コロナ太り?ウェアラブル端末や有酸素運動で健康的な体づくり

コロナ太り?ウェアラブル端末や有酸素運動で健康的な体づくり。

Withコロナ時代に見直す、スポーツの効能 シリーズ第7弾
Withコロナ時代の外出自粛による生活の変化でお腹回りが気になるようになった、太ったという方も多いのではないでしょうか。最近では、「コロナ太り」という言葉も聞き馴染むようになりました。一方、生活習慣を見直し、健康的に痩せて体調がよくなったという方もいます。
Withコロナ時代においては、図らずもダイエットや運動などによる体重や体調管理、健康的な体づくりへの関心、意識が高まっています。メタボ検診(特定健康診査)や特定保健指導のプログラム策定等に携わり、住民の生活習慣病予防や健康づくりを御専門として長年御活躍の日本医師会運動・健康スポーツ医学委員会委員長の津下一代先生に話をお聞きしました。

新型コロナウイルスと運動不足

「コロナ太り」の言葉にあるように、新型コロナウイルスの影響で外出自粛を余儀なくされた結果、体を動かす機会が減って体重が増えたと感じる方が多いようです。図1をみると、令和2年5月の調査では、新型コロナウイルス感染症の流行前と比較して体重が3㎏以上増えた方はおよそ1割で、3㎏未満増加した方と合わせると約3分の1の方が体重増加を訴えています。また、海外や国内の調査では、外出自粛や生活様式の変化によって身体活動量や日々の歩数が減ったことが報告されています。

図1
SOMPOひまわり生命2020-06-02 健康応援リサーチ グラフSOMPOひまわり生命2020-06-02 健康応援リサーチから引用

こうした身体活動量や日々の歩数の低下の理由は、外出することへの不安から家にこもりがちになったこと、在宅勤務をすることで通勤や出張などの移動が減ったこと、食材をまとめ買いするようになり外出機会が減ったことなど様々ですが、共通して言えることは、日常生活での活動が減ったことが大きな要因だと示唆されています。身体活動量や日々の歩数の低下は、体重増加、特に内臓脂肪の増加につながることがわかっています。
では、「コロナ太り」を解消するためには、どのようなことに取り組めばいいのでしょうか。

新型コロナウイルスの流行による新たな健康課題 1新型コロナウイルスの流行による新たな健康課題 2オムロン ヘルスケア株式会社 ニュースリリース 「新型コロナウイルス感染症の中高における意識と生活習慣の変化」より作成

減量はあくまで「増えた分を戻す」

「コロナ太り」による体重を元に戻すための減量のポイントは、過去数か月の体重や腹囲の変化を、まずは確認することです。増加傾向であれば、食事の過剰摂取や身体活動量の低下などエネルギーの収支バランスが崩れていることが考えられます。また、新型コロナウイルスの流行前に着ていた服が着られるかどうか試すのもよいでしょう。外出時は、ウエストがぴたっとした服を着たりベルトをしたりすることがあるので、体形に変化があるとわかりやすいのですが、在宅時間が増えると、ウエストがゴムでできている服やルームウェアなど楽な服を着ることが多くなりがちで、体型の変化に気づかないことがあります。

また、体重や腹囲が増えたならば、増えた分を元に戻すことを目標にしてください。というのも、減量を始めると、体重が減っていくこと自体が楽しくなり、どんどん減らしたくなってしまう方がいます。減量し続けるのではなく、「〇㎏にしよう」「この服を着られるようになろう」などと、具体的な目標を決めてから減量を始めてください。

短期間で増えた体重は、落としやすいです。Withコロナ時代に体重が増えた方の多くは、ライフスタイルが急に変わったことによるものなので、1~2か月かけて体重を元に戻すことを意識して取り組んでみてはいかがでしょうか。

有酸素運動とウエアラブルデバイスのすすめ

では、減量に効果的な運動はというと、まずは有酸素運動です。長時間、筋肉を繰り返し収縮させて、体内の糖や脂肪を酸素によってエネルギーに変えながら行う運動です。同じ強度の運動であれば、長時間行った方が使われるエネルギー量が増えます。1日に30分程度のウオーキングを行えるといいですが、難しい方は今より少しでも歩く時間を増やす工夫をしてみてはいかがでしょうか。

お勧めは、階段上りです。日常的に使う階段であれば、どこ(何段)まで楽に上れて、どこから息が切れるのか意識しておくと、体力テストのようにもなります。階段上りを続けていると、徐々に楽に上れる段数が増え、全身持久力が向上したことが実感できます。この実感が自信につながることもあります。ただし、息切れする、顔が赤らむようであればあなたにとって運動強度が強すぎるようです。ペースを落とし、呼吸を整えることを忘れずに。

また、有酸素運動にレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせるとより一層効果的です。レジスタンス運動は、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動で、スクワットや腹筋運動、腕立て伏せなど、特別な器具のいらないものが手軽でいいです。はじめは、筋肉に負荷が少しかかっていることを感じるくらいのやり方からでいいです。例えば、腕立て伏せの場合、一般的に両手とつま先を床につけて肘を曲げるやり方が有名ですが、これがきついと感じる方は、両手と膝を床につけて行ったり、立った状態で壁や机に手をつけて行うなど、自分の筋力レベルに合わせてやり方を変えられます。

さらに、ウエアラブルデバイスをつけて、自分の身体活動量を見える化することもお勧めです。スマートフォンに歩数計の機能がついていますので常に持ち歩くのもいいですし、腕時計型やリストバンド型の活動量計は手軽でいいです。見える化すると、身体活動量の変化が分かるので、減ったことにも気づきやすいです。ウエアラブルデバイスを使用して見える化するだけで自然と身体活動量が増える方も多いそうです。

覚えておいていただきたいのは、運動はとにかく気負わずに取り組むことです。運動する日は曜日で決める、家族で声をかけ合うなどして、日課にしてしまうのがポイントです。はじめからずっと続けようと思わず、まずは1週間だけやってみて、それができたら、もう1週間だけ頑張ってみようといった心構えが大切です。また、1週間できなくても、三日坊主でいいのです。三日続けたら一日休むくらいが丁度いいので、三日坊主を繰り返せばいいのです。

間食をなくして食生活にメリハリをつける

減量には、食生活の見直しも重要なポイントです。Withコロナ時代においては、出前やデリバリーが多くなった、野菜の量が減ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、手料理を作ることが増えたという方も多いようですが、作り過ぎて、捨てるのがもったいなくて食べていることも考えられます。体重が増えていれば、摂取しているエネルギー量が増えている可能性が高いので、作り過ぎたら何回かに分けて食べる、作る量をいつもの8割程度にしてみるなど工夫して、腹八分目を心掛けてください。

一食ごとの量を減らすのはいいのですが、きちんと三食摂ることは重要です。食事を抜くと、おやつがほしくなって間食が増え、結局、摂取するエネルギーの総量が増えてしまうことがあります。家にいるとき、食べ物がすぐ近くにある状態の方もいるようですが、減量したいときには食べ物を目に触れないようにするのがコツ。また、お子さんの世話をしている方は、残したものをつい食べてしまうことがあると思いますが、自分が食べたくないときには食べないこと。いつも決まった時間に食事をきちんと摂って、間食せずに、次の食事時間までにお腹を空かせるというサイクル、メリハリをつけることが大事です。毎食後に歯を磨くことや、しっかり噛んで満腹中枢のスイッチを入れることなど、工夫してみてはいかがでしょうか。

まとめ:自己免疫力をつけて感染症を乗り切ろう

急な減量、特に極端な食事制限は自己免疫力を低下させることがあります。Withコロナ時代においては、自己免疫力を高めておくことが大切ですので、無理な食事制限は禁物です。栄養バランスが崩れてビタミン・ミネラル不足やタンパク質不足、過度な糖質制限によるエネルギー不足などは自己免疫力を下げる原因となります。また、低栄養状態になると、代謝が下がって逆に太りやすくなることもあります。体重という数字だけに執着するのではなく、健康的な体づくりを心掛けることが大切です。

新型コロナウイルスとの戦いは、長期戦になってきています。このパンデミックの中、自分の体調をどう整えるか、そのためには知恵と工夫が必要です。感染症は必ず乗り越えられます。健康的な体を維持しながら、たまにはおしゃれをして、楽しみを持ちながら日々明るく過ごしていきたいですね。

津下一代先生

女子栄養大学特任教授 医学博士 津下一代(つした かずよ)
1983年、名古屋大学医学部卒業。医学博士。名古屋大学医学部第一内科、愛知県総合保健センターを経て、2000年あいち健康の森健康科学総合センターに勤務。2011年より同センター長。2020年9月より現職に至る。
日本医師会:運動・健康スポーツ医学委員会委員長
スポーツ庁:スポーツ審議会健康スポーツ部会委員
厚生労働省:保険者による健診・保健指導等に関する検討会委員、スマート・ライフ・プロジェクト推進委員会委員、健康日本21(第二次)専門推進委員会委員
経済産業省:健康・医療新産業協議会委員 等

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