歩(往復、ちょっと早歩き) 4.0 0.7
12:20 (30) 昼食 1.5 0.8
12:50 (10) 12階まで階段上る(エレベーターは使用しない) 4.0 0.7
13:00 (60) 仕事 来客対応(着座) 1.5 1.5
14:00 (240) デスクワーク 1.5 6.0
18:00 (10) 通勤 12階から階段下る 3.5 0.6
18:10 (15) 最寄駅の1つ先の駅まで徒歩(ちょっと早歩き) 4.0 1.0
18:25 (45) 電車 1.3 1.0
19:10 (30) 自宅最寄駅前スーパーで買い物 2.3 1.2
19:40 (15) 自宅まで自転車 4.0 1.0
19:55 (10) 夕食の支度 2.0 0.3
20:05 (40) 夕食 1.5 1.0
20:45 (20) 夕食の片付け 2.0 0.7
21:05 (20) 風呂掃除 2.0 0.7
21:25 (20) 洗濯 2.0 0.7
21:45 (20) 休憩:テレビ、読書など 1.3 0.4
22:05 (15) テレビを見ながら軽い筋力トレーニング 3.5 0.9
22:20 (30) 入浴 1.5 0.8
22:50 (10) 身支度 2.0 0.3
23:00 就寝
合計 31.4

エレベーターに乗ると立位1.3METsですが、代わりに階段をゆっくり上ると4.0METsで、卓球やソフトボールの練習をするときと同程度の運動強度となります。また、2.5METsのゆっくり歩行を、ちょっと早歩きするだけで4.0METs。家でくつろいでいたところ(1.3METs)、テレビを見ながら筋力トレーニングをすると、3.5METsになります。

1日の身体活動量(METs・時)を「運動強度×時間」で積算すると、いつものSさんの場合は28.5METs・時ですが、上記のようにMETsを意識して生活すると31.4METs・時になり、2.9METs・時増えます。

これを、下記の式(※)を用いてエネルギー消費量に換算すると、Sさんの体重が70㎏の場合、「2.9METs・時×70㎏×1.05≒213kcal」となります。具材にもよりますが、コンビニのおにぎり約1個分のエネルギーを多く消費したことになります。

※ エネルギー消費量(kcal)=身体活動量(METs・時)×体重(㎏)×1.05

さらに、社内ミーティングを着座からスタンンディングに替えると1.5METsが3.0METsになりますし、デスクワークが中心でも、こまめに荷物を運んだり、書類を届けたり、なるべく体を動かすようMETsが少しでも高い活動を取り入れてみるのもいいでしょう。

特に、近年の研究では、座り続けることの害が報告されており、30分に1回立ち上がって動くと、座りすぎによる健康リスクを軽減するといわれています。

参考:日本人の座位時間は世界最長「7」時間!座りすぎが健康リスクを高める あなたは大丈夫?その対策とは・・・
https://sports.go.jp/special/value-sports/7.html

「METs」を意識したワーキングマザーMさんの1日

運動強度を意識した子育てワーキングマザーMさんの1日:イメージ

働きながら家事や子育てをされている方の多くは、忙しくて運動・スポーツをする時間を作るなんて、とんでもない!と思われることでしょう。それでも、Mさんは、1日の過ごし方を工夫することで運動不足を解消することができないか、ヨガ教室に一緒に通っていたママ友に相談してみました。

すると、そのママ友はヨガ教室が休みの間、子どもと一緒にヨガ教室ごっこをしていたと聞きました。そこで、Mさんは、これまで家族三人でテレビを見ていた時間に、Mさんが先生役をやりながら一緒にヨガをしたり、子どもと一緒になって遊んだりしてみました。

●運動強度(METs)を意識した子育てワーキングマザーMさんの1日

METsに意識したMさん:グラフ

時間 所要時間
(分)
活動内容 身体活動
強度(METs)
身体活動量
(METs・時)
6:00 (60) 起床・朝食の支度と弁当づくり 2.0 2.0
7:00 (30) 朝食 1.5 0.8
7:30 (10) 朝食の片付け 2.0 0.3
7:40 (25) 子どもの通園準備など 2.5 1.0
8:05 (30) 掃除・洗濯などいろいろな家事 2.8 1.4
8:35 (15) 身支度 2.0 0.5
8:50 (10) 通勤 職場まで自転車で移動(約5分) 4.0 0.7
9:00 (180) 仕事 出社・デスクワーク 1.5 4.5
12:00 (45) 昼休み 昼休み・昼食 1.5 1.1
12:45 (15) 職場周辺を散歩(約15分) 4.0 1.0
13:00 (180) 仕事 デスクワーク 1.5 4.5
16:00 (30) 通勤 終業、自転車で保育園へ娘を迎えに(約15分) 4.0 2.0
16:30 (5) 地元スーパーまで自転車で移動(約5分) 4.0 0.3
16:35 (50) 買い物 2.3 1.9
17:25 (5) 自転車で帰宅(約5分) 4.0 0.3
17:30 (15) 帰宅後、洗濯物の取り込みと片付け 2.8 0.7
17:45 (45) 夕食の準備 2.0 1.5
18:30 (45) 娘と遊ぶ(立位) 2.8 2.1
19:15 (15) 娘に絵本読んだり、世話 2.0 0.5
19:30 (30) 夫の帰宅、家族で夕食団らん 2.0 1.0
20:00 (30) 夕食の片付け 2.0 1.0
20:30 (30) 家族団らん(風呂掃除、娘の入浴は夫が担当) 1.8 0.9
21:00 (30) 家族でヨガやストレッチング(Mさんが指導者役) 2.8 1.4
21:30 (30) 娘の就寝後、入浴 1.5 0.8
22:00 (40) バランスボールに座りながらテレビ 2.3 1.5
22:40 (20) 就寝準備 2.0 0.7
23:00 就寝
合計 34.4

座っておしゃべりすると1.8METs、テレビを観るだけだと1.3METsでしたが、子供と一緒に立って遊んだり、ヨガの先生役をすると2.8METsになります。保育園で習った体操やインターネット動画配信サービスのダンスなど、大人も子どもと一緒に楽しみながら体を動かせば、METsは高くなりますし、親子のコミュニケーションも増えそうです。

また、テレビを観るのも、楽な姿勢で座って観るより、バランスボールなどに座ってバランス練習をしながら観る方が、METsが高くなります。

Sさんと同様に、Mさんの1日の身体活動量(METs・時)を計算すると、いつものMさんの場合は32.1METs・時でしたが、METsを意識して生活すると34.4METs・時になり、2.3METs・時増えます。
Mさんの体重が50㎏の場合、「2.3METs・時×50㎏×1.05≒121kcal」となり、小さめのプリン1個分のエネルギーを多く消費したことになります(商品により差があります)。

1日だけだと、小さな差にしか見えないかもしれませんが、毎日となると、塵も積もれば山となります。1か月間の平日を20日間として単純計算すると、平日の過ごし方を1か月間METsを意識して変えるだけで、Sさんは4,260kcal、Mさんは2,420kcalエネルギーを多く消費することになります。

Sport in Lifeを目指して!

今回、SさんがMETsを意識した生活習慣では、通勤手段や移動方法の工夫が身体活動量増加の大きな要でした。2019年に国立国際医療研究センターが発表した研究によれば、徒歩や自転車での通勤、電車・バスといった公共交通機関を利用した通勤は、体重増加を抑制するのに関連していることが明らかになりました。肥満や成人期の体重増加により、糖尿病や心疾患などの生活習慣病のリスクが高まることを踏まえると、通勤手段をアクティブにするだけで疾病予防に役立つかもしれません。

また、Mさんは子どもと遊ぶ時間を工夫しましたが、仕事や家事、育児に奮闘されている方は、平日の生活習慣を変えるのは難しいことがあります。そのような方には、「ウィークエンド・ウォーリアー(週末戦士)」と呼ばれている、休日にまとめて運動・スポーツをすることをお勧めします。ウィークエンド・ウォーリアーは、全く運動しないグループと比べて、全体的な死亡リスク、心疾患や糖尿病、がん等のリスクが低かったことが研究報告されています。

今回紹介したように、まずは自らの生活習慣、1日の過ごし方に目を向けてみてはいかがでしょうか。最近は、スマートフォンアプリなどで簡単に自らの生活習慣を見える化することや、1日のエネルギー消費量を計算することができます。今までよりも、身体活動量を少しでも増やすことで、生活習慣病リスクを下げるなど運動効果が得られることもわかってきています。皆さんもSport in Lifeを目指して、METsを意識したアクティブな新しい生活習慣にしてみませんか。

参考:徒歩や自転車、公共交通機関による通勤が体重増加を抑制する―日本の労働者約3万名を5年間追跡した結果から―
https://ccs.ncgm.go.jp/news/2019/20191122.html

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●本記事は以下の資料を参照しています

国立健康栄養研究所(改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』)(2022-08-01閲覧)

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