テレワークで肩こり・腰痛が増加 その対策教えます

テレワークで肩こり・腰痛が増加 その対策教えます

Withコロナ時代に見直す、スポーツの効能 シリーズ第3弾。
新型コロナウイルス感染症対策のためにテレワークなど働き方と生活様式が大きく変わった方たちから、肩こりや腰痛に悩まされているという声を度々聞きます。肩こり・腰痛の原因、そして予防や改善に適した運動・スポーツにはどういったものがあるのでしょうか。日本循環器学会認定循環器専門医、医学博士で、日本医師会運動・健康スポーツ医学委員会副委員長の小笠原定雅先生に話をお聞きしました。

小笠原定雅先生 1

テレワークによる肩こり・腰痛を起こす3つの要因

テレワークが広まった令和2年6月あたりから、肩こり・腰痛に悩む方が増えたと思います。特に、20代〜40代と比較的若い方たちから、そういった悩みが寄せられるようになりました。その方たちの肩こり・腰痛の要因は大きく分けて3つ考えられます。

  • ①適切でない姿勢で作業をする
  • ②歩かなくなった
  • ③正しくない体の動かし方

①適切でない姿勢で作業をする

一般的に、オフィスでは快適にパソコン等の事務作業ができるように設計された机や椅子が使われています。しかしながら、テレワークになると、ダイニングテーブルやローテーブル、座椅子やソファーなど仕事用とは異なる環境で作業される方が多いです。家庭にある机や椅子の多くは、オフィスにあるものと高さや設計が異なりますので、無理な姿勢や猫背などの崩れた姿勢で作業されることがあります。長時間にわたり、そのような姿勢でいると、特定の筋肉に負荷がかかり過ぎて痛み等が出やすいです。相談に来た方に話を聞くと、やはり無理な姿勢でパソコン作業をされていました。それに加えて、テレワークの方はある程度時間を自由に使えることによって長時間労働になる傾向があり、適切でない姿勢での作業を続けてしまうようです。

②歩かなくなった

通勤がなくなってしまったことも大きく影響していると思います。10分歩くと約1000歩になります。例えば、1日当たりの平均歩数が8000歩のビジネスパーソンが、通勤しない日は3000歩/日以下に、さらに在宅勤務日は家からほとんど外出しないので1000歩/日未満になる方もいます。

正しく歩くと、全身の筋肉を使い、血液循環がよくなります。反対に、歩かなくなると、血液循環が悪くなり体内の疲労物質が滞ることで筋肉が固くなり、肩こりや腰痛が起こりやすくなります。

③正しくない体の動かし方

外出自粛により家にいる時間が増えたことで、ヨガやストレッチ体操、ダンスや筋力トレーニングなどさまざまな運動を紹介している動画配信サイトを見ながら体を動かす方が増えたようです。それ自体はとてもいいことですが、気をつけたいのは正しい動き(フォーム)で行えているかを確認することです。専門的知識のある運動指導者が近くにいれば、正しいフォームを指導してくれるのですが、動画配信サイトを見ながら自分で運動をすると、仮に誤ったフォームだとしても誰も指摘してくれません。正しくないフォームのまま運動を行ってしまうと、かえって肩こり・腰痛になってしまうこともあるので注意が必要です。

対策

①自宅をオフィスの環境に近づける工夫

在宅勤務などのテレワークをするときに重要なのは、「規則正しい生活」を心がけること。いつもと同じ時間に起きる、いつもと同じ時間に食事する、そして、きちんと着替えることです。ネクタイをしてスーツを着るまで求めなくてよいですが、着替えることで気持ちにスイッチが入るとのことであれば着るとよいです。また、食事は1人だと手軽に済ませようとして栄養バランスが偏りがちですが、学校の給食をイメージして、主食、主菜、副菜など、バランスのよい献立が望ましいと思います。

さらに、働く環境を整えることも大事です。ダイニングテーブルセットで作業しているなら、クッション等を使って椅子の高さの調整や、自分の体とパソコン(キーボードやスクリーン)との距離を適切に保つだけでも改善されることがあります。最近では、正しく座れるように誘導してくれる機能性クッションなどが販売されていて、私も診察室で愛用しています。オフィスの環境に近づける工夫を行うことで、肩こり・腰痛の予防に繋がります。

②1日に1回は屋外に出ましょう

肩こり・腰痛を予防するためには、同じ姿勢のままでいないこと。パソコンや情報端末で作業をしているなら1時間に1回は立ち上がって、5分ぐらい背伸びや屈伸、その場歩きなど体を動かしてください。「外来で指導できるロコモ体操(東京都医師会版)」(参考資料)で紹介しているような簡単なストレッチ体操を行うのもいいです。

それから、1日に1回は屋外に出ましょう。歩くことで血液循環が促進され、全身のこりがほぐれやすくなります。また、外に出ることで気持ちがリフレッシュし、人と良いコミュニケーションをとることで脳や心が元気になりますから、しっかりと感染症対策をした上で、人と会話をすることもいいでしょう。

③1日に複数回、3分程度でできる運動

東京都医師会健康スポーツ医学委員会で作成したパンフレット「外来で指導できるロコモ体操(東京都医師会版)」に掲載されている、短時間でできる体操を紹介します。例えば、肩こりであれば、ゆっくりと両肩を引き上げ、ゆっくりと戻すのを10回ほど行います(図1)。ほかにも、肩をゆっくり回す体操(図2)や、背中の肩甲骨を合わせるように近づけてキープする背筋の体操(図3)、片手を軽く引っ張りながら首を横に倒す首まわりのストレッチ体操(図4)などがあり、いずれも道具を使わずに手軽に行うことができます。1日に複数回、好きな時間に気持ちよく体を動かしてください。御紹介した4つの体操は、合わせて3分程度でできます。「外来で指導できるロコモ体操(東京都医師会版)」には、全部で19のいろいろな体操をイラスト付きで紹介していますので、お好きなものを毎回選んで行うこともよいでしょう。

外来で指導できるロコモ体操 肩こり体操 外来で指導できるロコモ体操 肩こり体操

外来で指導できるロコモ体操 ストレッチ体操 外来で指導できるロコモ体操 ストレッチ体操出典:公益財団法人東京都医師会『外来で指導できるロコモ体操(東京都医師会版)』

まとめ:じっと座っている時間を少なくしてください

テレワークだけに限ったことではなく、座ってお仕事する時間が長い方に申し上げたいのは、じっと座り続ける時間を少しでも短くしてください。座りっぱなしの生活は、肩こり・腰痛だけでなく、エコノミークラス症候群の原因にもなり得ます。また、長時間座っていると、むくみを感じることも多いのではないでしょうか。むくみには心臓や腎臓などの病気が隠れていることがありますが、多くは座り過ぎによることが原因です。夕方になると靴下のゴムの跡がくっきりつくという方は、じっと座っている時間を少なくするように心がけてみてください。

また、肩こり・腰痛にも大きな病気が隠れていることがあります。初めて肩こり・腰痛になったという方は、一度かかりつけ医に相談してください。その上で、運動不足が原因の場合には、意識して体を動かす時間を作るようにしましょう。立ち上がって体を動かすことが大切です。

小笠原定雅先生 2

おがさわらクリニック内科循環器科院長。医学博士。小笠原 定雅(おがさわら・さだまさ)
北海道大学医学部卒業、医学博士号取得。2001年おがさわらクリニック内科循環器科を開設。日本内科学会認定 認定内科医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本医師会認定産業医、日本スポーツ協会認定スポーツドクター、日本医師会運動・健康スポーツ医学委員会副委員長、東京都医師会健康スポーツ医学委員会委員長。

本記事は以下の資料を参照しています

外来で指導できるロコモ体操(東京都医師会版)(2020-12-01閲覧)

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