コロナ疲れ・ストレスの解消法!運動・スポーツで心のケア

コロナ疲れ、ストレスの解消法!運動、スポーツで心のケア

Withコロナ時代に見直す、スポーツの効能 シリーズ第4弾。
新型コロナウイルスの感染に対する不安や恐怖、余儀なくされる営業自粛や活動自粛による仕事と生活への不安や怒りなど、ストレスを感じてメンタルヘルスが悪化する方が増えているようです。現代の社会問題となった「コロナ疲れ」は急激な環境変化によるストレスが原因です。ストレスと上手に付き合い、心を安定させる方法など、メンタルヘルスの専門家である田中クリニック銀座院長の田中利幸先生から話をお聞きました。

新型コロナウイルスと心の問題 Withコロナ時代に「心の健康相談」が急増

昨今、問題視されている心の問題は、新型コロナウイルスによる環境の変化によって新たに生じたというより、もともと抱えていたものが表面化してきたのだと考えられます。感染症対策の「ステイホーム」によって、家族と一緒に過ごす時間が増えた分、会話が増え、日頃のちょっとした不満をぶつけ合ってしまった結果、けんかが増えたという例は少なくありません。

また、新型コロナウイルスの影響によるもう一つの心の問題は、先が見えない不安が付きまとうことです。このウイルスはいつ収束するのか、活動自粛や人との接触を避けるなど、これまでとは全く異なる生活スタイルをいつまで続けなければならないのか、不安やイライラなど、感情が不安定になりやすくなっています。実際に、外出自粛期間中は、精神保健福祉センターへの心の健康相談件数が急増しました(下図)。

新型コロナウイルス感染症にかかる心の健康相談に関する精神保健福祉センターの対応状況1 新型コロナウイルス感染症にかかる心の健康相談に関する精神保健福祉センターの対応状況2 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症にかかる心の健康相談に関する精神保健福祉センターの対応状況 (9/30)」より作成

運動・スポーツが心の健康にもたらす効果

ストレスは、多くのホルモン分泌に深い関わりがあることが解明されてきています。適度な運動をすると、幸せホルモンと呼ばれる脳内の神経伝達物質のセロトニンやβ-エンドルフィンが分泌され、良いストレス状態になります。セロトニンは心を安定させる作用、β-エンドルフィンは気分の高揚や幸福感が得られる作用があると言われています。事実、運動やスポーツをして気分が晴れやかになったことを経験された方も多いと思います。なおかつ、運動によって達成感を得ることで、自尊心を高めることにもつながります。さらに、運動による適度な疲労感は良好な睡眠を促しますので、バランスの良い食事を摂れば、運動・栄養・休養といった健康づくりの三要素を整えることに役立ちます。

運動・スポーツは食事と同じく日常生活の一部に組み込む

運動やスポーツに関しては、“適度な”というのがポイントで、アスリートさながらに体を酷使してしまうと逆効果です。1日30分程度の運動やスポーツを週に2~3回、それを継続することを心掛けてください。難しければ、家や職場でできる筋力トレーニングやストレッチング、やり方が分からなければ動画配信サイトやテレビ体操等を活用する、若しくはいつもより遠くのスーパーへ歩いて行くことや通勤で一駅歩くなど、御自身の生活習慣の中で無理なくできることを探してください。食事と同じように、運動やスポーツは日常生活の一部(Sport in Life)という捉え方をしていただきたいです。

大切なのは、運動やスポーツは人生をより楽しく健康に生きるためのツールだと考えることです。私は、毎度スポーツジムに行ったときは、1時間トレーニングすれば十分だと自分で決めています。どんなことでも、やった自分を褒めるのです。そうすることで、運動を継続し「習慣」にすることができます。

心から信頼できる人を見つけて

昨今は、コロナ禍でも「みんな一緒だし、何とかなるさ」と開き直れる人と、「この先どうなってしまうのだろう」と真面目に突き詰めて考えて気分が落ち込んでしまう人と、二極化しているようです。令和2年7月以降、前年同月と比較して自殺者数が増えているのは、後者の人たちが思い悩んだことが原因の一つとして考えられます。深掘りすると、その根本にあるのは「孤独」であることも多いです。表面的に付き合う人がいても、「何かあれば相談してね」と声をかけてくれる人がいても、本当に心を開いて信頼できる人がいないということが、実際にはあるのです。

さらに、メディアでよく目にするようになった「いのちの電話」は、話し中で電話がつながらないことが多いといいます。誰かに話を聞いてもらいたくて、最後の頼みにかけた電話がつながらず、絶望感が募ってしまうこともあります。私の患者さんには、LINEなどのプライベートの連絡先を教えて、いつでも私に連絡できる状態にしています。夜中の3時でも、私は電話に出ます。私のような心療内科医でもいいので、本当に信頼できる人と出会い、交流することが、現代の社会ではとても重要になっています。

まとめ:視点を変えて心の健康を維持しよう

現在は、世界中の人々が新型コロナウイルスによって大変な状況にいます。だからこそ、「自分だけが不幸だ」「なぜ自分だけこんな目に遭うのか」と悲観するのではなく、この状況はみんな同じだから、少しずつ一緒に踏ん張っていきましょうと患者さんには声をかけています。運動やスポーツも、毎日スポーツジムに行けるお金や時間に余裕のある人が羨ましく、「自分はお金も時間もないからできない」と考えるのではなく、「自分にできることは何か」と考えて行動してみると、意外と気楽にできることがあります。心の健康を維持するためには、ものの見方を変えることも大切です。

田中利幸先生

一般社団法人日本メンタルヘルス支援協議会代表理事 医学博士 田中利幸
労働衛生コンサルタントを持つ精神科医として多くの企業の産業医のほか田中クリニック銀座院長として働く方々の心のケアを行っている。

本記事は以下の資料を参照しています

厚生労働省:社会福祉・雇用・労働に関する情報一覧(新型コロナウイルス感染症)(2020-12-01閲覧)
新型コロナウイルスに関連した情報や相談窓口(2020-12-01閲覧)

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