垣根を越えて楽しめるインクルーシブスポーツ大会の現場をレポート!〜アンリミテッドスポーツフェスティバル〜

垣根を越えて楽しめるインクルーシブスポーツ大会の現場をレポート!〜アンリミテッドスポーツフェスティバル〜

「インクルーシブスポーツ」をご存知でしょうか? 障害の有無や年齢、性別、文化的背景などに関わらず、誰もが平等に参加できるスポーツのことをインクルーシブスポーツといいます。スポーツ庁では「令和6年度障害者スポーツ推進プロジェクト(障害者スポーツの実施環境の整備等に向けたモデル創出事業)」において、インクルーシブなスポーツ環境の整備に取り組んでいます。
デポルターレでは、インクルーシブスポーツ大会『2024アンリミテッド スポーツ フェスティバル』(9/14 大阪・ヤンマースタジアム長居)を取材し、インクルーシブスポーツの現状をレポートいたします。

2024アンリミテッド スポーツ フェスティバル

「2024アンリミテッド スポーツ フェスティバル」が、2024年9月14日、大阪・ヤンマースタジアム長居にて開催されました。 “アンリミッド(制限がない)”という名前のとおり、障害の有無に関わらず同じ土俵で競技に参加することができる「アンリミテッド パラ陸上」として2017年にスタートしました。2023年からは“パラ”という名称をなくし、陸上競技以外の幅広いスポーツを取り入れ「アンリミテッド スポーツ フェスティバル」として再スタート。今回で5回目の開催となります。

2024アンリミテッド スポーツ フェスティバル:イメージ1

子供からシニアまで、性別や障害の有無に関わらず分け隔てなく一緒に参加

大会では、すべての人が平等にスポーツや遊びを楽しめる場として、障害の有無や性別に関わらず、子供からシニアまで幅広い年代の方が参加できます。当日は、以下のプログラムが行われました。

●陸上競技大会

日本パラ陸上競技連盟(JPA)公式大会として開催。障害の有無に関わらず一緒に競い合います。

  • トラック競技=100m(男女・立位・車いす)、1500m(男女・立位・車いす)、リレー(100m×4人)

トラック競技=100m(男女・立位・車いす)、1500m(男女・立位・車いす)、リレー(100m×4人):イメージ

  • フィールド競技=男子走り幅跳び、女子走り幅跳び、男子やり投げ(立位・座位)、女子やり投げ(立位・座位)

フィールド競技=男子走り幅跳び、女子走り幅跳び、男子やり投げ(立位・座位)、女子やり投げ(立位・座位):イメージ

●eスポーツ大会
  • ぷよぷよeスポーツ(公式ポイント対象大会)
  • ストリートファイター6(公式許諾大会)

ぷよぷよeスポーツ(公式ポイント対象大会)、ストリートファイター6(公式許諾大会):イメージ

●専門スポーツ大会
  • ボッチャ大会(男女混合無差別級)

ボッチャ大会(男女混合無差別級):イメージ

競技には、さまざまなゲストが参加しました。やり投げでは、アテネ五輪、北京五輪で陸上男子やり投げ日本代表の村上幸史さんが参加。村上さんは競技出場者たちに投げ方のコツを伝授。出場者の皆さんは目を輝かせながらフォームの確認などをしていました。やり投げ(女子座位)では妻鳥和恵選手がパラ陸上公認記録11m45cmをマークして優勝しました。同大会ではトラック競技の選手が、自身の専門外である投てき競技にエントリーするなど、新たなチャレンジの場にもなっているようです。競技・種目の垣根を越えた交流が行われていました。

2024アンリミテッド スポーツ フェスティバル:イメージ2

競技以外にも盛りだくさんのイベントが開催。エキシビションではボッチャやeスポーツの競技体験、イベントブースでは主に高齢者や障害のある方に行うネイルサービスである福祉ネイルの体験コーナーや、試合前後のストレッチやマッサージを受けることができる施術コーナー などが開催されました。
競技イベントの「パン食い競争」では、競技参加者だけではなく、観覧者も参加できます。子どもからシニア、男女も障害の有無に関わらず一緒になって楽しんでいる参加者たちの姿こそが、大会名の「アンリミテッド」を象徴しているように思われました。

2024アンリミテッド スポーツ フェスティバル:イメージ3

パラ競技に合わせるのではなく、既存競技に誰もが参加できる環境づくりを!

一般社団法人アンリミテッド事業推進協会の北林直哉代表理事に、本大会の感想とインクルーシブスポーツ発展のポイントについてお話を聞きました。

一般社団法人アンリミテッド事業推進協会 北林直哉代表理事:イメージ

今年で無事5回目を迎えられました。当初は8月31日に開催予定でしたが、台風の影響で9月14日に延期となってしまい、残念ながら若干参加者が減っておりますが大会全体の雰囲気は非常によく成功と思います。
2017年の大会開催当初は“パラ競技をみんなで一緒にやる”方向で考えていましたが、本当にインクルーシブスポーツを根付かせるためには、“既存のスポーツや遊びを一緒にできる”環境を整えることが大切だと思い、大会名から「パラ」の文字を外しました。
それぞれに適した配慮をすることで、垣根なく参加できる環境を提供することができると思います。当初、競技関係者からは障害のある選手と一緒に競技をすることで接触などを危惧する声もありましたが、充分に間隔をあけるなどの対策を行うことで実施できることがわかりました。大会を重ねるごとにサポートしてくださる方の意識の変化も見られ、誰もがスポーツや遊びに参加できる環境づくりを応援していただいています。
当協会が費用を負担する形で始めた大会も、今では地元企業の協力を得て、さらにスポーツ庁委託事業として開催できるようになりました。来年度には「2025年日本国際博覧会(EXPO 2025 大阪・関西万博)」の会場内・EXPOアリーナでの開催が決定しています。日本のインクルーシブスポーツが充実していることを世界に発信したいと思います。

まとめ

《記事内容》
「スポーツを通じた共生社会の実現」には、誰もがスポーツを楽しめる環境の構築が必要です。インクルーシブスポーツの広まりは、スポーツへの多様な参加を促し、誰もが一緒に体を動かすことができる共生社会の実現を後押しするものといえそうです。
スポーツ庁では、これからもインクルーシブスポーツの環境整備に取り組んでいきます。

●本記事は以下の資料を参照しています

2024アンリミテッド スポーツ フェスティバル(2024-10-01閲覧)

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